新たな金融危機の到来が懸念されている。米国16位の米シリコンバレー銀行(カリフォルニア州サンタクララ)が、現地時間10日に破綻した。米銀としては2008年の金融危機のあおりを受けたワシントン・ミューチュアルの破綻に次ぐ過去2番目の大型破綻となった。世界を震撼(しんかん)させる経営破綻を引き起こしたシリコンバレー銀だが、日本ではどれぐらいの規模感の銀行なのか?

日本では「地銀クラス」の米シリコンバレー銀

同行の親会社であるSVBファイナンシャル・グループの総資産は2021年12月末時点で2110億ドル(約28兆1812億円)で、日本の金融機関では8位になる。そう聞けば「ベスト10圏内の巨大銀行」とのイメージが浮かぶ。

しかし、同グループの総資産は大手都市銀行や、ゆうちょ銀行の10分の1程度。ふくおかフィナンシャルグループに次ぐ地銀大手の一角を占めるポジションだ。もちろん、その規模の銀行が経営破綻すれば、国内景気を冷え込ませる不安定要因にはなるだろう。だが、世界経済に打撃を与えるほどのインパクトはない。

順位企業名総資産
1 三菱UFJフィナンシャル・グループ 373兆7319億円
2 三井住友フィナンシャルグループ 257兆7046億円
3 みずほフィナンシャルグループ 237兆661億円
4 ゆうちょ銀行 232兆9544億円
5 りそなホールディングス  78兆1550億円
6 三井住友トラスト・ホールディングス  64兆6332億円
7 ふくおかフィナンシャルグループ  29兆1719億円
* 米SVBファイナンシャル・グループ(2021年12月時点)  28兆1812億円
8 コンコルディア・フィナンシャルグループ  24兆607億円
9 めぶきフィナンシャルグループ  22兆8351億円
10 千葉銀行  19兆1047億円

*邦銀の総資産は2022年3月時点


重要なのは「規模」ではなくて「融資先」

ではなぜシリコンバレー銀の経営破綻が、ここまで大騒ぎになるのか?13日の東証の日経平均株価は同行の経営破綻を受けて、一時500円を超える値下がりとなり、終値は6営業日ぶりに2万8000円を割り込んでいる。

それはシリコンバレー銀の主な融資先が、米国経済の成長を牽引してきたスタートアップ企業だからだ。同行の破綻で取引先は早くも苦境に陥っているという。

ベンチャー企業やスタートアップ企業のトップから次週の給与に充てるために自己資金を使っているとの声も聞かれ、電子商取引のスタートアップ企業の少なくとも2社が顧客に事業継続のために自社サイトでの買い物を増やすよう要請したと米ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。

同行は2008年にイスラエル、12年には中国で合弁会社を開設するなど、スタートアップ大国での資金供給にも力を入れてきた。シリコンバレー銀破綻で融資先の連鎖倒産が発生すれば「スタートアップバブル」が崩壊し、グローバル株式市場の暴落を引き起こしかねない。

さらにはイノベーションの鈍化を招く可能性もある。「日本の地銀クラスの金融破綻」と軽視することはできないのだ。

文:M&A Online編集部