本記事は、片田智也氏の著書「職場ですり減らないための34の『やめる』」(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「自信を持とう」を、やめる
「もっと自信を持とう」とアドバイスする人がいます。でも、自信なんて持とうと思って持てるものでしょうか。本来、自信とは行動し、結果が出ることで自然と身につくもの。経験や実績が少ないうちは「自信がない」がむしろ普通でしょう。
「自信がないから行動できない」という人は少なくありません。
その理屈でいえば、行動するには自信が必要ということになります。すると、自信を持つことが目的になってしまうのです。でも、自信とは結果であって目的ではありません。そこをはき違えると、進むべき道を間違えてしまいます。
「手っ取り早く自信を持つには?」。要は、近道を探そうとするのです。たいていの人は、ここで「他人から認められよう」と選択ミスを犯します。
他人からの評価で自信を持とうとするのは危険な発想です。
たとえば、学歴や会社名に固執したり、過去の実績にすがったり、フォロワーの数を誇ったり……。「見えやすいもの」で自分の力を示そうとしてしまいます。
この手の社会的評価にしがみつくのは、自信がない心理の表れです。
もし、思ったように他人が認めたり、褒めたりしてくれなければ? 自分を信じられなくなる……。こちら側に決める権利はありません。「どう思われるのか」ビクビクしながら過ごすことになります。心がすり減らないほうが変でしょう。
哲学者のエピクテトスはこういっています。「その人が望むものを与えたり、奪ったりできる力を持つ人は、その人にとっての主人である」。「認められたい」と思ったら、それは相手に対し、精神的に隷属するのと同じことなのです。
誰かに認めてもらわなければ、自分のことを信じられない……。それは果たして自信といえるのでしょうか? いや、いってみれば「他信」でしょう。
結局のところ、近道して手に入れた「他信」はもろいのです。
とかいう私自身、書いた本のレビューを読んで一喜一憂することはあります。正直、「星5つ」がつくとうれしいし、「星1つ」だと悲しい。ですが、そういった社会的評価によって自信を持ったり、失ったりしないように注意はしています。
そうしないと、他人の評価に仕える奴隷になってしまうからです。
確かに、他人からの評価は心に力を与えてくれます。お墨つきをもらった自分を信じるのはさほど難しくないでしょう。権威ある人からの賞賛であればなおさらです。でも、重要なのは、誰も認めてくれないときにこそ、自分を信じ抜けるかどうか。
迷ったり、疑ったり、後ろを向いたりしながらでも構いません。自信がないならないままで、それでも行動を起こせるかどうかが本当の勝負どころです。
私も決して自信満々なタイプではありませんし、視覚障害を負ってからは特にそう。自分の選択や行動すべてを信じられなくなった時期もありました。
そんな過去を思い出し、弱気になることは今でもあります。
だからといって、自信がないことを理由に立ち止まることはしません。
それをすると、永遠に止まってしまうことを知っているからです。
「自信がない、だから行動できない」のではありません。
「行動しない、だからいつまでも自信が身につかない」が正解。自信を行動の前提にしていると、ずっとその場で足踏みすることになってしまいます。
大丈夫です。あなたが思っているほど、皆が自信を持っているわけではありません。堂々として自信満々に見える人がいる? 十中八九、「他信」でしょう。
自信は見せものではありませんし、外からは見えたりしないものです。
「自信を持とう」とするのはやめましょう。自信はなくても、「こうだ」と思うことがあるなら、人の顔色をうかがったりせず挑戦してみてください。
行動が重なれば、自ずと結果が出るものです。遠回りでもホンモノの自信が身につけば、他人の評価を気にして心がすり減ることもなくなるでしょう。
- まとめ
- 他人からの評価で自信を持とうとせず、自信がなくても行動を起こす
大学卒業後、20代で独立するがストレスから若年性緑内障を発症、視覚障害者となる。同年、うつ病と診断された姉が自死。姉の死の真相を知るため、精神医療の実態や心理療法を探求、カウンセラーに転身する。教育や行政、官公庁を中心にメンタルケア事業に多数参画。カウンセリング実績は延べ1万名を超える。カウンセリングから企業コンサルティング、経営者やアスリートのメンタルトレーニングまで、心の問題解決に広く取り組む。企業研修やセミナーの受講者は延べ2万名以上。著書に『「メンタル弱い」が一瞬で変わる本 何をしてもダメだった心が強くなる習慣』(PHP研究所)、『ズバ抜けて結果を出す人だけが知っている 感情に振り回されないための34の「やめる」』(ぱる出版)がある。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます。