account-1778_640


中国市場の開放による外国企業の反応は

中国国務院は10月29日の定例会議後に、国内のクレジット決済サービスについて、外資企業に市場を開放すると発表した。新しい規則では、基準を満たす外国企業は中国国内で決裁会社を設けることで、市場に参入できるとされている。

今回の発表は世界貿易機関(WTO)からの電子決済市場の自由化に向けた強い要望に応えたものとされる。さらに、米中の貿易懸案を解決させようとする中国政府の思惑、VISAが30日、「中国が市場開放を決めたことを歓迎する」との声明を発表しているように、VISAを初めとする外国企業にとっては巨大市場が開かれることはチャンスといえるだろう。


国内企業の市場シェア維持に自信を見せる中国

現在の中国ではクレジットカード市場の拡大が続いており、2013年のクレジットカードによる信用供与額は1.84兆元(約33.5兆円/1元=18.2円)に上る。これは前年比62%増であり、日本での2013年の信用供与額38.9兆円に迫る勢いである。

しかし、中国国内における電子決済市場は銀聯(ぎんれん)が運営するUnionPayによる独占市場であり、クレジットカードを使用する際には、VISA、MASTERSなどの国際ブランドであったとしても銀聯に接続した端末を利用して決済を行う必要があるのが現状である。

今回の決定に対する中国国内メディアの反応は、米中間の懸案が一つ解決に近づいたことを評価し、電子決済市場を巡る競争が激化すると予想する一方、外資企業の進出による国内企業のシェア低下に関しては限定的であるとの見方が強い。その理由として、10/30の腾讯网の記事では

1) 外国企業が政府の許認可を得て、中国の電子決済市場に本格的に進出するまでには、まだ一定の時間が必要であり、その間に銀聯は先行者の利点を活かして自社のシェアをさらに拡大する猶予があること

2) 銀聯以外の中国企業による電子決済業務への進出が進んでいること

以上2点を挙げている。

実際、これまでの中国政府による外資への規制緩和の傾向を見てみると自動車を初めとした製造業に関しては技術導入の必要性から、積極的に外資の導入を進める一方、インターネットを含むサービス業において自国企業の競争力が劣る場合には、自国産業保護のため外資規制を徹底している。

このような傾向から考えれば、今回の電子決済業務の外資への開放も、ある程度銀聯を含む自国企業の優位性を踏まえたうえでの判断と考えられる。また今後の外資企業への許認可付与にあたっても、外資系企業に対し何らかの制限が適用される可能性は十分にあると考えられる。


日本唯一の国際クレジットカード会社JCBへの影響は?

今後の中国政府の方針に注目が集まる今回の電子決済市場の開放だが、この中国政府の方針変更は日本唯一の国際クレジットカード会社であるJCBにとってもチャンスであるといえる。

近年、JCBはVISA、MASTERSなどの大手カード会社に比べて低い手数料により、アジアでの加盟店数およびカード会員数を伸ばしている。しかし、この際に利用する電子決済システムは銀聯のものであるため、手数料収入の増加は中国以外の国に比べ、限定的となっているのが現状である。JCBにとっては今回の規制緩和に伴い、銀聯の独壇場となっている中国の巨大な電子決済市場にどこまで食い込めるかが、今後の同社の成長のカギとなるかもしれない。

【関連記事】
中国不動産市場の崩壊がいよいよ本格化?増え続ける”ゴーストタウン”
クレジットカード大手ビザ(VISA)の経営戦略 3つの注目点