本記事は、桑原晃弥氏の著書『逆境を打ち破る イチローの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ナンバーワンだったヤツらが集まる世界で
ナンバーワンを目指すのは当然でしょう
――『Number』1000
2026年に予定されている第6回WBCには早くもニューヨーク・ヤンキースの大スター、アーロン・ジャッジがキャプテンとして参加するといったニュースが流れています。ほかにもMLBのスター選手たちがそれぞれの国の代表として参加したいという意思を表明しています。
最終的にはその時のコンディションやチーム事情などによって決まるのでしょうが、それでも多くのトップ選手が出たいというのは、それだけWBCの価値が上がってきたという証かもしれません。
第5回WBC決勝戦の最終回、大谷翔平がマイク・トラウトを三振に打ち取って日本に優勝をもたらしたシーンはトップ選手たちに強烈な印象を与え、次は自分たちが大谷率いる日本を倒したいという気持ちがあるようです。今でこそMLBのスター選手たちが参加を表明するWBCですが、かつてはそうではありませんでした。もちろんアメリカでもデレク・ジーターなどが出場したことはありますが、それでもMLB各チームの消極姿勢もあり、日本でも他国でも選手の招集には大変な苦労がありました。
そんな中、イチローは第1回大会からWBCに出場し、第1回、第2回と日本の連覇に貢献しています。イチローは早い時期からワールドカップでも、オリンピックでも「本当の世界一を決める舞台なら喜んで行きます」と話していました。イチローは言います。
「参加するすべての国がその期間に集中して、国のプライドをかけて戦うというのならば、もちろん出てみたい」
どんな国際大会でも出たいというわけではなく、「世界一を決める舞台に出たい」というのがイチローの考え方でした。イチローは「一緒に戦ってきた選手の中で僕よりもヒットを多く打てると思った選手は1人もいませんでした」と言い切っているように、「ナンバーワン」に強いこだわりを持っています。
イチローは「記録より記憶に残る選手」は、記録を残せない選手の言い訳であり、「オンリーワン」もナンバーワンになれない選手の言い分だと言うように、MLBであれ、WBCであれ、「ナンバーワンだったヤツらが集まる世界でナンバーワンを目指すのは当然でしょう」と言い切っています。
いつだって目指すのはナンバーワン。ナンバーワンであって、なおかつオンリーワンなら最高だ、というのがイチローの考え方です。
- ワンポイント
- 最初から「オンリーワンで」と考えない。目指すのは常にナンバーワン。
人の数字を目標にしているときは、自分の限界より遥か手前を
目指している可能性がありますけど、自分の数字を目指すことは、
常に限界への挑戦となります
――『イチロー・インタビューズ 激闘の軌跡 2000―2019』
ビジネスの世界でよく言われるのが、「平均値を目指すと、平均値レベルで終わってしまう」です。たとえば、ある企業を創業するにあたり、同業社の数字を見て、「この業種なら利益率はこれくらいだな」と目標設定をすると、なぜかそのあたりの数字までは行くものの、そこを大きく超えることはありません。人件費や販管費、原材料費なども何となく「このくらいかな」という先入観が影響するのかもしれません。
平均値を超えていこうとすれば、業界平均など無視して、自分はこのくらいの売上で、このくらいの利益を出すといった自分独自の指標を持ち、そこに向かって工夫してこそ平均値を超えることができるのです。大谷翔平の強みの一つは「誰もやっていないからやってみる」という気持ちの強さです。
高校時代、大谷は高校生として初めて160キロの速球を投げていますが、この時も、また日本ハムファイターズ入団時の二刀流への挑戦も「誰もやっていないからやってみたい」です。常識や人の数字を気にしないからこそ圧倒的な数字を残すことができるし、不可能を可能にできるのです。
そんな大谷の才能を早くから評価していたイチローも、人の数字を追いかけることはありませんし、人と比較するということを嫌っています。イチローは言います。
「人と比較をするという価値観は僕の中からはもう消えています。僕は僕の能力を知っていますから、いくらでも先はあるんです」
別項でも触れているように、首位打者を目指して打率ばかりを見ていると、ライバルのことばかりが気になりますが、安打数だけを見ていれば、ライバルのことは関係ありません。同様にイチローによると、人の数字を目標にしていると、自分の限界より手前を目指している可能性があるのに対し、自分が設定した数字を目指せば、もっともっと先へ行ける可能性が開けてきます。
大谷もそうですが、自分で決めた数字について、周りが「そんなことは不可能だ」「無理に決まっている」と言うかどうかは関係ありません。誰かと比較して、「このくらいの数字なら上出来」と満足するのではなく、はるかに高いところに目標を掲げる。それはとても難しいことかもしれませんが、そこに向かって挑戦することで自分の限界を超えることができるのです。
- ワンポイント
- 平均値や人の数字を目標にしない。はるか先を目指してこそ大きく成長できる。

著書に『栗山英樹の言葉』(リベラル社)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』『不可能を可能にする イーロン・マスクの名言』(以上、ぱる出版)などがある。
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