飲食業界が抱える課題と問題点

新型コロナウイルスが5類感染症に移行した後も、飲食業界全体では回復基調にあるとはいい切れない。コロナ禍で客足が減少した以外にも、飲食業界はさまざまな課題を抱えているためだ。

ここからは、飲食業界が抱える主な課題と問題点を解説する。

原材料の高騰

原油や原材料の高騰は、多くの飲食店にダメージを及ぼしている。飲食店ドットコムを運営するシンクロ・フードの調査(2022年4月)によると、回答した飲食店経営者・運営者のうち9割以上が、原材料高騰による影響を実感している結果となった。

飲食業界

東京商工リサーチの資料(※)によると、2023年に値上げされた約3万2,000品目のうち、最多は調味料で9,000品目を超えている。加工品や飲料・酒の値上げ品目も多いため、価格転嫁を余儀なくされている店舗は多いと考えられる。

(※)参考:東京商工リサーチ「11月の飲食料品の値上げ公表は14社、795品目 円安が理由の値上げ 品目数の約7割まで上昇 | TSRデータインサイト

人材不足による人件費の高騰

シンクロ・フードの調査(2023年6月)によると、約4割の飲食店は人材不足に悩まされている。

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中でも不足しているのは、アルバイトやパートなどの非正規社員だ。コロナ禍は労働者の意識にも影響を及ぼし、営業時間短縮などで職を失った多くの人材は、すでに別の仕事を始めている。

最低賃金の上昇も相まって、人件費の高騰は飲食業界を悩ませる問題になっている。客足や予約数がコロナ禍以前の水準に戻っても、人材不足の店舗ではこれに対応できない。

感染症対策によるコスト増加

新型コロナウイルスが5類感染症に移行したとはいっても、ある程度の感染症対策は必要である。席を区切るパーテーションは撤去したものの、テーブルやカトラリーの消毒作業に追われている店舗は多いはずだ。

コロナ収束につれてコストは減ると考えられるが、現状では消毒液などの備品購入に加えて、パーテーションなどの処分費用も負担になっている。

イタズラによる風評被害

飲食店へのイタズラ行為は昔から存在したが、ネット文化の発達によって拡散または可視化されやすい状況になった。「自分の店舗はされていない」と安心しているかもしれないが、一つのイタズラが業界全体にダメージをもたらす可能性もある。

例えば、サラダバーやドリンクバーに悪質なイタズラをされた場合、同じ機器を設置する全店舗のイメージが悪化するかもしれない。また、大企業が徹底したイタズラ対策を講じ、それが消費者にとって当たり前の環境になれば、中小店舗もコストをかける必要が出てくるだろう。