本記事は、坂本正勝氏の著書『生命保険営業大全』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。
わざとできない営業を演じてみる
営業においては、上司からのプレッシャーもかかることから、「失敗したらいけない」「上手にやらなければ」「きちんとやろう」とつい考えがちです。でも、「うまくやろう」とすればするほど、萎縮し失敗してしまいます。
ですから、「きちんとやらなきゃ」と思ったときには、あえて「下手」を演じてみましょう。自分が考える「できない営業」をやってみるのです。
たとえば、お客様にお会いしていきなり、「生命保険のおすすめにきました」「どんな保険に入っていますか?」「生命保険の加入相談でご近所を回らせていただいています」といったラポールのない言い方をあえてしてみましょう。おそらく、百発百中で断られるはずです。
また、そのときのお客様の反応を見てみましょう。あきれるか、嫌悪感をあらわにするかのどちらか。いずれにしても、好意的な表情ではないことがよくわかるでしょう。
このとき、注意することがあります。たとえ、お客様があきれていても、断ったとしても、まったく気にする必要はありません。なぜなら、できない営業を演じているだけだからです。自分自身が本当にできないわけではありませんから、何を言われたとしても、ショックを受けることもないはずです。
また、お客様の反応がイマイチのときも気にしないことが大切です。「やっぱりこのやり方はダメなんだな」ということを、身をもって経験できる機会ととらえましょう。トライアンドエラーを繰り返しながら自分なりのコツをつかんでいってほしいと思います。
「人生ゲーム」というボードゲームをご存知だと思います。「1回休み」「3マス戻る」「全額没収」など、ゴールするまでにはたくさんのトラブルや不幸のネタが待ち構えています。
数々の困難を乗り越えてゴールするからこその面白さや達成感がありますが、何事もなく、良いことだけしか起こらないままゴールしても、つまらないですよね。
実際の人生も同じです。いってみれば、人生はゲーム。毎日の生活の中で、良いことも悪いことも次々に起こるなか、それらをどうやって乗り越えて次のステージに進むかの冒険です。こう考えると、少し気持ちが楽になりませんか?
いろいろなことがあるからこそ人生は面白いですし、盛り上がるのです。だから、失敗を恐れないでください。そして、「失敗しちゃいけない」という気持ちに取りつかれたときには、あえて下手を演じてみましょう。
契約をゴールにしない
保険の契約をいただけたときには、とてもうれしいですよね。
気持ちはよくわかります。
でも、契約を「ゴール」にするのはやめましょう。「契約=ゴール」だと思っている人は長続きしません。保険の契約は「スタート」に過ぎないからです(図2‒1)。
本当のゴールは、もっと先にあります。お客様が保険商品を契約してくれて、いつかはわからないけれどその保険商品を利用するときがきます。そのとき、「ああ、この商品を使ってよかった」と思ってもらえて、はじめてゴールにたどり着きます。だから、契約したら終わりで、その後連絡もしないというのはダメなのです。
ときには、「これだけ契約をもらえたらいくらもらえる」と皮算用したくなるかもしれまん。実際、研修でも「100件契約したら家が建つ」とか「1万件契約したらビルが建つ」という知識を植えつけられます。でも、「契約=お金」と考えお金を追いかける人は、ギラついたところが自然と顔の表情やしぐさにあらわれます。そして、残念ながら本当の意味でのお金持ちになっている人は少ないです。
自分1人が儲かるために動いていると、周囲の人は味方になってくれませんし、そういう空気をお客様は敏感に察知します。
契約はあくまでもお客様のため。そして、お客様とのおつき合いのスタートにすぎない。そういう気持ちが大切です。
関係構築は急がずベストタイミングまで待つ
「契約に至らなかった人が、もしその日の晩に交通事故で亡くなったらどうしますか?」
生保営業向けの最初の研修では、よくこんな話が出てきます。
あのとき契約を取っていなかったから、遺族は大変な目に……ということですよね。つまり、「今、すぐ」契約を取ってくることを求められているのです。でも、私はどんなものにも「タイミング」があると思っています。生命保険の契約も同じです。
突然ですが、アスパラガス畑って見たことありますか?
北海道などに行くと、地面から顔を出しているアスパラガスを見かけることがあります。
アスパラガスは25センチくらいに成長した頃収穫するのが、太さ・長さ・味の点でもベストタイミングだそうです。それ以上放っておくと、どんどん茎が太くなり、皮もかたくなっておいしくなくなります。
逆に、それより早い段階で刈り取ってしまったら細くて丈も短いので、売り物にはなりません。やはり、ほどよく育ったときが一番おいしいですし、見た目も映えます。
実は、生命保険の営業もこのアスパラガスと同じです。
アスパラガスを育てるように、お客様との関係もじっくり丁寧に、時間をかけ、信頼関係を育てていきます。アスパラガスがほどよく育った状態、保険営業でいうなら、お客様との距離が近づいてお客様が心を開いてくれた状態になってはじめて保険の話をします。つまり、ベストタイミングまで待つことが大事なのです。
契約は決して焦らないこと。
「早く契約を取らなきゃ」と焦りを覚えたときには、アスパラガスを育てているつもりになって、はやる気持ちを抑えましょう。心の中で「アスパラを思い出せ!」と唱えてみてください。
株式会社タッチ&ゴー 代表取締役
1967年生まれ、大阪府出身、大阪工業大学工学部中退
1986年、旧郵政省京都山崎郵便局入省。郵便配達から郵便貯金、簡易保険 まで幅広い業務に携わる。その後、異動した東大阪の枚岡郵便局、布施郵 便局で、1993年から1997年の約 3 年半の間、簡易保険の営業に携わり、最 高優績者、国際優績者として年間表彰される。 1997年、近畿郵政局保険事業部営業推進課に異動。営業推進、営業企画の ほか営業教育を担当。その後、尼崎郵便局保険課でプレイングマネジャー として業務に当たるなか、その実績が認められ、全国一のトップセールス として、イギリス、オランダでの海外研修にも参加。 その後、中京郵便局部長、住之江郵便局部長、日本郵便株式会社近畿支社 営業本部営業教育担当係長を歴任。 長きにわたり指導官の認定に携わるほか、新入社員研修や営業向上研修な ど、数多くの研修プログラムを企画・運営。これまで 2 万人超の育成に当 たる。 2010年、店舗型生命保険販売を行う株式会社ALM(保険相談ショップ アル ム)を設立し、代表取締役に就任。「売り込まない営業」でお客様に明るい 未来を提供することをモットーに、自社社員の教育を行うほか、生命保険 会社主催の講演会や、自社主催で全国の生命保険募集人に各種営業研修を 通年実施している。
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