CASEが推進されている背景と目的

冒頭でも述べたが、CASEはクルマという「移動手段のサービス」を提供し、新たなモビリティ社会を実現させる概念だ。その背景には「所有から利用へ」を促す人々の価値観の変化や、少子化・高齢化の加速に伴う高齢者の交通事故対策ニーズの増加などがうかがえる。もちろん気候変動対策もCASEが急がれている理由の一つだ。

なおCASEを理解するうえで「MaaS」と「グリーン成長戦略」の2つの言葉も知っておくとよい。これらは、後述する政府のCASE技術戦略においても重要なキーワードとなっている。

MaaS(マース)

MaaSとは「Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の略語。CASEがインターネットへの接続や自動運転、電動化など新たなモビリティ社会を実現させるための手段とするなら、MaaSはそのモビリティ社会のあり方だといえる。

例えば、地域住民や旅行者などのニーズに、移動単位でさまざまな公共交通やそれ以外の移動サービスを組み合わせて、「検索・予約・決済」などを一括で行うこと、また観光や買い物、医療、福祉など目的地における交通以外のサービスを連携させたオンデマンドのアクセスも可能だ。

さらに地域の課題解決にも資すると期待されている。日本では、現在国土交通省が関係府省庁と連携、MaaSの全国への普及に取り組んでいる。

グリーン成長戦略

「カーボンニュートラル」が世界共通の課題となっているなか、日本は2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出ゼロの達成目標を表明している。この一環で経済産業省が「経済と環境の好循環」を実現するための産業政策として2020年12月に策定したのが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(グリーン成長戦略)」だ。

当戦略では、注力すべき重要分野の一つとして自動車・蓄電池産業を位置づけている。具体的には、電動化の推進や水素の活用などを挙げ、遅くとも2035年までに乗用車新車販売で電動車100%を実現させる方針だ。そのための措置も講ずるとされている。

CASEの目的と期待される未来

CASEを制する企業が今後の自動車業界を制するともいわれる。しかしCASEは、自動車メーカー各社が独自の競争力を高めるためだけに研究・実験を進めているわけではない。CASEの実現には、ICTやAI技術など次世代技術を持つ企業をはじめ、業界および官民の枠を超えた多種多様な連携が必要となる。

経済産業省は、CASE・MaaSに関する取り組みとして2019年11月および2020年4月の2回にわたり、有識者、自動車会社、サプライヤなどからなる「CASE技術戦略プラットフォーム」を開催。「CO2の低減」「電動化技術」「AD/ADAS・コネクテッド技術」「基盤的技術」の各テーマで継続的な技術動向の共有および協調領域の探索、サプライヤや関連産業を広く巻き込んだうえで対応力強化について議論が進められている。