この記事は2023年5月21日に「CAR and DRIVER」で公開された「フェラーリの新しいFRソフトトップモデル「ローマ・スパイダー」がジャパンプレミア」を一部編集し、転載したものです。
跳ね馬の新世代FRモデル「フェラーリ・ローマ」のオープン仕様「ローマ・スパイダー」が日本初公開。専用ファブリック製の電動ソフトトップはわずか13.5秒で開閉が可能。パワーユニットには620ps/760Nmを発生する進化版3.9リットルV8ツインターボエンジンを搭載。車両価格は3280万円に設定
フェラーリ ジャパンは2023年5月18日、本国で本年3月に発表したばかりの新世代FRモデル「ローマ(Roma)」のオープン仕様「ローマ・スパイダー(Roma Spider)」を日本で初公開した。車両価格は3280万円に設定する。
改めてローマ・スパイダーの特徴を紹介しよう。
「La Nouva Dolce Vita(新しい“ドルチェヴィータ=甘い生活”)」をコンセプトに誕生したローマは、フェラーリ伝統のFR(フロントエンジン・リアドライブ)シリーズに加わった新世代の2+2モデルで、従来はベルリネッタ(クーペ)のみを設定していたが、新たにソフトトップを配したオープンボディのスパイダーを追加した。跳ね馬のFRレイアウトのソフトトップモデルとしては、1969年デビューの365 GTS4以来、実に54年ぶりの新登場となる。
オープン化に際しては、コクピットまわりを入念に強化したうえで、センタートンネル部に設けたスイッチを操作するだけで開閉できる新設計の電動ソフトトップを装備。後部には格納したソフトトップをリアボディラインに沿ってシームレスに覆うトノカバーを配する。開閉に要する時間はわずか13.5秒で、60km/h以下であれば走行中でも操作が可能だ。ソフトトップ自体は5層構造で仕立て、エレガントさとともにクローズド時の高い室内静粛性を確保した新素材のファブリックを採用。ファブリックは2トーンの織りを4色から選べるほか、オプションとして数々のテクニカルなスペシャル・ファブリックを設定した。また、リアシートの後方にはバックレストと一体化した特許取得の新ウィンドディフレクターを装備。オープン走行時の風の巻き込みを効果的に抑えている。
エクステリアはベルリネッタの優雅なルーフラインをオープン仕様でも再現する目的で、リアスクリーンをソフトトップの一部として設計。オープン時にはトノカバーの下に格納され、リアのカーボンファイバー製アクティブスポイラーからダブルバブルを組み込んだトノカバー、リアのベンチおよびヘッドレストまでがシームレスにつながるデザインに仕立てる。また、クローズド時はベルリネッタと同様の流麗なルーフラインを構築し、新世代コンセプトのフロントグリルやシャークノーズを形作る前端、長いフロントボンネット、モンツァSPの流れを汲む直線的なヘッドライト、スクーデリア・フェラーリのシールドを排してシンプルかつスマートな造形としたボディサイド、前8J×20アロイホイール+245/35ZR20タイヤ/後10J×20アロイホイール+285/35ZR20タイヤの専用シューズ、コンパクトでミニマリストな形状としたうえでツインテールライトを埋め込んだ独特なリアセクション、フェンスとエグゾーストエンドをきれいに組み込んだディフューザーなどとともに、エレガントかつ魅惑的なスタイリングを創出した。
内包するインテリアはベルリネッタと同じく、ドライバー側とパッセンジャー側を別々の空間で演出するデュアルコクピットの“セル”構造の理念を進化させたうえで、デジタル化した最新のインターフェースを積極的に採用したことがトピック。また、2個のコクピットをパイピングの縁取りで強調するとともに、ぐるりと取り囲むラインで繭のように包み込み、そのラインがダッシュボードからリアシートにまで伸び、ダッシュボード、ドア、リアベンチ、センタートンネルを有機的に結びつける。装備面では、18段階の温度調整が可能なヒーター付きシートを配し、オプションでネックウォ-マーなどを設定して、オープン走行時の快適性を高めた。さらに、前席にはサポート性と座り心地を両立させた上質なバケットシートを装着。前席背後には、フェラーリ自身が“2+”(2+2といえるほど広いスペースではない)と表現する小ぶりのシートを配備し、ヘッドレストをダブルバブルの前端に組み込む。一方、トランクルームは220mmの厚さに折りたたまれるソフトトップの格納機構の効果で、クローズド時で容量255リットルと十分な積載スペースを確保した。
フロントミッドシップに搭載されるエンジンは、タービンの回転を測定する速度センサーや選択したギアに合わせてトルク伝達量を電子制御するバリアブル・ブースト・マネジメント、回転質量を削減したフラットプレーン式クランクシャフト、小型化を図って慣性モーメントを低減させたツインスクロールのターボチャージャーなどを採用した3855cc・V型8気筒DOHCツインターボユニットで、9.45の圧縮比から最高出力620ps/5750~7500rpm、最大トルク760Nm/3000~5750rpmを発生する。オイルポンプの改良により、コールドスタート時の油圧上昇時間の70%短縮も図った。組み合わせるトランスミッションには、SF90ストラダーレ譲りの8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を採用。性能面では、最高速度が320km/h以上、0→100km/h加速が3.4秒を実現した。
フェラーリならではのハイパフォーマンスをオープンボディで具現化したことも、ローマ・スパイダーの訴求点だ。基本骨格にはスパイダー専用設計のサイドシルやAピラーおよびフロントウィンドフレームなどを採用して、高い剛性を確保。一方、重量増はベルリネッタ比で+84kgに抑え、車両重量は乾燥重量で1556kg、前後重量配分は前48:後52を実現した。一方、シャシー面ではオープンボディ化に即して足回りに専用セッティングを施したうえで、リアセクションにはポルトフィーノMに配備したコンポーネントをローマ・スパイダー用に改良して採用。また、サイドスリップを予測してコントロール系の制御システムへ伝達するSSC(サイドスリップ・コントロール)のバージョン6.0や、「Wet」「Comfort」「Sport」「ESC-Off」のほか「Race」モードも選択できるダイナミックコントロールシステムのFDA(フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー)なども装備した。
エアロダイナミクス性能にも磨きをかける。LD(ロードラッグ)/MD(ミディアムダウンフォース)/HD(ハイダウンフォース)の3段階のポジションで自動展開・格納するアクティブリアスポイラーは、オープン化に合わせて制御を最適化。また、ウィンドスクリーンのヘッダーレールには気流が分離する部分に5mmのノルダーを設置し、前述の新ウィンドディフレクターと合わせて、車内の乱気流と風切り音を効果的に抑制している。
なお、ローマ・スパイダーの発表の席でフェラーリ ジャパンのフェデリコ・パストレッリ社長は、ローマを企画した当時、スパイダーの設定は意図していなかったことを披露。従来はポルトフィーノがその役割を一身に担っていたが、フェラーリでマーケティング部門と販売部門を率いるエンリコ・ガリエラ氏がフェラーリ・スタイリング・センターの責任者であるフラビオ・マンツォーニ氏に、「ローマにオープンモデルがあったら、いいんじゃないか」と提案して、ローマ・スパイダーの開発が始まったという。そして、パストレッリ社長は「ローマ・スパイダーはオープンカーを好きな人はもちろん、初めてオープンカーに乗りたいというユーザーにも向けて造ったクルマ。2+のシートを配しているので、小さな子供がいる家族にもお勧めできる。人生をもっと楽しみたいと思っている人に、ぜひローマ・スパイダーを乗ってほしい」とコメントした。
(提供:CAR and DRIVER)