CASEという言葉をよく聞くようになったが、CASEの意味や内容をよくわからない人も多いのではないだろうか。近年、自動車業界を中心にCASEの研究・実証実験等が加速度を増して進んでおり、CASEが実現することで世の中がどのように変わるのか興味深い。企業経営者であれば、自分のビジネスにどのような影響があるのかを知っておくことも必要だ。
そこで本記事では、CASEの意味や政府・自治体が目指しているCASE戦略などについて簡単に解説しつつ、中小企業の事業への影響を事例も交えて紹介していく。
目次
CASEとは?意味を簡単に説明
CASE(ケース)とは「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリング/サービス)」「Electric(電動化)」の4つの言葉の頭文字をつなげた造語。簡単にいうと、これら4つをパッケージとして包括的に提供することで新たなモビリティ社会を実現させる概念とされている。
独ダイムラー社(現メルセデス・ベンツグループ)が2016年9月に行われたパリモーターショーでの中長期戦略の発表時、初めてこの言葉を公の場で用いて提唱した。以来、CASEは自動車そのものだけでなく、社会全体に変革をもたらすキーワードとして世界に広がっている。以下で、CASEを構成する4つの言葉の意味を説明しよう。
Connected(コネクテッド)
自動車に通信機器やセンサを搭載し、「走るIoT端末」としてインターネットで外部の機器やサービスとつながることを意味する。いわゆるコネクテッドカーとしてすでに実用化されている事例もある。
例えば、走行時の車両の状態や周辺の道路状況データを取得・分析することで、渋滞情報や駐車場の空き情報などの通知、交通事故発生時の自動通報、盗難時の車両追跡などを行う。また「つながる」ことは、CASEの2つ目の要素である自動運転の実現に欠かせない技術だ。
Autonomous(自動運転)
言葉通り、運転の自動化を意味する。ただし現状では、自動化の度合いに応じて5段階のレベルに分類されており、レベルが高いほど自動化の進行を示す。運転の監視主体はレベル1、レベル2では人が、レベル3以上はシステムだ。具体的には、以下のように各自動化レベルが規定されている。
ちなみに自動運転のシステムを搭載しておらず、完全に人が主体となって運転するレベルは「運転自動化・運転支援なし」としてレベル0とされている。自動運転に関しては、国や地域で法整備が異なるため、実用化のハードルは高めだ。
日本では、2021年3月にホンダが世界で初めてレベル3の自動運転を可能とする「Honda SENSING Elite」の搭載車「レジェンド」を発売。また2023年5月には、三菱電機株式会社が開発した国内初のレベル4「遠隔型自動運転システム」による無人自動運転移動サービスの車両が運行を開始した。
Shared & Services(シェアリング/サービス)
3つ目は、これまで所有するものと考えられていた自動車をシェアしたりサービスとして利用したりするものだ。大きく次の2つを指している。
- カーシェアリング:車両を共同所有・利用すること
- ライドシェアリング:一般のドライバーの自動車に他者が同乗(相乗り)してガソリン代などを負担しながら移動手段として利用すること
ライドシェアは、自動運転同様、国や地域で法整備が異なる。日本では、自家用車を使った有償での人やモノの運送にはさまざまな規制があり一部地域での利用に止まっているが、海外ではすでに普及している国や地域は多い。一方、カーシェアリングは日本でもすでに拡大しているのはご存じの人も多いだろう。
Electric(電動化)
自動車の電動化を指す。一般的に「電動化=EV(電気自動車)化」と思われているが、動力源に電気を使うハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)なども「電動車」に含まれる。世界全体で喫緊の課題となっている地球環境保護の問題もあり自動車メーカー各社は、電動車の開発に一層注力する姿勢を示している。