インパクト投資の財務上のポテンシャルを可視化する手法「インパクト加重会計」(IWA:Impact-Weighted Accounts)の取り組みが浸透し始めている。シブサワ・アンド・カンパニーの渋澤健氏が中心となって推進する「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志一同」(以下、有志一同)が同会計の取り組み事例を公開した。

シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 CEO/「新しい資本主義実現会議」委員 渋澤健氏
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 CEO/「新しい資本主義実現会議」委員 渋澤健氏

有志一同は、ESG(環境/社会/ガバナンス)活動の中で財務の指標化が困難とされる「S:Society(社会)」の領域において科学的根拠にリンクさせやすい「グローバルヘルス」(地球上の連鎖的な健康リスクの低減に向け、国境を超えてあらゆる場所の保健医療水準を高める活動)分野に注力し、インパクトの数値表現に挑戦する。

いくつかの事例の中で、エーザイのインパクト加重会計の取り組みがユニークだ。たとえば、リンパ系フィラリア症治療薬が蔓延国にもたらす製品のインパクトを財務諸表に盛り込む。治療薬DEC錠(ジエチルカルバマジン錠)の投与による感染/重症化予防が、蔓延地域で生活する数千万人の人々の労働時間の改善と医療費削減をもたらすとし、その生涯価値をおよそ7兆円(年平均1,600億円)の社会的価値と見積もってEBITDAに併記する。

EBITDAは損益計算書に表示される会計上の利益ではないが、各国の税制や税率、金利水準などの影響を最小限に抑えた指標として、グローバル企業の収益力を測る目的で参照されることが多い。インパクトの価値をEBITDAに併記するということは、中長期的な視点で企業価値を評価する指標に組み込まれることを意味する。

インパクト加重会計は主に雇用(従業員等)や環境、製品/サービスによるインパクトに分類され、現在、実証的な研究が進められている。インパクトを貨幣価値に換算して財務諸表に組み込むことをめざしているため、投資家にとっては、インパクトも踏まえた投資判断の指針になる可能性がある。