ペットを飼う人が増えていますが、そのなかでも猫を飼う人は近年とても多くなっています。長らく犬がペットの筆頭格でしたが、今や猫が飼育頭数でその地位を逆転したとのデータもあり、猫が人の生活と密接に関わっていることが浮き彫りになっています(一般社団法人ペットフード協会「令和4年全国犬猫飼育実態調査」より)。
同調査では900万頭近くの猫が日本全国で飼育されていると推計されていますが、これだけ多くの人たちに猫が愛されていることにはもちろん理由があります。散歩などの手間がかからないといった飼育負担の軽減だけではなく、猫には飼い主に対して多大な健康効果があることがさまざまな研究で明らかになってきていることも見逃せません。
アニマルセラピーや癒しの効果は誰もが想像できるところですが、それ以外にも想像を超える健康効果もあるので、本記事では「猫と暮らす生活」がもたらす意外な健康効果について解説します。動物が好きで健康寿命を延ばしたいという人は、ぜひ参考にしてください。
猫と暮らすと健康になる?
「猫と暮らす生活」と聞いて、どんな生活を想像されるでしょうか。映画やドラマなどに出てくる描写でよく目にする「縁側など陽だまりで気持ちよさそうに寝ているシーン」も、そのひとつです。
このシーンに抱くイメージは平和な時間、癒される風景などでしょう。猫に関する描写ではこうしたのどかな印象を与えるようなものが多く、このことからも人々が猫に対して癒される存在といったイメージをもっていることが分かります。
猫を飼っている人たちにとって猫は癒しの存在であり、さまざまな形で猫とコミュニケーションをとることでアニマルセラピー効果が得られるのは、よく知られているところです。
また、猫好きの人たち同士でネット上のコミュニティを作ったり、SNSで自分の猫の写真や動画を共有したりすることで人間関係を広げる人もいるので、こうした二次的効果によって高齢者の認知症予防なども期待できます。
まだまだある、意外な猫の健康効果
ここまで述べてきた癒し効果や高齢者の認知症予防などは、いずれも感覚的な効果です。「確かにそうだろう」と思えることですが、こうした猫の健康効果にはさまざまな研究結果やエビデンスがあります。
1つめは、東京農業大学の研究チームが発表した「人と猫の関係に関する行動生理学的研究」という研究論文です。同論文では猫との触れ合いを通じて人間の交感神経活動が適度に覚醒し、前頭前野の活性化によって認知機能が向上している可能性があると指摘しており、人間の心身に対する健康効果があると結論づけています。
また、猫と関わる行動を取ることで脳内の酸素化ヘモグロビン濃度が上昇していることも、ある実験の結果で明らかになっています。酸素化ヘモグロビン濃度は、脳の活性化についての状況を計ることができる指標のひとつです。猫と関わる行動によって脳内の酸素化ヘモグロビン濃度が上昇しているということは、「脳が元気に活動している」と解釈できます。
これだけではありません。猫はリラックスしている時や機嫌がよい時に独特のゴロゴロ音を鳴らします。このゴロゴロ音は子猫の時から発することで知られており、母猫と子猫のコミュニケーションのためにあるといわれています。
猫と接していてゴロゴロ音を聞くと、「今、機嫌がいい」ことを実感して人間も安心感や親近感を覚えます。このこと自体も人間の精神に好影響をもたらしますが、さらにこのゴロゴロ音には健康効果があるといいます。
猫のゴロゴロ音は25ヘルツ前後の低周波で、こうした音には副交感神経を優位にさせる効果があります。人間もリラックスすることによって幸せ感をもたらすホルモンとして知られるセロトニンの分泌を促進し、自律神経やホルモンバランスを整える効果が期待できます。
さらに猫のゴロゴロ音は骨の形成や強化をもたらす周波数とほぼ同じであるため、骨の形成や強化を促進する働きも期待されています。猫のゴロゴロ音によって骨密度が高まり、骨折予防になる可能性があるわけです。
猫ならではの性格が人間を元気にする
「ツンデレ」という言葉があります。「ツンツン」した態度と「デレデレ」した態度の両方をとる人のことや性格を指す言葉ですが、多くの猫はこの「ツンデレ」を地で行くような性格の持ち主です。
猫を飼っている人であれば心当たりがあると思いますが、猫は呼んでも来ないことが多いですし、気分によって行動パターンが大きく変化します。こうした自由気ままな性格の猫と付き合っていくには、人間が猫の心を読み取り、コミュニケーションをとる努力をする必要があります。
このことが人間の脳を活性化し、独り暮らしをしている高齢者などには認知症予防の効果が期待できるといわれています。これは他のペットにはない傾向なので、「猫と暮らす生活」で手に入るメリットといえるでしょう。
猫との暮らしにかかるコスト
次は猫との生活にかかるコストについてのお話に進みましょう。猫を飼うために必要なものでコストを伴うものを列挙すると、以下のようになります。
・日々のエサ
・トイレの砂
・水
・爪とぎ
・おもちゃ
これらの費用を合計すると、毎月数千円程度です。日本ペットフード株式会社が行ったアンケート調査によると、猫の食費は月間平均で4,142円です。これにトイレの砂や爪とぎ、おもちゃなどを適宜購入したとしても1万円を超えることはないでしょう。
ワクチン接種や病気になった時の医療費など単発で発生する費用もありますが、日常的なコストを見ると、それほどお金がかかる印象はありません。
また、旅行などで家を留守にする場合はどうなるのかと懸念する人は多いですが、その場合はペットホテルへの宿泊、もしくはキャットシッターといって自宅を訪問して猫の世話をしてくれるサービスを利用するのが一般的です。キャットシッターを利用すると1日あたり数千円程度です。
「猫と暮らす生活」を手に入れるのに、金銭的なハードルはそれほど高くないと考えてよいでしょう。
猫は「ノーブランド」傾向
前項では猫との暮らしにかかるコストを紹介しました。これは言わば「ランニングコスト」で、最初に猫を飼い始める際の「イニシャルコスト」も気になるところです。
スコティッシュフォールドやアメリカンショートヘア、マンチカンといった猫はいずれも高価で、価格が数十万円になることも珍しくありません。これだと手軽に飼い始めるのが難しいと感じるかもしれませんが、猫は犬と比べると「ノーブランド」の傾向が強く見られます。
冒頭でも紹介した一般社団法人日本ペットフード協会のレポート「令和4年全国犬猫飼育実態調査」では、犬の飼育頭数のうちトイ・プードルやチワワ、柴犬などが上位を占めているのに対して、猫の飼育頭数は雑種が圧倒的多数です。このデータからは、犬を飼っている人はブランド志向が強いのに対して猫を飼っている人は猫の種類にあまりこだわりがないことが分かります。
雑種の猫であれば持て余している人から譲り受ける、里親になる、捨てられている猫を拾ってくるなど、お金をかけることなく飼い始められる方法はたくさんあります。
里親サイトなどを通じて猫を譲り受けると、そのことが縁となって人間関係が広がることもあるので、ペットショップで探すよりも雑種の猫を譲り受ける方法を模索したほうがよいかもしれません。
(提供:Incomepress )
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