成功事例から学ぶ起業アイデアのポイント

実際の成功者は、どのような視点で起業アイデアを考えているのだろうか。ここからは5つの事例を交えながら、起業アイデアを成功に結び付けるポイントを解説していく。

【事例1】バイク旅と新婚旅行をきっかけに生まれた都市型八百屋/アグリゲート

株式会社アグリゲートは、都市と産地をつなぐ都市型八百屋を運営している企業である。この八百屋は、アメリカで270以上の店舗を展開する「ホールフーズ・マーケット」をアレンジしたものだ。

ホールフーズ・マーケットの特徴は、こだわった商品を取り扱っているものの、構えていない雰囲気が大衆を呼び込んでいる点にある。アグリゲートの経営者は、新婚旅行で訪れた際にこの点に魅力を感じ、日本風にアレンジをして都市型八百屋を開業した。

農業ビジネスを始めた元々のきっかけは、バイク旅をしている時に若年層がいない田畑を見て、「なんとかしなければならない」と不安を感じたことだったようだ。ビジネスの種はどこに転がっているのか分からないため、プライベートも含めて常にアンテナを張っておくことが重要になる。

【事例2】ドライバー不足の解決にもつながるIoT宅配ボックス/PacPort

株式会社PacPortが提供する「IoT宅配ボックス」は、荷物の再配達を不要とする自動受取型の宅配ボックスだ。この製品が誕生した背景には、現代における生活スタイルの変化がある。

スマートフォンやパソコンが広く普及した影響で、最近では多くの消費者がネット通販を活用するようになった。また、オンライン決済やQRコードなどが広まったことにより、非接触(非対面)の取引も増えつつある。

IoT宅配ボックスはまさにこの時代背景を活かした製品であり、ドライバー不足の解消にも役立っている。市場のニーズに加えて社会問題の解決にまで結びついている点は、ぜひ参考にしておきたいポイントだ。

【事例3】社会問題からヒントを得た野菜工場/フェアリーエンジェル

社会問題から起業アイデアに結びつけるケースは、ほかにも多く見受けられる。

例えば、株式会社フェアリーエンジェルの経営者は、あるときに訪れた諸外国で食糧難や環境破壊を目の当たりにした。この経験をきっかけに、以下のような国内の社会問題を改めて認識したようだ。

・農業従事者の高齢化
・非効率な農業生産や天候不順
・食に対する安全安心志向の強さ

フェアリーエンジェルはこれらの問題を解決するために、土を使わない水耕栽培ができる野菜工場を建設した。世界中でSDGsの重要性が叫ばれるいま、社会問題の解決につながるビジネスは多方面から注目される可能性が高い。

【事例4】「海外トレンド+安全性」の組み合わせで生まれた代替肉/ネクストミーツ

東京都に本社を構えるネクストミーツ株式会社は、主に代替肉の商品開発を行っている企業である。同社は、すでに欧米などで話題になっていた代替肉に目をつけて、いち早く日本の市場に取り入れた。

ネクストミーツのビジネスは、単に海外のトレンドを模倣しただけではない。食への安全意識が高い日本人のことを意識して、誰でも安心して食べられる「無添加代替肉」の開発を成功させている。

つまり、同社の代替肉は複数の要素(代替肉+安全性)を組み合わせた商品であり、その発想は見事に功を奏した。同社の時価総額は2021年1月時点で4,400億円を記録し、今もなお成長スピードの速い企業として注目されている。

【事例5】複数の視点から誕生したネット専用のパン屋/イコールコンディション

前述で紹介した視点を、2つ以上使って成功を収めた起業アイデアも存在する。

株式会社イコールコンディションは、実店舗ではなく自社サイト(recette)でパンを販売している企業である。「パン屋+ネット通販」を組み合わせたサービスであり、各商品のページには味や原料、レシピなどの細かい説明が記載されている。

また、各商品に最高級の原料が使われている点も、イコールコンディションならではの工夫だ。全体的に価格は高めだが、この独創的なコンセプトによって高級志向のファンを効果的に集めている。