中小企業にとって、金融機関との付き合い方や関係構築のし方は重要なテーマだ。金融機関と上手に付き合うことで、資金繰りが悪化したときの融資がスムーズになるなど、さまざまなメリットがある。この記事では、経営者が金融機関と付き合うときの心構えや金融機関にまつわる知識を解説する。

目次

  1. 中小企業が金融機関と付き合う目的やメリット
  2. 中小企業が金融機関と関係構築して上手に付き合うための心構え6つ
    1. 1.複数の金融機関と付き合う
    2. 2.自社の情報を伝える
    3. 3.提出期限や連絡時間を守るなど当たり前の気遣いをする
    4. 4.セミナーやイベントに参加する
    5. 5.担当者の目標達成に協力する
    6. 6.金融機関を訪問する
  3. 金融機関から見た「付き合いたくない企業」5つの特徴
    1. 1.金融機関を頻繁に変える
    2. 2.借入のときしか付き合わない
    3. 3.情報開示に過度に慎重
    4. 4.記載漏れが多く期限を守らない
    5. 5.ノンバンクから借入がある
  4. 金融機関の種類と選び方の知識
  5. 金融機関の立場を考え「長く付き合いたい企業」になろう
金融機関が「付き合いたくない企業」5つの特徴
(画像=fizkes/stock.adobe.com)

中小企業が金融機関と付き合う目的やメリット

中小企業が金融機関と付き合う主な目的は融資だ。会社は創業期や拡大期、事業承継期など経営ステージに応じて資金調達が必要となる。資金調達にはさまざまな方法があるが、最もポピュラーなのは金融機関からの融資だろう。

中小企業が金融機関と長く付き合って関係を構築するメリットは、融資がスムーズになることだ。日頃から信頼関係を構築しておけば、予測できない事態に見舞われて資金繰りが悪化した際にも、融資を受けやすくなるだろう。

金融庁が2022年に地域金融機関等をメインバンクとする中堅・中小企業約3万社にアンケート調査をしたところ、約6割の企業が「メインバンクは経営に関する課題や評価を伝えてくれる」と回答している。

経営課題の解決につながる分析や評価を受けられることも金融機関と付き合うメリットと言えるかもしれない。

中小企業が金融機関と関係構築して上手に付き合うための心構え6つ

続いては、中小企業の経営者が金融機関と付き合うときの心構えを6つ紹介する。すべてを実践する必要はないが、自分なりに勘所を押さえて担当者と向き合うことが大切だ。

1.複数の金融機関と付き合う

いざというときにスムーズに融資を受けるためには、日頃から複数の金融機関と付き合っておくことが大切だ。

取引先の金融機関が1つだけだと、融資を断られたり融資額が希望に見合わなかったりした場合、ほかの金融機関に駆け込まねばならなくなる。しかし、金融機関の立場としては、日頃から取引もないのに困ったときだけ融資を求められても、いい印象を抱き難いだろう。

いざというときの融資のハードルが上がりかねないので、経営が順調なときこそ複数の金融機関と上手に付き合い、信頼を積み重ねておくことが重要だ。

2.自社の情報を伝える

会社の情報を金融機関に開示することは、信頼獲得につながる大切な行動だ。お金を貸した側としては、経営状態は常に気になるものだ。年に一度の決算書の提出だけでなく、月次試算表を開示したり四半期の業績報告をしたりすると、金融機関からの評価も高まるはずだ。

経済産業省が公開している、ベンチマークシートで経営状態を把握できる「ローカルベンチマーク(ロカベン)」を活用するのもいいだろう。

金融機関では、不正や癒着防止のために定期的な異動が行われており、担当者が変わることも多い。担当変更時は引き継ぎが行われるものだが、経営者としても新しい担当者に積極的に情報を開示するようにしたい。

また、業績が悪くなると金融機関に足が向かなくなりがちだが、そんな時こそ包み隠さず情報開示する姿勢が大切だ。金融機関の立場になって悪い情報も包み隠さず開示し、誠実さを態度で示すことで信頼関係が深まるだろう。

3.提出期限や連絡時間を守るなど当たり前の気遣いをする

提出期限を守る、書類の記載漏れがないようにする、連絡の時間帯に配慮するなど、当たり前の気遣いも大切だ。書類や質問への回答は、期限ぎりぎりではなく早いほどいい。連絡の時間帯は、お昼休みの12時から13時を避け、できるだけ営業時間内に連絡する方がいいだろう。

経営者はただでさえ多忙なので、気を抜くと自分のスケジュールを優先してしまいがちだ。また、従業員と関わることが多いと、期限などを指摘される機会がなくなってしまう。

金融機関の担当者は、日頃から多くの経営者として接している。担当者の立場になって提出期限や連絡時間帯に配慮してくれる経営者と、自分の都合を優先する配慮のない経営者だと、融資の稟議を通すときの担当者の熱量も自然と変わってくるだろう。

4.セミナーやイベントに参加する

金融機関からセミナーやイベントを案内されても、忙しい、興味がないなどの理由で聞き流していないだろうか。セミナーやイベントに参加することも、金融機関と上手に付き合うコツとなる。

金融機関は他社と合同でセミナーやイベントを企画することも多く、集客状況が悪いと付き合いに影響する恐れもある。自分が担当する顧客が1人もセミナーやイベントに参加してくれないと、担当者が居心地の悪い思いをする可能性もあるだろう。

毎回でなくとも、多少なりとも興味を引く内容なら、担当者の顔を立てて参加を検討するようにしたい。

5.担当者の目標達成に協力する

セミナーやイベントの参加以外にも、可能な範囲で担当者の目標達成に協力するのも上手に付き合うコツだ。

金融機関では、公共料金の自動引き落とし、定期預金の預入、投資信託や保険の購入など、担当者にさまざまなノルマが課されることがある。目標達成に協力することで、融資が必要になった際に対応してもらえる可能性が高まるだろう。

6.金融機関を訪問する

金融機関の担当者が会社を訪問してくれることがあるが、経営者からも定期的に金融機関の支店を訪問しておくと金融機関からの印象は良くなる。

月次試算表や資金繰り表を持参して経営状況を伝えたり、積極的にコミュニケーションを取ったりすることで、経営状況を把握しつつ人とのつながりも大切にする経営者だと印象付けられる。信頼関係が構築できていれば、資金繰りが悪化しても融資について相談しやすくなる。