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ほぼ7年1か月ぶりの水準だ。11月20日のニューヨーク外国為替市場では一時1ドル118円を突破する時も見られ、明確な円の続落トレンドに入っている。14日米商務省が発表した、10月の米小売売上高は前月比で0.3%増加した。市場予想の0.2%増を上回ったことで、アメリカ景気が底堅いと感じられたことから円売りドル買いが進んだと見られている。


想定為替レート

東京商工リサーチが実施した2015年3月期決算の「下期想定為替レート」調査によると、東証1部、2部上場メーカー85社のうち、約4割の企業が対ドルの下期想定レートを1ドル=105円に設定しているとのことだ。次いで、100円が22社(同25.8%)、104円が10社、103円と107円が各5社、110円が4社と続き、想定レートの最安値は110円となっている。下期の想定レートを100円から105円に変更した企業は調査対象のうち27社あった。一番幅が大きかったケースは「100円から107円」とのことだ。

この東京商工リサーチの調査対象は、業種が「電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー」であるから、どの企業も為替レートを保守的に見ているということができる。最安値でも1ドル110円なのであるから、今の為替水準からみれば、為替相場要因による上方修正への期待はまだ持つことができると言える。


悪い円安への懸念強まる

円安により恩恵を受ける企業も出てきた。トヨタ自動車 <7203> の2015年3月期中間決算では第二四半期累計の当期純利益のうち700億円が為替変動によるものだとした。

一方、輸入企業にとって円安は悩みのタネだ。中部電力 <9502> は、燃料の輸入において為替が1円動くと利益が120億円変動する。平成26年度における想定レートを「107円程度」としているので、今の水準が続けば単純計算で1,000億円程度の利益圧迫要因となりかねない。ただし、輸出入を行っている企業は基本的に為替予約取引をして為替相場の変動により利益が大きく揺さぶられることを押さえているケースが多い。常にその時の為替レートで取引をしているわけではない。

問題は円安のペースが速すぎるということだ。昨年の11月頃は1ドル100円から102円を行ったり来たりしていた。この1年で15%近くの円安だ。円安に対する懸念の声も聞かれるようになってきた。日本商工会議所の三村明夫会頭は「今より円高に進む方が心地いいことは間違いない」「これだけ輸入が多い状況では、円安の負担が国民全般にかかる」と9月17日の記者会見で述べ、全国地方銀行協会の寺門一義会長(常陽銀行頭取)も「輸出数量の拡大に結びついておらず、エネルギー価格上昇や資材高が中小企業の業績に影響を与えることが考えられる」と語っている。過度な円高に進んだ際には、工場を海外へ移転するケースがしばしば見られたが、7年1か月ぶりの円安になったからと言ってこれらの工場が戻ってきているのかと言えばそうでもない。円安になれば得意先が戻ってくると思い、我慢して操業していた中小零細企業の中には肩透かしを喰らった状況のところも少なくはない。

ただ、金融政策は日本とアメリカで全く反対の方向に動いている。そのため、資金の移動が一方的になるのは自然の流れだ。この根本的なところが変わらない限り、今後も円安ドル高で推移していくと考えておいた方が良いだろう。

(ZUU online)

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