本記事は、坂本正勝氏の著書『生命保険営業大全』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネスマン
(画像=takasu / stock.adobe.com)

沈黙を恐れず、間をコントロールする

お客様と保険の話をしていて、「これ、いかがです?」と言ったとき、沈黙が生まれることがあります。生保営業にとって、この「間」は悪魔の「魔」というくらい、非常に嫌なものの1つではないでしょうか。

お客様との会話が5〜10秒途切れただけでとても焦りを覚えますよね。実際、100人いたら、そのうち99人は、この間に耐えられずにしゃべり出してしまうのではないでしょうか。

特にお客様の話を聞くよりも自分がたくさん話し、話術で圧倒させるタイプの「攻めのセールス」をしていると、この間を怖く感じがちです。一方、お客様の話を聞く「守りのセールス」をしていると、お客様がたくさん質問をしてくれるので、間が心地よく感じるようになります。もし間が気になるようなら、お客様の話を聞く営業スタイルに変えることも1つの手です。

沈黙という間はお客様が考えを固める時間ですので、じっと待ちましょう。実際、人が真剣に考えているときには「うーん」と黙ることが多いです。間をどうコントロールするかが、営業にとってとても大事なことなのです。間をコントロールするには、次の方法があります。


  • 「AとBどちらがベターですか?」と聞いた後、黙って待つ。
  • 「もし、加入するとしたらどのような保険がいいですか?」と聞いた後、黙って待つ。

この方法は、クロージングの段階では、お客様の反応が良いときに使うのがベストですが、タイミングが難しいですよね。そんなときには「〇〇、いかがです?」という問いかけを使ってみてください。「いかがですか?」「いかがいたしましょうか?」の「か」は言わず、「です?」で止めます。

もちろん、通常、会話の中では「〇〇ですか?」といった問いかけはしていくのですが、少し会話に変化や緩急をつけたいときにあえて「〇〇です?」を使うと効果的です。

「いかがですか?」と言うと、お客様に回答を求める印象が強くなります。お客様が買うかどうかまだ揺らいでいる段階で「いかがですか?」と聞くと、人によってはプレッシャーをかけられたように感じ、「(今決断を下さないといけないなら)やっぱりまだやめておくわ」と断りの方向に向いてしまいます。

一方、「いかがです?」だと、意向に添っているのと、「どこまでわかりましたか?」と同意や確認の意味での問いかけ、どちらにも取れます。すでにお客様の気持ちが固まっていたら、前者としてとらえて返答してくれるでしょう。このとき、少し迷いがある人なら確認の意味ととらえて、思い浮かんだ質問や頭の中を整理したいことが出てくるかもしれません。たかが「か?」の1文字ですが、これがあるかないかで、お客様の反応も変わりますし、その後の流れが大きく変わってくるのです。

メリット・デメリットを二択で伝える天秤クロージング

お客様が少しでも納得していただけるような話をする際に使えるのが「天秤クロージング」という方法です。お客様が懸念している「問題点」とお客様が将来実現したい「希望」を両方挙げることで、問題点と希望を天秤にかけてもらい、保険商品がお客様の希望を実現するために大きなメリットがあると感じてもらいます。

たとえば、お客様には次のように伝えます。

「お客様が懸念されているのは、『保険料が高い』『保障は何歳まで必要か』『保険金をいくらにするか』の3点ですね。一方、お客様が将来実現したいことは、『保険はかけておきたい』『退職後の生活を考えると60歳までには払い込みを終えたい』『保険金は最低1,000万円は必要』『万が一の場合、保険金が子どもさんに直接支払われる』『もしくは満了した場合には1,000万円の満期保険金をご自分で受け取れる』の5点でしょうか」

このように、お客様の考えを代弁したうえで、次のように尋ねましょう。

「現在、懸念されている理由と実現したい考え、この2つのどちらが重要だとお考えですか?」

すると、たいていの場合、お客様は「やっぱり実現したい考えだよね」と答えます。そこで、それを受けて「お客様の将来に向けた前向きな取り組みですよね」と伝えたうえで、懸念点を払拭する説明をしていきます。

先の例でいえば、『保険料が高い』『保障は何歳まで必要か』『保険金をいくらにするか』について、1つひとつ説明をしていきます。たとえば、「保険料が高いという点については、A保険の商品にすることで少し抑えることができます。また、保障については……」とお客様の不安を払拭していくのです。

このようにすることで、お客様は懸念点がなくなり、それとともに実現したい未来への思いが高まっていきます。同時に保険商品に対する納得感が増して、最終的に自ら保険に入ろうと決断してくれるというわけです。

「天秤クロージング」で重要なのは、伝える順番と伝える数です。お客様に心地よく考えていただくためのちょっとしたテクニックです。順番1つでお客様の心に残る内容は大きく変わってきます。

日本語の文法的に、後から言ったことのほうが記憶に残るため、問題点(悪い点)は先に、希望(良い点)は後に伝えます。ただし、この順番で伝えても、問題点のほうを多く伝えてしまうと、お客様の頭にはデメリットばかりが残ってしまい、最悪の場合、契約を取りやめるかもしれません。悪い点よりも良い点のほうを数多く伝えるようにしましょう。

このように、クロージングに入る段階では、問題点と希望、デメリットとメリットなど、悪い点と良い点をあらためて整理し、お客様にわかりやすく見える化することで、スムーズに加入への決断を促していきます。

生命保険営業大全
坂本正勝
株式会社ALM 代表取締役
株式会社タッチ&ゴー 代表取締役

1967年生まれ、大阪府出身、大阪工業大学工学部中退
1986年、旧郵政省京都山崎郵便局入省。郵便配達から郵便貯金、簡易保険 まで幅広い業務に携わる。その後、異動した東大阪の枚岡郵便局、布施郵 便局で、1993年から1997年の約 3 年半の間、簡易保険の営業に携わり、最 高優績者、国際優績者として年間表彰される。 1997年、近畿郵政局保険事業部営業推進課に異動。営業推進、営業企画の ほか営業教育を担当。その後、尼崎郵便局保険課でプレイングマネジャー として業務に当たるなか、その実績が認められ、全国一のトップセールス として、イギリス、オランダでの海外研修にも参加。 その後、中京郵便局部長、住之江郵便局部長、日本郵便株式会社近畿支社 営業本部営業教育担当係長を歴任。 長きにわたり指導官の認定に携わるほか、新入社員研修や営業向上研修な ど、数多くの研修プログラムを企画・運営。これまで 2 万人超の育成に当 たる。 2010年、店舗型生命保険販売を行う株式会社ALM(保険相談ショップ アル ム)を設立し、代表取締役に就任。「売り込まない営業」でお客様に明るい 未来を提供することをモットーに、自社社員の教育を行うほか、生命保険 会社主催の講演会や、自社主催で全国の生命保険募集人に各種営業研修を 通年実施している。
2023年MDRT(TOT)会員

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