本記事は、坂本正勝氏の著書『生命保険営業大全』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

方法
(画像=vegefox.com / stock.adobe.com)

最小の労力で最大の効果を上げる方法

お客様への対応の中でも、ルーティン作業はなるべく効率化を考えましょう。というのも、お客様に対して使える時間は限られているからです。ルーティン部分については極力時間を短縮し、その分お客様と向き合うために時間を有効に使います。目指すのは、「最小の労力で最大の効果を」です。

代表的なルーティン作業の1つが保険設計書の作成です。あらかじめお客様から生年月日や名前、性別、家族構成などを教えていただく必要があるので、作成には手間がかかります。

ところが、個人情報保護が叫ばれる時代となり、以前よりも生年月日や、ときには名前も教えてもらえなくなりました。なんとかお客様から情報を聞き出し、設計書を作成してもあっという間に断られて撃沈……ということもよくあることです。「せっかく頑張ってつくったのに……」と落ち込むこともあるでしょう。

そんなときは、そのお客様と年齢や性別が同じ「モデル設計書」を活用しましょう。もちろん、お客様の個人情報を入手できるのであれば、その都度、オリジナルの設計書を作成し、印刷して渡すのがベストです。

しかし、それがかなわない状況ならば、「閲覧用」としてその場で見てもらうためのモデル設計書で問題はありません。年齢と性別が同じであれば、内容にさほど差はないからです。個別の情報は口頭で補足すればよいですし、なんといっても手間が圧倒的に違います。

空いた時間でお客様へのサービスもできますし、新規営業もできるかもしれません。

まずはモデル設計書を見ていただき、興味を持ってもらったときにはじめてオリジナルの設計書を作成しても十分です。興味を持っているお客様向けなら、時間をかけてつくった設計書を確実に見てもらうことができますので、作業がムダになることはありません。

このように、徒労とろう(ムダな骨折り)に終わることは極力減らしていきましょう。

ほかには、同じ作業をまとめて行うのもよいでしょう。たとえば、今日は「飛び込み営業の日」と決めてその1日はお客様を訪問する。明日は「保険設計書をまとめてつくる」、明後日は「見込客をつくる日」など、1つの作業を集中して行うことで、時間が短縮できることも多いのです。

もちろん、若い頃のムダな動きはすべて「経験値」になりますから、特に20代はおおいにムダと失敗を経験しましょう。若い頃に失敗を積極的にした人と失敗を回避した人とでは、その後の伸びはまったく違います。

ただ、30代を過ぎたら、経験も積んでいますから、効率を考えるようにしましょう。

ルーティン作業については、何も考えず「こうやるべきだから」とやり続けるのではなく、「この作業はどうやるのが一番効率的か?」を考えながらやってみるとよいでしょう。

お客様の課題とタスクを整理して示す

お客様が保険に加入しようかどうかと迷うことがあります。それは、お客様の頭の中で整理ができていないからです。頭の整理を手助けし、背中を押してあげることも生保営業の役目です。「話をしながら、お客様の反応を見ましょう」と先述しましたが、それの応用です。

一通り話し終わったあとに、

「今までいろいろとしゃべりましたけど、ここでちょっと整理していいですか。お客様がちょっとわからなかったことは〇と△と◇の3つぐらいですかね。やっていたほうがいいなと思うことは、これとこれと……5つくらいでしょうか」

とまとめて伝えます(図4‒4)。

生命保険営業大全
(画像=生命保険営業大全)

ここで重要なのは、伝える順番です。日本語は文法上、後に伝えたことのほうが頭に残ります。なので、「やっておいたほうがよいこと」を後に伝えます。

「ほかに何かありますか?」と聞くと、たいていは「特にないと思います」というような答えが返ってきますが、お客様自身が気づいていないことも多々あります。こうして頭の中を整理してあげると、お客様は自分のやるべきことが具体的に見えてきて、アクションを起こしやすくなります。

法人営業の場合も同じです。

法人営業では、多くの場合、複数の契約が存在していてAという契約とBという契約の更新日がそれぞれ異なっていたり、別の保険会社の商品に加入していたりするなど、いろいろな契約が複雑に絡み合っています。絡まった糸をときほぐすように、1つひとつ物事を整理して、「今すぐ見直したほうがよいもの」「今は置いておいて数年後に見直ししたほうがよいもの」などをすべて一覧にして説明します。100件くらいあった場合には、保険の種類ごとに分ける、契約した日付ごとに分類するなどにして全体がわかるようにします。まさに「準備が8割」です。

先述したように、全体のパーツを俯瞰してみると、「ここは必要だな」「これはムダだけど、あと3年はやっておかなければ」というように要・不要が明確になります。「3年後に見直しが必要なものに関しては、追ってご連絡しますね」と伝えると、たいていは「お願いします!」という答えが返ってきます。このことで、お客様との関係も3年間延長されたことになります。

お客様の頭の中を代わりに整理して、「わからなかったこと、懸念していること」「やったほうがよいこと」を順に伝えることで、お客様を迷わせないですみます。

生命保険営業大全
坂本正勝
株式会社ALM 代表取締役
株式会社タッチ&ゴー 代表取締役

1967年生まれ、大阪府出身、大阪工業大学工学部中退
1986年、旧郵政省京都山崎郵便局入省。郵便配達から郵便貯金、簡易保険 まで幅広い業務に携わる。その後、異動した東大阪の枚岡郵便局、布施郵 便局で、1993年から1997年の約 3 年半の間、簡易保険の営業に携わり、最 高優績者、国際優績者として年間表彰される。 1997年、近畿郵政局保険事業部営業推進課に異動。営業推進、営業企画の ほか営業教育を担当。その後、尼崎郵便局保険課でプレイングマネジャー として業務に当たるなか、その実績が認められ、全国一のトップセールス として、イギリス、オランダでの海外研修にも参加。 その後、中京郵便局部長、住之江郵便局部長、日本郵便株式会社近畿支社 営業本部営業教育担当係長を歴任。 長きにわたり指導官の認定に携わるほか、新入社員研修や営業向上研修な ど、数多くの研修プログラムを企画・運営。これまで 2 万人超の育成に当 たる。 2010年、店舗型生命保険販売を行う株式会社ALM(保険相談ショップ アル ム)を設立し、代表取締役に就任。「売り込まない営業」でお客様に明るい 未来を提供することをモットーに、自社社員の教育を行うほか、生命保険 会社主催の講演会や、自社主催で全国の生命保険募集人に各種営業研修を 通年実施している。
2023年MDRT(TOT)会員

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