この記事は2024年1月26日にSBI証券で公開された「「新NISA人気銘柄」から厳選!増益・高配当利回り期待銘柄は?」を一部編集し、転載したものです。

「新NISA人気銘柄」から厳選!増益・高配当利回り期待銘柄は?
(画像=SBI証券)

目次

  1. 「新NISA人気銘柄」から厳選! 増益・高配当利回り期待銘柄は?
  2. 掲載銘柄を詳細に解説 ①増益期待銘柄は?
    1. エーザイ(4523) ~大手製薬。アルツハイマー治療薬「レケンビR」(レカネマブ)で話題
    2. 東京エレクトロン(8035)~半導体製造装置の世界的大手
    3. キリンホールディングス(2503) ~アルコール以外の事業も積極的に展開。1907年の創立以来、配当実施を継続
    4. 信越化学工業(4063)~長期供給契約で半導体関連の業績は安定的。上場来高値水準
    5. 日本製鉄(5401)~収益力を強化し、巨額買収で世界3位の粗鋼生産企業に
    6. ピジョン (7956) ~屋台骨の中国で先行き不安残るが、高月齢の赤ちゃん向けやスキンケア商品で拡大図る
    7. JR西日本(9021)~順調に業績回復続く。北陸新幹線も予定通り延伸へ。
    8. 伊藤忠商事(8001) ~資源に頼らないビジネスモデルが特徴の大手総合商社
  3. 掲載銘柄を詳細に解説 ②安定的に高配当利回りを期待できる銘柄は?
    1. オリックス(8591)~リース事業を祖業に成長継続中。株主還元に前向き
    2. ポーラ・オルビスホールディングス(4927)~海外販売に拡大余地あり。配当性向60%以上を目指す
  4. 【ご参考】 SBI証券の新NISA枠での累計買付代金(1/4~1/22)上位5銘柄

「新NISA人気銘柄」から厳選! 増益・高配当利回り期待銘柄は?

東京株式市場では、株価が高値圏で推移しています。日経平均株価は1/23(火)に一時36,984円を付け、90/2/20日以来、33年11カ月ぶりの高値を回復。その後はスピード調整、および米個別企業の決算悪もあり、調整気味の展開になっています。

米国ではインフレ指標が落ち着きをみせる一方、経済指標はねばり強さをみせており、それを好感した「適温相場」が展開されています。主要株価指数のうち、S&P500とNYダウは過去最高値を更新してきました。東京株式市場の上昇は、それを好感している面もありそうです。

しかし、東京株式市場は米国市場にツレ高しているだけではないとみられます。1月第1週~第3週の東京株式市場では、海外投資家の買い越し額が計1兆4,800億円と高水準になりました。割安状態解消に向けた上場企業の取り組みが本格化していることや、新NISA(少額投資非課税制度)の開始に伴う個人投資家の資金流入に期待している面もありそうです。

ところで、新NISAの開始に伴い、個人投資家等はどんな銘柄をNISA枠で買い付けているのでしょうか。SBI証券では、「国内株式」の中に「ランキング情報」(東証プライム)があり、さらにその中で「買付金額」、「出来高」、「保有残高」等を週間単位で公表していますので、ご参考いただければと存じます。

今回の「日本株投資戦略」では、SBI証券の新NISA枠での累計買付代金(1/4~1/22)上位100銘柄を母集団とし、その中から銘柄を選ぶ時に参考としていただくべく、「2つの視点」をご紹介することとしました。

最初は「アナリストが来期増益を予想する銘柄」です。条件は以下の通りです。

(1)ETF(上場投資信託)を除く
(2)予想EPSを公表しているアナリストが5名以上
(3)今期および来期の市場予想(Bloombergコンセンサス)純損益が黒字
(4)市場予想EPS(同)が4週間で上昇
(5)来期市場予想純利益の増益率が今期市場予想純利益の増益率を上回っている
(6)直近の本決算発表後、予想純利益の下方修正を発表していない
(7)同業種の銘柄が重複する場合は、来期市場予想純増益率の高い銘柄を選択

図表1の銘柄がこれらの条件をすべて満たしており、来期予想増益率の順に掲載されております。「個別銘柄を解説!①」で、掲載銘柄を解説していますので、ご参考ください。

「新NISA人気銘柄」から厳選!増益・高配当利回り期待銘柄は? 「新NISA人気銘柄」から厳選!増益・高配当利回り期待銘柄は?
(画像=SBI証券)

掲載銘柄を詳細に解説 ①増益期待銘柄は?

エーザイ(4523) ~大手製薬。アルツハイマー治療薬「レケンビR」(レカネマブ)で話題

1941年設立、新薬開発の研究所をルーツにもつ製薬大手です。 自社創製の抗がん剤「レンビマ」や、不眠症治療剤「デエビゴ」等をグローバル主力品として展開。「チョコラBB」などの一般用医薬品等(日本)が占める売上高比率(23.3期)は3.2%で、処方箋医薬品が主力です。1970年代から積極的に海外へ進出。世界各地に生産・研究開発・販売拠点を設置し、海外売上高比率(同)は6割に上ります。

アルツハイマー治療薬の「レケンビ(レカネマブ)」で注目を集めたのが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。2023年の米国を皮切りに、日本、中国で承認を取得。他地域での申請達成は多数で、今後も拡大が期待されます。「レケンビ」の今期(23.3期)売上予想が全体に占める割合は1.3%程度です。会社側は、26.3期から売上拡大が本格的に加速し、29.3期までには全売上高の過半数を占めるようになり、2030年度(31.3期)には「レケンビ」のみで1兆円レベルに達するとの見方を示しています(参考:23.3期の売上高は7,444億円)。

24.3期3Q決算の発表は2/6(火)の予定です。

東京エレクトロン(8035)~半導体製造装置の世界的大手

米アプライド・マテリアルズ等と比較される半導体製造装置の世界的な大手企業です。フォトレジスト(感光剤)の塗布や現像を行う「コータ・デベロッパ」は世界シェア89%(2022年・会社資料)と圧倒的トップを誇ります。

24.3期2Q(累計)は減収減益でしたが、売上・利益すべての面で計画を上回りました。半導体ウェハ製造装置市場の規模(2023年予想・会社資料)は、従来予想の700~750億ドルから850~900億ドル程度に上振れするとみられます。2Q決算発表と同時に会社側は、今期会社予想営業利益について、3,930億円→4,010億円(前期比35.1%減)と上方修正を行いました。市場予想営業増益率(前期比)は、今期(24.3期)33%減、来期(25.3期)29%増となっています。

24.3期3Q決算の発表は2/9(金)の予定です。

キリンホールディングス(2503) ~アルコール以外の事業も積極的に展開。1907年の創立以来、配当実施を継続

大手飲料メーカー。祖業である中国の伝説上の生き物「麒麟」が描かれたビールが有名です。現在の事業領域は、国内ビール・スピリッツ事業(23.12期の売上高構成比36%)、アルコール以外を扱う国内飲料事業(同13%)、北米・豪州でのクラフトビールを中心としたプレミアム戦略の推進を行うオセアニア酒類事業(12%)、ビール事業で培った微生物や細胞の知見を活かした医薬事業(19%)他と多岐に亘ります。中でも、医薬事業が全体の事業利益の30%弱を占め、利益率が高いのが特徴です。

2023年4月には豪州の健康食品会社ブラックモアズを買収。国内アルコ―ル市場の縮小が見込まれる中、M&Aによってさらなる事業の多角化とグローバル化の推進を図っています。23.12期は価格改定効果等により増収増益となる見通しです。

株主への適切な利益還元を最重要課題の1つに掲げ、1907年の創立以来配当を欠かさず実施。配当性向*の目安は40%以上です。

*配当性向・・・配当金/純利益 ▶ 高いほど株主に利益多くの利益を還元している

23.12期本決算の発表は2/14(水)の予定です。

信越化学工業(4063)~長期供給契約で半導体関連の業績は安定的。上場来高値水準

半導体の基盤となる「シリコンウエハー」と「塩ビ樹脂」で世界トップシェアです。好財務企業でありながら、ROE(自己資本利益率)も19.7%と高い、日本屈指の「優良企業」的存在です。 顧客である半導体メーカーとは長期供給契約を締結していることが多く、業績は安定しやすいのが強みです。会社側は、同決算発表説明会にて半導体デバイスの在庫調整に関し終わりつつあるとコメントしていました。(以上1/25時点の情報)

24.3期3Q決算の発表予定日は1/26(金)。営業利益の事前予想(Bloombergコンセンサス)は、3Q累計5,774億円、通期予想7,651億円でした。

日本製鉄(5401)~収益力を強化し、巨額買収で世界3位の粗鋼生産企業に

新日本製鐵、住友金属工業、日新製鋼の統合により誕生した製鉄大手です。世界で製造される鉄鋼製品の品種をほとんどカバーし、その用途は産業のあらゆる分野にわたっています。構造改革の継続により損益分岐点の改善・収益の最大化に努め、外部環境によらず実力ベースの連結事業利益6千億円を確保できる体制を構築(会社側)しました。24.3期は在庫評価を除いた実力ベースでの事業利益8,400億円(前期比14%増)と過去最高を計上する見通しです。

昨年12/18に、米鉄鋼大手USスチールを約4割のプレミアムを乗せ総額141億ドル(2兆円超)で買収すると発表しました。買収資金は借入で対応する方針です。買収が実現すれば粗鋼生産で世界3位の規模になる見通しです。ホームマーケットであるASEAN、成長するインドに加え、最大の高級鋼需要国である米国という3つ目の重要拠点を置くことで、グローバル拠点の多様化ができるとしています。

時価総額で世界鉄鋼業のトップを目指しています。PBRが1倍未満にとどまっているのは、各種取り組みを進め利益が改善する局面の市場への浸透が遅れ、PERが低下しているためと会社側は分析しています。これまで以上に適切な情報開示に努める方針を掲げています。

24.3期3Q決算の発表は2/7(水)の予定です。

ピジョン (7956) ~屋台骨の中国で先行き不安残るが、高月齢の赤ちゃん向けやスキンケア商品で拡大図る

育児用品の最大手。哺乳瓶は世界シェア1位を誇ります。世界80カ国に展開し、セグメント別の利益構成比は、稼ぎ頭の中国69%、シンガポール14%、日本10%、他です(22.12期)。

屋台骨である中国事業が足元業績の重しとなっています。コロナ流行での行動規制や、処理水放出による日本ブランド回避が逆風となりました。経済に対する先行き不安も広がる中国では安定成長を、中東や東南アジアで大きく伸長する計画です。高月齢の赤ちゃん向けや、3歳以上のスキンケア商品に注力し、顧客対象の拡大を図っています。

23.12期の会社予想純利益は前期比減益予想ですが、市場予想は僅かに増益となる見通しです。2023/12/5(火)には外資系金融機関が投資判断を「中立」から「買い」に、1/25(木)には国内大手証券会社が「買い」でカバレッジを開始しました。

23.12期本決算の発表は2/15(木)の予定です。

JR西日本(9021)~順調に業績回復続く。北陸新幹線も予定通り延伸へ。

北陸、近畿、中国、九州北部まで2府16県をカバーする鉄道会社です。運輸業が売上高の54%(23.3期)を占め、その他は流通、不動産、旅行等を展開しています。他の鉄道各社同様、コロナ禍で業績が落ち込み、営業利益は19.3期1,969億円から21.3期に赤字2,456億円まで急減しました。23.3期に営業利益839億円と3期ぶり黒字転換を果たし、24.3期は営業利益1,400億円(前期比66%増)が会社計画です。

会社計画通りであれば、19.3期営業利益に対し、24.3期は29%低い利益水準での回復となる見込みです。株価は2019年の高値9,978円に対し、1/25時点で39%下げており、「下げ過ぎ」と言えるかもしれません。

能登半島地震で七尾線等が被害を受けており、一応の注意は必要ですが、さらなる地震被害がなければ、株価への影響は限定されそうです。10~12月期の運輸取扱収入は前年同期比17%増と順調。北陸新幹線は予定通り、3/16(土)に金沢から敦賀へ延伸されそうです。

3月末に100株以上保有する株主に、鉄道割引券他の株主優待(株数に応じ優待内容が異なります)を実施中です。

24.3期3Q決算の発表は1/31(水)の予定です。

伊藤忠商事(8001) ~資源に頼らないビジネスモデルが特徴の大手総合商社

大手総合商社で「トレード」と「事業投資」を両輪として事業を展開。売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」で有名な近江商人が創業した企業です。「三方よし」の言葉は現在でも企業理念として掲げられています。学生からも人気が高く、就職人気ランキング(全業種)は第1位です(同社HPより)。

市況変動の影響が大きい資源ビジネスに偏らない収益構造が特徴です。非資源利益は全体の72%を占め、安定的な収益基盤をもたらしています(20-22年度平均)。生活で馴染みのある生活消費分野のビジネスに多く携わっており、コンビニ大手のファミリーマートも子会社の一つです。また、潜在性の大きいアジアで強固なビジネス基盤を有しており、中国最大の政府系コングロマリットやタイ最大の民間企業と戦略的業務・資本提携を結んでいます。今期(24.3期)業績見通しは、資源価格の下落等を計画に織り込んだため会社予想は前期比3%減の最終減益ですが、市場予想は増益見通しです。同社の強みである食料品分野での業績下支えが予想されます。

24.3期3Q決算の発表は2/5(月)の予定です。

掲載銘柄を詳細に解説 ②安定的に高配当利回りを期待できる銘柄は?

ここでは、安定的に高配当利回りを期待できる銘柄を抽出すべくスクリーニングを行いました。引き続き、SBI証券の新NISA枠での累計買付代金(1/4~1/22)上位100銘柄を母集団としています。

(1)ETF(上場投資信託)を除く
(2)予想EPSを公表しているアナリストが5名以上
(3)今期および来期の市場予想(Bloombergコンセンサス)純損益が黒字
(4)今期・来期の市場予想純増益率が5%以上・・・安定的な配当実施を期待するため
(5)来期市場予想増益率が今期市場予想増益率を上回っている
(6)直近の本決算発表後、予想純利益の下方修正を発表していない
(7)今期市場予想予想配当利回り3%以上

図表2の銘柄は上記の条件をすべて満たしています。東証プライム市場の単純平均配当利回りは2.16%(23年12月データ)なので、本レポートでは(7)の条件を満たすことで「高配当利回り期待銘柄」と位置付けております。

掲載順は、予想配当利回りが高い順です。

「新NISA人気銘柄」から厳選!増益・高配当利回り期待銘柄は?
(画像=SBI証券)

オリックス(8591)~リース事業を祖業に成長継続中。株主還元に前向き

1964年にリース事業からスタート。現在は法人金融、産業/ICT機器、環境エネルギー、自動車関連、不動産関連、事業投資・コンセッション(公共投資等運営事業)、銀行、生命保険等、幅広く事業を展開しています。海外へは1971年の香港進出を皮切りに、世界28ヵ国でグローバルに活動。13.3期~23.3期に純利益は年平均10%のペースで着実に成長してきました。

昨年9月、日本産業パートナーズ(JIP)傘下で再建を目指す東芝へ2,000億円拠出することで話題になりました。この投資の年平均利回りを示す内部収益率(IRR)については、20%を目標にするとしています。

24.3期は通期で純利益3,300億円(前期比20%増)・ROE(株主資本利益率)9%が会社目標です。25.3期にはさらに純利益4,000億円・ROE10.4%を目標に掲げています。

株主還元にも積極的で24.3期は配当性向で33%をメドに1株94円の配当を計画しています。自己株式の買付けについては、5/10の取締役会決議に基づき500億円の買付けを実施済みで、2023/12には1,988万株超の自己株式消却を実施。25.3期も配当性向33%に加え、機動的な自社株買いを計画しています。

24.3期3Q決算の発表は2/7(水)の予定です。

ポーラ・オルビスホールディングス(4927)~海外販売に拡大余地あり。配当性向60%以上を目指す

スキンケアに強みをもつ化粧品会社です。訪問販売が祖業で高価格帯の「ポーラ(売上高構成比60%、22.12期)」と、中価格帯で業界でいち早く通販事業を取り入れた「オルビス(24%、同)」を基幹に展開しています。海売上高比率が17%(22.12期)と同業他社に比べ低水準(資生堂77%、コーセー44%、同)ですが、反面、伸びしろがあるともいえるでしょう。オルビスの『エッセンスインヘアミルク』は@コスメの2023年ベストコスメ総合大賞を受賞しました。

国内での「ポーラ」ブランドの売上減速や、処理水放出による日本メーカー回避の影響で株価は低迷中です。そのため、市場予想配当利回りが3.3%と高水準です。 連結配当性向は60%以上を基本としています。コロナ禍以前の業績まで、回復の余地があるため、業績回復に伴う配当金の増額にも期待したいところです。

23.12期本決算の発表は2/14(水)の予定です。

【ご参考】 SBI証券の新NISA枠での累計買付代金(1/4~1/22)上位5銘柄

「新NISA人気銘柄」から厳選!増益・高配当利回り期待銘柄は?
(画像=SBI証券)

▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数