本記事は、坂本正勝氏の著書『生命保険営業大全』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネスマン
(画像=siro46 / stock.adobe.com)

熱意8割、冷静さ2割がベストバランス

よく恋愛で、「適度なアプローチは好まれるけれど、強引すぎるのは嫌われる」といわれますよね。営業もそれと似たようなところがあります。押しすぎると相手は逃げるか、もしくは構えます。お客様は押すと逃げますが、引いても恋愛のように追いかけてきてはくれませんから、距離は離れるばかりです。

営業は「全力で」「熱意を込めて」といわれることも多いですが、あまり押しすぎず、距離を一定に保ちながら「ちょっと引く」ことを心がけましょう。食事も腹8分目というように、アプローチも熱意は8割にとどめ、残り2割の力でもう1人の自分が背後から冷静に見守るイメージで取り組むことが大切です。

この話をすると、タレントの明石家さんまさんを連想します。さんまさんがおもしろい要因の1つに、「引き笑い」があると思っています。ほかの人はみな、どんなときも10割熱意で、前のめりになって「そうそう!」と手をたたきながら笑ったり、すごい勢いで話したりしています。でも、さんまさんはマシンガンのようにしゃべったかと思うと、「ひっひっひ」と引いた笑いをしながらのけぞるんですよね。まさに、しゃべりの熱意が8割で、残りの2割は「引きの笑い」と、絶妙なバランスを取っています。

お客様との物理的な距離は、たとえば首脳会議などで大統領同士が握手する距離を意識するとよいでしょう。手と手を出して、ギリギリ握れるくらいの間隔が、一番心地良いラインです。それより近いと威圧感を与える場合もあるでしょうし、逆に遠すぎると心が通じ合わないと感じます。

自分が少し攻めたいな、と思うときほど少し冷静になって引き気味で話すようにしましょう。人は何かを売り込みたい、熱意を伝えたいときには、つい前のめりになりがちですが、これは逆効果です。相手は圧を感じると逃げます。下手な生保営業は、お客様が少し興味を持ってくれたと感じると、「これはいける!」と思って一気に前に出ようとします。

一方、トップセールスの場合は、お客様が興味を持って質問をしてくれたら、「それは後で説明しますね」と後回しにします。その場でお客様の質問に答えてしまうと、お客様のペースに乗ってしまうことになるからです。自分のペースを守るためにも、「聞きたいことがあったら、あとでまとめてお話ししますね」といったん引くのです。お客様も自分の知りたいことを聞くまでは話を聞いてくれます。

このように、自分のペースを守るためには空間や距離感を味方につけましょう。

ノウハウやスキルを生かす総合力を身につける

生保営業の仕事に就くとまず習うのが、保険の商品知識や仕組みです。次に、事務手続きやコンプライアンスについて学びます。

それが終わると、「では営業に出ましょう」となります。いきなり体当たりです。新人さんは習ったことをアウトプットしようとするので、「商品売り」になってしまいがちです。

実際、商品を提供している保険会社から提供してもらえるのは「売るためのノウハウ」ではなく「商品知識」です。「既存の商品が売れなくなったら、新しい商品をつくるから売ってね」ということなんですね。

8割くらいの人は、商品の説明だけで契約を取りに行こうと頑張ります。残り2割の人は少しずつ経験を積んでいくうちに、「商品説明もさることながら、実はコミュニケーションスキルも必要だな」ということに気づきます。でも、どうしたらコミュニケーションスキルが身につくかについては、ほぼ教えてもらえないのが現状です。

だから、「お客様から断られた」「今日はうまくいかなかった」「自分が行き詰まった」にもかかわらず、「じゃあ、それをどうしたらよいのか?」という解決策がわからないのです。そこでいろいろな知識を仕入れては試してみます。

たとえば、営業のノウハウ本を見て、「この一言を言うだけでお客様に気に入ってもらえる『キラーワード』を見つけましょう」と書いてあるので、会話の中から一生懸命それを探ってみることもあるでしょう。でも、キラーワードを見つけたところで、それをどんなシチュエーションで発すれば効果的なのかまではわからないので、うまく使いこなすことができません。

知識や技術をインプットしたら、それをお客様とやりとりをするなかの最適なタイミングで投げかけることが大事です。たとえるなら、頭の中に知識の引き出しがあったとして、「今、このタイミングで、引き出しの2番目のカギを開けてあの知識を出して使おう」と考えられる「総合力」が重要だと思うのです(図4‒5)。

生命保険営業大全
(画像=生命保険営業大全)

私は大阪人なので、お笑いが好きです。お笑いには「ボケ」と「つっこみ」がありますよね。絶妙のタイミングでボケて、絶妙のタイミングでつっこむ。ここぞ! というタイミングだからこそ笑いが起こるのだと思います。

これは営業も同じです。場の空気としゃべりとお客様のリアクションがうまく重なったときに、キラーワードが効くのです。

そのためには、先述したように全体を客観的に見て判断できることが大事です。目の前のことに精一杯になりすぎて、自分が何を言っているのか、何のために話しているのかがわからなくなってしまうと、そのタイミングを見失ってしまいます。

そうならないためには、もう1人の自分が後ろにいて、自分の話を冷静に聞き、「それじゃなくて、次はこれだよ」と言ってくれるような客観的な視点を持ちましょう。今、自分は何をしゃべっているのか、その話は全体のどの部分にあたるかを考えてみるのです。

具体的な方法を2つ紹介します。   1つ目は、自分がどのようにしゃべっているのかを一度録音して聞いてみることです。

「けっこう早口でしゃべっているな」「変な口グセがあるな」など、客観的に聞くことができますし、「もっとこうしたほうがいいな」という改善点もわかるでしょう。

そうすれば次からは、これらのポイントがしっかりクリアできているかどうかを、もう1人の自分がチェックし、ときには注意やアドバイスをしながら話すことができます。   2つ目は、「大喜利」をやってみることです。「笑点」というご長寿人気テレビ番組もありますね。1つのお題に対して、出演者がおもしろいことを言い、司会がおもしろいと思ったら座布団がもらえる内容です。あれを自分でやってみるのです。

たとえば、ボールペンを目にしたら、「ボールペンとかけまして、私の営業の志と解きます」とお題を出し「その心はどちらも芯が硬い」と答えて、それに続く話を考えてみます。

お客様は何に興味があるかもわからないですし、家を訪問した際、何があるかもわかりません。どんなアイテムでもネタにできると、そこから話題が広がります。

生命保険営業大全
坂本正勝
株式会社ALM 代表取締役
株式会社タッチ&ゴー 代表取締役

1967年生まれ、大阪府出身、大阪工業大学工学部中退
1986年、旧郵政省京都山崎郵便局入省。郵便配達から郵便貯金、簡易保険 まで幅広い業務に携わる。その後、異動した東大阪の枚岡郵便局、布施郵 便局で、1993年から1997年の約 3 年半の間、簡易保険の営業に携わり、最 高優績者、国際優績者として年間表彰される。 1997年、近畿郵政局保険事業部営業推進課に異動。営業推進、営業企画の ほか営業教育を担当。その後、尼崎郵便局保険課でプレイングマネジャー として業務に当たるなか、その実績が認められ、全国一のトップセールス として、イギリス、オランダでの海外研修にも参加。 その後、中京郵便局部長、住之江郵便局部長、日本郵便株式会社近畿支社 営業本部営業教育担当係長を歴任。 長きにわたり指導官の認定に携わるほか、新入社員研修や営業向上研修な ど、数多くの研修プログラムを企画・運営。これまで 2 万人超の育成に当 たる。 2010年、店舗型生命保険販売を行う株式会社ALM(保険相談ショップ アル ム)を設立し、代表取締役に就任。「売り込まない営業」でお客様に明るい 未来を提供することをモットーに、自社社員の教育を行うほか、生命保険 会社主催の講演会や、自社主催で全国の生命保険募集人に各種営業研修を 通年実施している。
2023年MDRT(TOT)会員

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