高齢化の進展によって、介護の必要性が高まっています。介護は突然始まることもあり、長期化するほどお金がかかるため、早めに資金を準備する必要があります。公的介護保険を利用すれば、介護サービスの自己負担額を抑えられるので、介護保険の仕組みを理解しておくことも重要です。

本記事では、介護費用・期間の平均や公的介護保険の仕組み、介護費用に備える方法を紹介します。

介護費用はいくらかかる?

介護費用はいくらかかる?平均額や公的介護保険の仕組みを知って将来に備えよう
(画像=AYANO/stock.adobe.com)

介護費用を準備するには、必要額の目安を知っておく必要があります。まずは、介護費用の平均額について見ていきましょう。

介護費用の平均は月額8.3万円

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2021年度)」によると、介護費用の平均は月額8.3万円です。この金額には、公的介護保険サービスの自己負担額も含まれます。リフォームや介護用ベッドの購入といった一時費用は、平均74万円となっています。

介護を行った場所別に見ると、平均費用は在宅が月額4.8万円、施設が月額12.2万円です。在宅に比べると、施設介護は費用が高くなる傾向にあります。

介護期間の平均は5年1ヵ月

生命保険文化センターの同調査によると、介護期間の平均は5年1ヵ月(61.1ヵ月)です。内訳は、4年以上が49.1%で全体の約5割を占めています。10年以上は17.6%となっていることから、介護が長期化する可能性も考えられます。

介護費用の総額の目安

上記の介護費用の月額平均および平均介護期間から、介護費用総額の目安を試算しました。

区分介護費用総額の目安計算式
平均約507万円8.3万円×61.1ヵ月
在宅約293万円4.8万円×61.1ヵ月
施設約745万円12.2万円×61.1ヵ月

介護費用総額の平均は約507万円です。場所別では、在宅は約293万円、施設の場合は約745万円が目安となります。あくまでも概算費用であり、介護期間が長期化すればさらに費用がかかる恐れがあります。

公的介護保険の仕組みと自己負担額の目安

公的介護保険では、介護が必要になった場合にさまざまな介護サービスを受けられます。ここでは、公的介護保険の仕組みや自己負担額の目安、利用方法を紹介します。

公的介護保険とは

公的介護保険とは、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みで、2000年にスタートしました。運営主体は市町村と特別区で、公費(5割)と被保険者から徴収する保険料(5割)を財源としています。40代以上の人は介護保険に加入して、介護保険料を納めなくてはなりません。

被保険者が要介護状態となった場合は、被保険者区分に応じて、1〜3割の自己負担で介護サービスを受けられます。

第1号被保険者第2号被保険者
対象者65歳以上の人40~64歳の人
受給要件・要介護状態(寝たきり、認知症などで介護が必要な状態)
・要支援状態(日常生活に支援が必要な状態)
要介護・要支援状態が、末期がん・関節リウマチなどの加齢に起因する疾病(16の特定疾病)に限定
保険料の徴収方法市町村と特別区が徴収(原則、年金から天引き)医療保険料と一体的に徴収(健康保険加入者は、原則、事業主が1/2を負担)

第1号被保険者は、原因を問わず要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けられます。一方、第2号被保険者は、特定疾病が原因で要介護(要支援)認定を受けた場合に限り利用できます。

介護保険における利用者負担

介護保険の対象となる介護サービスは、所得に応じて1〜3割の自己負担で利用できます。主な介護サービスは以下の通りです。

自宅訪問介護訪問介護員が入浴、排せつ、食事などの介護を行うサービス
訪問看護自宅で療養生活が送れるよう、看護師などが日常生活の援助、医師の指示のもと必要な医療を提供するサービス
福祉用貸与日常生活や介護に役立つ福祉用具のレンタルサービス
日帰り通所介護
(デイサービス)
食事や入浴などの支援、心身の機能維持・向上のための訓練などのサービスを日帰りで提供
通所リハビリテーション
(デイケア)
日常生活の自立を支援するために、施設や病院で理学療法士などがリハビリテーションを行うサービス
宿泊短期入所生活介護
(ショートステイ)
施設などに短期間宿泊し、食事や入浴などの支援、心身の機能維持・向上のための訓練支援などを行うサービス
施設特別養護老人ホーム常に介護が必要で、自宅での介護が困難な人が入所できる施設(原則、要介護3以上の人)
介護老人保健施設自宅で生活できるようにするための支援を提供する施設

施設サービス利用時の居住費、食費、日常生活費は原則自己負担です。ただし、所得や資産などが一定以下の人は「補足給付」の対象となり、負担限度額を超えた居住費と食費については介護保険から給付を受けられます。

介護保険利用時の自己負担額の目安

在宅サービスの場合、以下のように要介護度別に1ヵ月あたりの利用限度額が定められています。

区分1ヵ月あたりの利用限度額
要支援15万320円
要支援210万5,310円
要介護116万7,650円
要介護219万7,050円
要介護327万480円
要介護430万9,380円
要介護536万2,170円

限度額の範囲内であれば、1〜3割の自己負担で利用できます。限度額を超えてサービスを利用する場合、超えた部分は全額自己負担です。

一方、施設サービスは個室や相部屋などの住環境によって自己負担額が変わってきます。例えば、要介護5の人が特別養護老人ホームを利用する場合、1ヵ月の自己負担額の目安は以下の通りです。

相部屋(多床室)ユニット型個室
施設サービス費の1割2万5,200円2万7,900円
居住費2万5,650円6万180円
食費4万3,350円4万3,350円
日常生活費1万円(施設ごとに設定)1万円(施設ごとに設定)
合計約10万4,200円約14万1,430円

介護保険を利用する方法

自身や家族に介護が必要になり、介護サービスを利用する場合は要介護(要支援)認定を受ける必要があります。手続きの流れは以下の通りです。

  1. 要介護(要支援)認定の申請
  2. 要介護認定の調査・判定
  3. 認定結果の通知
  4. ケアプランの作成
  5. 介護サービスの利用

まずは、市区町村の窓口で要介護認定の申請をしましょう。申請の際は、「介護保険の被保険者証」が必要です。

市区町村の職員(認定調査員)が自宅を訪問し、本人や家族から聞き取り調査を行います。原則として、申請から30日以内に市区町村から認定結果が通知されます。

要介護1〜5と認定された場合、在宅介護サービスを希望するときは支援事業者と契約し、その事業者のケアマネージャーに依頼してケアプランを作成してもらいます。施設への入所を希望する場合は、施設に直接申し込みます。

要介護認定を受けるかどうかに関係なく、介護について不安や悩みがある場合は、介護に関する総合的な支援を行っている「地域包括支援センター」に相談しましょう。

介護費用に備える方法

介護に備えて、まとまったお金を準備するにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、介護費用に備える方法を3つ紹介します。

不動産投資

不動産投資は、マンションやアパートなどを貸し出して家賃収入を得る方法です。入居者がいれば毎月家賃を受け取れるので、安定収入が期待できます。介護が長期化しても、家賃収入で月々の介護費用を賄うことが可能です。

不動産投資は金融機関の融資を利用でき、家賃収入からローンを返済できるので、まとまったお金を用意しなくても投資を始められます。また、入居者募集や賃貸借契約、家賃の回収などの賃貸管理は管理会社に任せられるため、仕事や介護をしながらでも取り組めます。

不動産投資を始める場合は、収益物件を取り扱う不動産会社に相談するといいでしょう。

投資信託

投資信託は、不特定多数の投資家から集めた資金を1つにまとめ、専門家が株式や債券などで運用を行う金融商品です。価格変動リスクはありますが、預貯金よりも期待利回りが高く、多くのお金を準備できる可能性があります。

運用益に税金がかからないNISAを活用することで、より効率的に資産を増やすことが可能です。投資信託は積立投資に対応しているので、毎月の収入を少しずつ投資に回せるのもメリットです。

投資信託は、保有中に「信託報酬」と呼ばれる運用管理費用がかかります。信託報酬は銘柄によって異なるため、コストが低いファンドを選ぶといいでしょう。

民間の介護保険

民間の介護保険は、生命保険会社などが提供している任意保険です。所定の給付条件を満たせば、65歳未満であっても給付を受けられます。一時金、年金など、給付方法は商品によって異なります。民間の介護保険に加入することによって、公的介護保険だけでは足りない保障をカバーすることが可能です。

一方で、公的介護保険とは別に保険料を払う必要があり、要介護度によっては給付対象とならないこともあります。仕組みを理解した上で、加入するかを判断することが大切です。

まとめ

介護期間の平均は5年1ヵ月で、介護費用は約507万円が目安です。また、リフォームなどの一時金がかかることもあります。介護が長期化すれば、さらに費用がかかるかもしれません。家族に過度な負担をかけないためにも、早めに介護費用の準備を始めましょう。

(提供:Incomepress



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