本記事は、今野 裕之氏の著書『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』(世界文化社)の中から一部を抜粋・編集しています。

脳
(画像=Ruth / stock.adobe.com)

「寝る前3時間は食べない」で睡眠の質を高め
認知機能の低下を防ぎ、全身のアンチエイジングにも

「眠りが浅くて、一晩に何度も目が覚めます」

40~50代になると、男女とも睡眠に関する悩みを持つ人が増えてきます。睡眠の問題は、脳のゴミ出し機能である「グリンパティックシステム」が働きにくくなることにつながります。そういう方に1日のライフスタイルを聞いてみますと、そもそも仕事の都合で夕飯が遅めだったり、夕飯の後ゆっくり晩酌を楽しむので寝る直前まで食べている、という話をされることがよくあります。

また、「おなかが空くと眠れないから寝る前に食べます」とか、「寝ようとすると目が冴えてしまうので、1杯飲んでからベッドに入ります」など、夜食・寝酒の習慣がある方も実に多いのです。

このような方の場合は、まず寝る前3時間に食べたりお酒を飲んだりするのを止めることで、睡眠の質を改善できます。

また、胃に負担がかからなくなるので、翌朝すっきり目が覚めます。胃痛や胃もたれ、下痢・便秘などの胃腸症状を感じていた人は、それがないことに気づくかもしれません。

しばらく続けていれば体重が減りやすくなるので、メタボ体型からも脱却できるかもしれません。血圧や血糖値のコレステロールのコントロールもしやすくなります。

このように普段の生活習慣を少し見直すだけで、加齢とともに感じやすい不調が起きにくくなり、体が軽くなって運動しやすくなり、さらには肌のトラブルが起きにくく顔の肌つやもよくなります。

■生活習慣病を改善すれば、認知症も防げる

つまり、生活習慣を正しく改善することは、認知症予防のみならず、体の中や外見のアンチエイジングにもなるのです。世界的な医学雑誌「ランセット」が発表した論文では、高血圧や高血糖など生活習慣病を改善することで認知症になるリスクを減らせることが示されています(*1)。認知症にはアルツハイマー型認知症だけでなく、血管性認知症、レビー小体型認知症など様々な種類がありますが、生活習慣病を見直すことで多くの認知症を予防することができるのです。

*1:Livingston, G. et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet 396, 413–446 (2020).

■認知症にならないために「SCI」「MCI」を見逃すな

最近は、「主観的認知障害(SCI)」「軽度認知障害(MCI)」という認知症の前段階があることが知られるようになってきました。「物忘れが増えた」や、「ちょっとした不注意やケアレスミスが目立つようになった」と感じるようなら、これにあてはまる可能性があります。

認知症にならないようにするために、特に見逃したくないのが「MCI」です。MCIは日常生活に支障は出ていませんが、認知機能は低下し始める段階です。MCIから認知症になる割合は、研究によって異なりますが、毎年10% といわれています(*2)。

*2:Bruscoli, M. & Lovestone, S. Is MCI really just early dementia? A systematic review of conversion studies. Int. Psychogeriatr. 16, 129–140 (2004).

これは現時点でMCIと診断された人を集めて放置した場合、5年間で約半数が認知症を発症するという計算になります。

逆に考えれば、MCIの段階で適切な対策や治療を行えば、認知機能を改善できる可能性があります。寝る前3時間は食べないという生活習慣も、この先の認知症リスクを減らすための適切な対策の1つなのです。

『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』(世界文化社) より
(画像=『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』(世界文化社) より)
『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』(世界文化社) より
今野 裕之
医療法人社団TLC 医療会 ブレインケアクリニック名誉院長。一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長。博士(医学)・精神保健指定医・日本抗加齢医学会専門医。日本初のリコード法(アルツハイマー型認知症の治療プログラム)認定医。

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