CASEは中小企業に好機となるか?自動車産業の協業事例を紹介

ここで自動車産業の協業の動向を紹介しておこう。CASEでは、大企業同士の協業例が目立つが中小企業やスタートアップとの協業事例もある。なかには、「CASEによって自社ビジネスにどのような影響があるかわからない」という経営者もいるだろうが、早期の変革や対応力の向上を図りたい。

豊田合成×エス.ラボ

豊田合成は、工作機や3Dプリンタなどの開発・製造・販売を行っているエス.ラボ(京都府)へ出資し、樹脂3Dプリンタ技術の開発を加速させている。自動車の既存部品を製造することが可能な代替技術を有する他企業への出資などを通じて、試作開発の短期化や少量多品種の製造の効率化などを進めている事例の一つだ。

アイシン×イデイン

自動車部品のグローバルサプライヤーであるアイシンは、スタートアップのイデイン(東京都)へ出資し、運転者モニターシステムの開発を加速させている。イデインは、エッジAIの高速化技術において世界随一の技術力を誇る企業で、これまで自動車産業各社に不足していた技術の早期獲得を進めている事例の一つである。

小島プレス工業×スパイバー

トヨタの協力企業として自動車の内外装部品を生産している小島プレス工業は、スパイバーとの協業により人工クモ糸繊維の量産の共同開発を始めた。スパイバーは、慶応大発ベンチャー企業で、微生物発酵プロセスによりつくられる構造タンパク質素材「Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン)」開発を事業としている。

非自動車分野にとってもCASEの進行がビジネスにつながる事例だ。

新規事業や新製品開発などには補助金を利用する手も

自動車産業の一大集積地である愛知県が県内の自動車関連を中心とする県内企業2,500社に対して行った調査によると、約4社に1社はCASEの進展に伴う新規事業への取り組みの必要性は感じているものの人材や資金不足を理由に取り組みができていない状況だ。そのため中小企業が利用できそうな補助金・助成金をいくつか羅列するので活用を検討するといいだろう。

地域中小企業応援ファンド(スタートアップ応援型)

中小機構、都道府県および地域金融関等が共同で基金を造成し、その運用益により、創業や販路開拓などに取り組む中小企業者などへ助成する制度。

ものづくり補助金

正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業者などによる革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する国の補助金。

専門家派遣 (中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業)

内外の事業環境の変化により高度、複雑な経営課題を抱える中小企業などに対し、事業の各段階に応じたさまざまな支援ニーズに対応するべく地域プラットフォーム(商工会・商工会議所や金融機関など地域の支援機関)より専門家を派遣してもらえる制度。経済的支援ではないが、CASE進展の影響を受けそうな企業は活用する価値がありそうだ。