出資金の返済が必要となる場合もある
上述したように株式会社の出資金は返還しないお金であるが、場合によっては以下のように返済を要することもある。
解散・整理した場合
正式には「残余財産の分配」という。会社の負債や債権、固定資産などを整理した後に残った財産は株主に対して株式保有比率に応じて分配される。残余財産とは、以下のような資産整理を行い、最終的に残った財産だ。
- 債務の返済(買掛金・借入金など)
- 債権の回収(売掛金など)
- 固定資産の売却、現金化
前述したように株主は出資者のため、「残余財産の分配」は事実上、出資金の返還といえるだろう。残余財産の価値によっては、実際の出資額よりも多くなる可能性もある。
株式譲渡承認請求
上場企業などの公開株式の場合、株主は市場で自由に株式を売買できる。しかし非上場企業の株式では、株式の譲渡に関して制限が設けられているのが一般的だ。その場合、株式を売却するためには会社の承認が必要となる。その際、株主(または買い手)は会社に対して株式譲渡承認請求を行い、承認を得られれば買い手に対して売却が可能だ。
会社は、出資金を返還するわけではないが株主にとっては出資金の回収となる。ちなみに「誰が買い手なのか」「買取後の買い手の持ち分比率がいくらになるか」については、会社にとって慎重に検討すべき問題だ。譲渡承認請求をしたからといって必ずしも承認されるわけではない。
株式買取請求
単に出資金の回収という目的では買い手を見つけにくい。買い手が見つからない場合や上記した譲渡承認請求で不承認となった場合など、株主は会社に対して自分の持ち分を買い取ってもらうよう請求することができる。
出資金の返還義務はないが、出資者には株式で経済価値を提供
株式会社に対する出資金は、返還義務がない代わりに出資者は株式を得る。つまり経営参加権や配当金請求権などを有することが可能だ。とはいえ配当金は会社の業績によって異なり、出資した金銭の回収につながらない可能性もある。そのため出資する際には、出資の目的やリスクも熟慮したうえで行うことが大切だ。
また出資を受ける会社側は、出資者(株主)が得られる経済価値に満足できなければ第三者に譲渡する可能性があることも知っておきたい。あらためて出資金の意味を知り、出資者・出資を受ける会社の双方に利益をもたらせるような事業運営に努めてはいかがだろうか。