2024年1月9日、北海道札幌市豊平区にある札幌ドームは企業名やブランド名を施設名に付ける「ネーミングライツ(命名権)」の募集を始めた。収入減に苦戦するなか、はたして新たな収入源となりえるのだろうか。

年間2億5,000万円は無謀? 命名権を売り出した札幌ドームの現状
(画像=tkyszk/stock.adobe.com)

ファイターズの移転で大きな損失

札幌ドームが売り出したネーミングライツには、以下のような条件がある。

  • 取得金額は年間2億5,000万円以上
  • 契約期間は2~4年
  • 「ドーム」の名称を含める
  • 募集期間は2024年2月末まで新名称の使用開始は同年4月ごろを予定

札幌ドームは、2022年までプロ野球球団・北海道日本ハムファイターズが本拠地として使用していた。しかし2023年にファイターズが北海道北広島市 に移転した結果、ドームの収入は約3 割減少した。ファイターズが移転した理由は、ドームの高額な使用料だったといわれており、まさにドル箱を失った形になる。

札幌ドームは、2024年1月時点でサッカーJ1球団・コンサドーレ札幌が本拠地として使用しているが、コンサドーレが札幌ドームで行った試合は20 試合。ファイターズは、札幌ドームで年間約60 試合を戦っていたため、いかに大きな損失だったかわかるだろう。プロ野球の球団が移転して失ったのは、球団からの使用料だけではない。

球場のフェンスに掲出されていた広告から撤退する企業が相次ぎ、札幌ドームが失った広告収入は数億円といわれている。札幌ドームでは、収入源を増やそうとコンサートなどのイベントを誘致するために約10億円の改修費 をかけてドーム内を仕切る幕を設置。収容人数4万人のドームを幕で仕切り、1万人や2万人規模のイベントにも対応できるようにした。

しかし2023年に新モードを活用した利用件数は2 件で目標の6件には届かなかった。プロのアーティストが開催するイベントには現時点で採用された実績がなく収益増につながっていない。今年度は、3億円の赤字を見込んでいるが、来年以降も赤字が拡大する恐れがある。そんななかで打ち出したのが、ネーミングライツの販売だ。

ネーミングライツのメリット

企業が施設のネーミングライツを得るメリットは、メディアなどで報じられることで企業やブランド名の知名度が上がることだ。例えばプロ野球チームの本拠地名はシーズン中、テレビや新聞、ネットなどで連日報じられる。ネーミングライツは野球場やサッカー場、文化施設などで売り出されているが、野球場のネーミングライツは飛びぬけて高額だ。

日本で最もネーミングライツが高額な施設は、くしくもファイターズの移転先である「エスコンフィールド北海道」で契約金は年間5億円、契約期間は10年間だ。

Jリーグでは、FC東京と東京ヴェルディ(いずれもJ1)の本拠地東京スタジアムと味の素が契約に合意。2024年3月1日~2029年2月末の5年契約・10億 5,000万円で「味の素スタジアム」におけるネーミングライツ契約を更新した。味の素は、2003年から21年間にわたってネーミングライツを買っており、今回が5回目の契約となる。