経営者は相談相手がおらず孤独を抱えがちだ。しかし、経営の舵取りをする上で相談相手がいれば心強く、ときに経営判断の助けにもなる。
この記事では、経営者の相談相手としてふさわしい相手や、相談相手の探し方、見極め方を解説していく。相談相手の有無や相談相手の候補について、中小企業の統計データも紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
目次
相談相手がいない経営者は多い
中小企業庁の「小規模企業白書(2020年版)」で、経営者に日常的な経営に関する相談相手の有無を尋ねたところ、次のような結果となった。
従業員が少ないほど、日常の相談相手がいないと答えた経営者が多いことが分かる。とくに従業員数0人の小規模企業では、製造業で48.1%、非製造業で44.0%もの経営者が日常の相談相手がいないと回答している。
中小企業の経営者に相談相手がいたほうがいい理由
人材育成や資金繰り、資金調達など、中小企業の経営者の悩みは多岐にわたる。また、創業期や事業拡大期、事業承継期など、経営ステージに応じた悩みもある。
最終的に経営判断を下すのは経営者だが、相談相手の意見を聞くことで多角的な視点で経営課題と向き合えるだろう。
たとえば、税理士や公認会計士、社会保険労務士などの専門家なら、専門知識に基づいたアドバイスを受けられるかもしれない。経営者仲間なら、実体験や経験値をもとにアドバイスをしてくれるだろう。自社の経営陣や従業員なら、事業内容や自社の企業風土を踏まえて意見を言ってくれる可能性がある。
経営者の相談相手の主な候補
経営に関して相談するには、信頼できる相手でなければならない。続いては、経営者の相談相手として適当な候補を紹介する。
中小企業庁の「小規模企業白書(2020年版)」で、日常的な経営に関する相談相手の属性を尋ねたところ、次のような結果になった。
小規模事業者、中規模企業ともに、相談相手のうち最も回答が多かったのは「税理士・公認会計士」で、続いて「同業種の経営者仲間(取引先除く)」や「経営陣、従業員」だった。
続いては、それぞれの相談相手の特徴を見ていこう。
税理士や公認会計士
税金の申告のため税理士や公認会計士と顧問契約を結んでいる中小企業は多い。自社の財務状況を把握している税理士や公認会計士は、財務に関する相談相手として適任といえるだろう。たとえば、売上に対する経費の比率や資金繰りの状況、設備投資の時期についてなど相談してみるといいかもしれない。
注意点をあげるなら、税理士や公認会計士によっては経営相談に乗れる範囲に大きくバラツキがあることだ。税金の申告をメイン業務とする税理士や公認会計士では、経営相談に真剣に対応してくれない可能性がある。
現在の税理士や公認会計士が親身に相談に乗ってくれない場合、経営相談を積極的に行っている税理士や公認会計士に切り替えるのも選択肢の1つだ。
経営者仲間
同業種、または異業種の経営者仲間も、相談相手にふさわしい存在だ。経営者仲間に相談するメリットは、経営者としての立場を理解してくれることが一番に挙げられる。
一人で重要な決断を下さねばならない孤独感や、従業員の生活を背負っているという責任感など、経営者だからこそ共有できる価値観はたくさんある。また、ときには経営陣や従業員には言えない弱音を吐くこともできるだろう。
経営者仲間は相談相手として心強い存在であるだけでなく、ときにはビジネスにおいても助けになってくれることがある。
経営陣、従業員
経営についても相談できる右腕ともいえる経営陣や従業員がいると、経営者としては心強い。経営陣や従業員に相談するメリットは、自社の事業内容や企業風土を熟知していることだ。販路拡大や競合他社との差別化など、踏み込んだ内容でともに頭を悩ませアイデアを出し合うこともできる。
また、従業員同士の人間関係にまつわるトラブルなど、経営者の立場からアプローチしにくい問題に関して、直接動いてもらえるというメリットもある。
金融機関
取引先の金融機関の担当者とも、経営相談ができる関係性を築いておくことが望ましい。金融機関と経営課題の内容を共有できていれば、いざという時の資金調達がスムーズになるというメリットもある。金融機関によっては、士業の専門家を紹介してくれることもある。
士業やコンサルタント
経営課題の内容に応じて、弁護士や社会保険労務士、司法書士、中小企業診断士など士業の専門家やコンサルタントを活用するのもいいだろう。士業の専門家やコンサルタントに相談するメリットは、専門知識に基づくアドバイスを受けられることだ。
公的支援機関
商工会や商工会議所、中小企業基盤整備機構、よろず支援拠点など、公的支援機関も上手に活用したい。公的支援機関のメリットは、公平で中立的な立場から質のいいアドバイスを受けられることだ。また、民間の事業者と違って無料で相談できることが多いのもメリットである。