本記事は、土井健氏の著書『テレビCMの逆襲 運用型CMで売上50億を2年で実現したテレシーCEOの実践広告論』(宣伝会議)の中から一部を抜粋・編集しています。

CASE1 グラムス 黒田俵伍氏×土井 健

オンラインゲームの継続利用を支えるテレビCM

オンラインゲームの継続利用を支えるテレビCM
(画像=gretalarosa/stock.adobe.com)

人気アイドルやYouTuberを起用したCMが話題

土井 グラムスでは、どのような形でプロモーションを展開していますか。

黒田 ゲーム市場では、立ち上げ時のプロモーションで話題をつくり、多くのユーザーの方々に認知していただくことが非常に重要になります。2021年10月にリリースしたスマホ向けゲームアプリ『ラグナドール』では、ウェブプロモーションにテレビCMというマスプロモーションを掛け合わせて展開しました。リリースから1年が経ちましたが、プロモーションの手応えは大きく、オリジナルIP(キャラクターなどの知的財産権)タイトルとしてはヒット作になりました。

土井 タレントの起用方法など、ユニークなマーケティング施策が成功要因のように見えます。

黒田 CMについてはゲームと親和性のあるアーティストを起用しています。YouTuberのヒカルさんにはゲーム開発のかなり初期からアプローチしていて、ゲームづくりにも関わってもらっている感覚です。また、BiSHのメンバーにも、LIVE会場に向かい、プロモーション戦略だけでなく、ゲーム自体の面白さについても、プレゼンし続けました。

一般的なタレント広告は、旬の芸能人をテレビCMなどに起用して、絵コンテ通りに演じてもらうやり方かもしれませんが、ラグナドールの場合は、ゲームを理解して面白いと思ってくれるアーティストさんに出てもらっていることが一番の特徴です。ヒカルさんは専門チャンネルを立ち上げるほどプレイしてくれますし、BiSHはメンバーのうち2人を声優として起用するほか主題歌も歌ってもらっています。

オンラインゲームの継続利用を支えるテレビCM
オンラインゲームの継続利用を支えるテレビCM
(画像=オンラインゲームの継続利用を支えるテレビCM)

土井 ここまで多面的、かつ新奇性のあるプロモーションをやった会社はあまりないように思います。

黒田 もともと自分が営業出身で、代理店を使わず自分の足で獲得したプロモーションの種をパズルのように組み合わせていったからかもしれません。テレビCM以外ではウェブプロモーションはもちろん、モバイルゲームとしては初めてピッコマでマンガ化するなど、さまざまなコラボレーションを仕掛けて、どこに行ってもラグナドールが目に入るような世界をつくっていきました。一般的な広告代理店の提案に頼ってしまうと、ウェブとテレビがメインで、あとはSNSでフォローという形になったと思います。

土井 ゲーム自体をメディアとして活用する取り組みもされたそうですね。

黒田 ゲームをプレイしている何十万人が毎日デバイスにアクセスしていると考えると、それはもはや広告媒体だなと思いまして。ファンにとっては、そこに行けばBiSHに会える、ヒカルさんと繋がれるというのは、すごく強いメディアです。ホーム画面ではBiSHのオリジナル主題歌が聴けますし、該当キャラをゲットすれば推しメンバーの声が聞こえるなど、ファンにとって嬉しい要素がたくさんある。そういうところは意識しました。

ライブ時間を考慮したCM放映など細かくチューニング

土井 様々なプロモーション施策におけるテレビCMの位置づけと、意識してきたことを教えてください。

黒田 テレビに関しては、〝今トレンドのGAME〞だということを伝えたいという思いがありました。ウェブプロモーション×テレビCMの効果はとても大きく、毎日CPAと継続率を追っていますが、テレビCM放映期間の継続率がとても高いです。オンラインゲームではダウンロードしたその日しかプレイしないケースが多く、そのまま戻ってこないことも多いですが、テレビCMを続けていると、新しいキャンペーン情報を提供できるだけでなく、「流行っているゲーム」「力を入れている作品」という事実を伝えることができ、継続率が高くなります。

そのためにクリエイティブも何種類も制作しています。BiSHやヒカルさんのクリエイティブはもちろん、アニメとのコラボタイミングでは、その作品の世界観に合わせた新しいクリエイティブを制作し、ラグナドールの新しいテレビCMをずっと流し続けるという手法をとっています。

土井 結構な金額を最初から投下する意思決定をされていましたが、大手広告代理店ではなくテレシーを選んだ理由はどこにありますか。

黒田 5、6社でコンペをした中でテレシーさんが一番良かったのは、ターゲティングです。ゲーム層に対して効果がある枠取りの提案はどこの広告代理店でもしてきますが、BiSHが過去に出た番組やこれから出てくる番組を必ず入れてくれたのはテレシーさんだけでした。さらに、彼らのファン行動まで想定して提案してくれたことが一番ありがたかったです。

実際に、このような枠でCMを出稿しますという事前情報が営業で使えました。ヒカルさんのチームにもその点を気に入っていただいたようで、ヒカルさんの生放送チャンネルでファンの皆さんとテレビCMを一緒に見ようというキャンペーンを実施したこともあります。

土井 親和性のあるメディアプランを提示できたということでしょうか。

黒田 M1層(20〜34歳男性)ということに加えて、かなり緻密なプラスαを出してくれたのはテレシーの営業努力だと思います。中でもすごいと思ったのは、BiSHのライブスケジュールをお伝えしたところ、そのライブに合わせてそこの地域のCMを流す提案をしてくれたこと。北海道のライブのときにはBiSHのメンバーのところに友だちから「CMめっちゃ流れていてすごいね」というLINEが来たらしくて、それを私にも嬉しそうに教えてくれました。お陰でBiSHのテンションもすごく上がったそうですし、ラグナドールは流行っているんだと思ってもらえたはずです。

土井 北海道のテレビ広告枠はそれほど大きな金額ではありませんから、コストパフォーマンスの高い投資になりますね。

黒田 しかも、すごく細かく設定してくれていましたよね。ライブスタートが夜7時頃だからその時間を外して、ライブに行く前の家で支度する昼間、ライブ後の家に帰る頃の深夜という時間にCMを流して、1日を通してBiSHに会えるようにしてくれました。

インハウス制作にすることで出稿枠を増やす

土井 クリエイティブを何種類も揃えていました。当社ではお手伝いしていませんが、どのような体制で制作しましたか。

黒田 メジャーなタイトルならいいのですが、まだそれほど認知されていない状況で世界観だけを見せるCMではよくわからないので、ゲームの画面やプレイシーンはしっかり見せることにしました。ラグナドールはマルチゲームなのが売りの一つなので、みんなでワイワイとマルチプレイしているところを見せるなどしました。

クリエイティブについては、広告代理店に依頼せず直接制作会社と進めました。私も一緒になって絵コンテをパワーポイントで作成するなど、絵コンテだけで8、9カ月ほどかかっています。そのために、制作会社のスタッフにもゲームをプレイしてもらいました。

土井 全体的にインハウスでコーディネートされている印象ですが、進める上で重視したポイントはどこですか。

黒田 クリエイティブ制作において、広告代理店に依頼するメリットは自社の工数を減らすことですが、仮にそうした手間を省いて3,000万円多くかかるのなら、その3,000万円はより多くの枠を押さえることに使いたいという考え方です。できるだけ多くの人に良さを届けたいという気持ちがあったので、作業的な部分は自社で巻き取って、自分たちでできることはやりました。

継続率を高めるフックとしてテレビCMを活用

土井 獲得単価ではウェブよりテレビのほうが高くなりますが、特に重視している評価指標は何ですか。

黒田 私はユーザーの方々の継続率を一番重視しています。オンラインゲームで、ユーザーがいないゲームをプレイしようと思わないので、何日間プレイしてもらっているかはすごく大切です。その指標で見ると、テレビCMを放映しているタイミングは目に見えて継続率が高くなります。

土井 獲得CPIだけでなく、テレビCMを流している間は「皆このゲームをやっているんだな」と思って続けてくれることを重視しているということですね。

黒田 そうなんですよ。獲得自体はTikTokのほうがよく、キャラのかわいさなどがユーザーには刺さるのですが、ゲームを始めてもなかなかそのキャラが出てこないなどして続かない人も多いのです。

その点、テレビCMは継続率が高く、復帰も多いです。ダウンロード後しばらくプレイしていなかったけれど、テレビCMを見てまたプレイしてみようと考えるのだと思います。ゲーム内イベントやキャンペーンなど毎月のようにアップデートをしていて、その都度ウェブCMでも告知しますが、テレビCMが後押ししてくれている感じです。

土井 テレビを含むマスマーケティングとウェブマーケティングは、どのような割合でやっていますか。

黒田 一番比重が大きいのはウェブですが、テレビでもウェブでもないオーガニックと呼んでいる独自展開にも30%くらい使っています。海の家のコラボとか、パチンコ・パチスロコラボとか、実際に触れられる、どこに行っても会えるというように、ラグナドール漬けの環境を作ろうとしています。

土井 貴社のやり方はかなり独創的だと思いますが、その着想はどこからくるのでしょうか。

黒田 思いつくというより、自分からかなり情報を取りにいっていますね。ゲームを広告メディアとして見るという点はかなり斬新らしく、ゲームにはこれだけユーザーがいて、多くの方々に見てもらえる媒体なんですよということは、色々な企業に刺さります。

ユニークなところでは、大手飲料メーカーの自動販売機とのコラボにも取り組んでいます。ドリンクを買うとゲーム内で使えるガチャ券がもらえるという仕掛けです。このやり方だと、こちらはほとんどコストをかけずに露出することができますし、飲料メーカーとしてもガチャ券のためにドリンクを買ってくれる新規顧客獲得が見込めます。

土井 Win-Winでありながら、とても立体的な展開ですね。とても参考になります。

テレビCMの逆襲 運用型CMで売上50億を2年で実現したテレシーCEOの実践広告論
土井健(どい・けん)
同志社大学卒業後、サイバードへ入社。モバイル広告代理店事業立ち上げに従事。2011年にECナビ(現CARTA HOLDINGS)に入社。グループ会社であるfluctに出向し、スマートフォンSSP「fluct」の立ち上げに参画。年間売上高20億から114億の日本最大級のSSPに育て上げ、東証一部(当時)上場に貢献。2016年fluct代表取締役を経て、2020年VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)取締役に就任しテレシーの立ち上げに参画。2021年、テレシー代表取締役CEO(現職)。運用型テレビCM事業の成長を主導するとともに、タクシー広告、アドトラック、世界初のヘリコプター広告などのメディアにも注力する。

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