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2013年、世界の金融当局はある『事実』を突きつけられた。前の年にIMFが発表した「平均余命が1年伸びると、典型的な確定給付年金ファンドの現在価値が、約3〜4%増加する」というコミットメントが、具体性を帯びてきたのだ。


バーゼル銀行監査委員会が発表した『世界各国の長寿リスクの衝撃』

スイスのバーゼルにある国際決済銀行に事務局があるバーゼル銀行監査委員会(BCBS)には、G20の金融当局と中央銀行関係者が顔を揃えた。彼らの表情が一変したのは、BCBSの『ストレスシナリオ』である。『ストレスシナリオ』とはマーケット(金融市場)での不測の事態が生じた場合に備えて、ポートフォリオ(ポジション)の損失の程度や損失の回避策を予めシミュレーションしておくリスク管理手法をいう。BCBSによると、年金関係の長寿リスク・エクスポージャーの全世界の合計推定額は、15 兆〜25 兆 ドル。つまり、リスク保有者は、余命を過小評価したとしても、毎年、総計で、4,500億ドル〜1兆ドル以上を追加請求されるのだ。

これは何を意味するのか?年金財政悪化が各国の財政圧迫をもたらすのは想定内だが、問題は、一般受給者の消費行動が抑制されることと、年金保険料の段階的値上げによる現役世代の経済縮小である。2014年10月にFRB議長のイエレン氏が懸念したように、アメリカの資産格差の拡大は、許容範囲を超えており、長寿リスクは今後ますます世界経済のゆがみを加速させる一因になるのだ。


『長寿リスク』公的年金に頼るのはもう限界

長寿リスクに対応する保険の1つは医療保険、もう一つは公的年金保険だ。しかし、両方とも時代にそぐわない商品設計になってきているのは事実だ。
公的年金負担増と平均寿命に関係はあるのか。もともと公的年金額は、物価や賃金の上下に対応して決められる、マクロ経済スライドという。だが、現役世代の人口減少と平均余命の伸びという『負荷』があるため対応にも限界がある。
そこで、民間生保でまず動いたのが『ライフネット生命』。インターネット専業として始まったライフネットは、保険料の安さや商品のシンプル化を訴求していたが『終身医療保険 新じぶんへの保険』は基本コンセプトを破壊したといえる。従来の給付金は入院日数のみだったが、手術給付金額を入院日額の一律10倍に設定した。また、がん・脳卒中・急性心筋梗塞のいわゆる3大疾病の入院給付金支払日数が無制限に変更。他の疾病怪我での1入院は60日の期限付きだが、長寿での疾病リスク対応が急務となっていることが、見えてきたのだ。
終身年金保険では、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の個人年金保険を見てみよう。30歳男性が60歳までの30年、合計1,080万円(3万/月)支払い、60歳より終身で483,960円/年、受取るもの。これによれば、掛け金より多くの年金を受取るには、22.5年以上生き続ける必要がある。つまり、82.5歳。厚生労働省が発表する平均余命の調査第21回完全生命表によれば、2015年に30歳の男性が2045年に60歳になった際の平均余命は83.20歳。ひと月4万円を得るために、30年間毎月3万円を捻出するコストパフォーマンスがいいかどうか、これはよく考えるべきだろう。
ただ、今後の人口予想はもはや日本の財政基盤に明るい材料はもたらさない。だからこそ、自己防衛による民間保障を持つ大切さが理解できよう。長命社会は、それだけ民間年金商品への関心を呼ぶ絶好の機会と捉えたい。

(ZUU online)

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