本記事は、片田智也氏の著書「職場ですり減らないための34の『やめる』」(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネスマン
(画像=taka/stock.adobe.com)

人の期待に応えるのを、やめる

「職場ですり減らないための34の『やめる』」から引用
(画像=「職場ですり減らないための34の『やめる』」から引用)

「頑張ってね」「期待してるよ」「あなたならできる」

誰かに期待されて悪い気はしません。応援してくれる人がいる。成果を待っている人がいる。そう思うと「期待に応えたい」と力が湧いてくるものです。

でも、期待を満たすことが当たり前になると、つらくなります。

「何を求められているのかな」「どう動いて欲しいのだろう」。相手の要求を先回りしていれば、心がすり減るのは時間の問題。「ちょっと疲れてるかも」。そう感じたら、期待に応えるのをしばらくやめてみてください。

「何を期待されているかわかるので、つい応えてしまいます」

そう話してくれたのは介護の現場で働く30代の女性。

「喜んでもらえるのがうれしい反面、つらくなることも多い」そう。

「いきなり『裏切られた!』といって怒りをぶつけてくる人もいたり……、何のために頑張っているのか、わからなくなるときがあります」

何をどのぐらい期待するのか。それは、その人次第です。

「できて当たり前」「そうするのが普通」「達成して当然でしょ?」

「ある前提」で、高い期待を抱く人もいるでしょう。当然、いつもそれに応えられるわけではありません。不本意ながら思いを裏切ることもあります。

残念そうにため息をつかれたり、がっかりと肩を落とされたり、「失望した!」などと責められたり、不満の感情を向けられるのはつらいものです。

では、そういった不満の原因はどこにあるのでしょうか?

「期待を裏切った私が悪いんです」。それは違います。勝手に期待をし、裏切られたといって不満を訴える。原因は、その人自身の心にあるのです。

心理学者のアルフレッド・アドラーはこういっています。

「あなたは他者の期待を満たすために生きているのではない」

期待に応えることが目的になると、心は確実に疲弊していきます。

前述の女性はこうもいっていました。「要求を満たすと、だんだんそれが当たり前になるみたいで、注文されることが難しくなっている気がします……」

満たせば満たすほど、期待のハードルは上がっていくのです。

会社や上司は結果を期待してきます。もの分かりのいい人を期待される場面もあるでしょう。それを読み取れる繊細な人ほどこう思うかもしれません。

「勝手に期待して、がっかりするのはもうやめて欲しい」

でも、その「欲しい」もまた、あなた自身の期待です。

他人に対し、こうあって欲しいと願うことはできます。でも、実際にどうあるかを決めるのは、あくまでもその人自身。アドラーの言葉には続きがあります。

「他者もまた、あなたの期待を満たすために生きているのではない」

私たちは他人に対し、期待をしながら生きています。でも、それはほとんど身勝手なものなのです。願いが叶わないからといって失望するのはお門違い。それを認めることができれば、他人の期待に応える必要がないことも腑に落ちるでしょう。

会社が数字を期待してくるのは当然のこと。

もの分かりのいい人が歓迎されるのも当たり前です。

いい上司を期待されている? そう思うのは自由でしょう。

人が何を期待するのか、それを侵害する権利はありません。

だからといって、勝手な期待に応える義務もないのです。

他人の期待を真に受けてすり減るのはもう終わり。

力を抜いて、もっと自然体で振る舞ってみてください。

「期待に応えなくては」などという呪縛は捨ててしまうことです。ずっと背負っていたプレッシャーを降ろせれば、心の疲れも和らぐでしょう。

まとめ
人の期待に応えるのをやめて、人に期待を押しつけるのもやめる
職場ですり減らないための34の「やめる」
片田智也
一般社団法人 感情マネージメント協会代表理事 公認心理師、産業カウンセラー
大学卒業後、20代で独立するがストレスから若年性緑内障を発症、視覚障害者となる。同年、うつ病と診断された姉が自死。姉の死の真相を知るため、精神医療の実態や心理療法を探求、カウンセラーに転身する。教育や行政、官公庁を中心にメンタルケア事業に多数参画。カウンセリング実績は延べ1万名を超える。カウンセリングから企業コンサルティング、経営者やアスリートのメンタルトレーニングまで、心の問題解決に広く取り組む。企業研修やセミナーの受講者は延べ2万名以上。著書に『「メンタル弱い」が一瞬で変わる本 何をしてもダメだった心が強くなる習慣』(PHP研究所)、『ズバ抜けて結果を出す人だけが知っている 感情に振り回されないための34の「やめる」』(ぱる出版)がある。

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