M&A

第一生命保険 <8750> によるプロテクティブの買収、ミツカンによるユニリーバのパスタ事業の買収、楽天 <4755> によるハイパーメディアの買収、武田薬品工業 <4502> によるナイコメットの買収、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズによるランバクシーラボラトリーズの買収、これらに携わった投資銀行がどこだかお分かりだろうか。

いずれもゴールドマンである。ブルームバーグによれば、2014年年初から12月15日までに同社が助言したM&Aは373件で8,920億ドル相当であり、2位のモルガン・スタンレー292件2,730億ドルと大きな差を付けている。5年連続で首位をキープした形となった。

ゴールドマンはアメリカの投資銀行であるが、日本での業務も長い。1974年1月に東京駐在員事務所を開設し、1983年11月に証券免許を取得した。同社の日本アドバイザリーボードには丸紅 <8002> の朝田照男会長を始め、日本電産 <6594> の永守重信代表取締役社長CEO、LIXILグループ藤森義明代表執行役社長兼CEO等名立たるメンバーが名前を連ねている。いずれも積極的なM&Aで知られている企業だ。

2013年の売上高は34,206百万ドル(1ドル105円換算で3兆5,916億円)、純利益は8,040百ドル(同様に8,442億円)だ。国内大手の証券会社である野村ホールディングス <8604> の2013年3月期の売上高が1兆8,318億円、当期純利益が2,135億円だったことと比べるとその大きさの違いが良くわかる。


ゴールドマンが強い理由

同社の強さの源泉はなんだろうか。ここでは、歴史、人材・年収、政界へのコネクションの3つに注目してみる。設立は1869年と、JPモルガンの1799年には及ばないものの、モルガン・スタンレーの1924年、メリルリンチの1914年に比べると長い歴史がある。この長い歴史の中で培ってきた経営手法が大きく影響しているのだ。

そんな経営手法の1つともいえるのが、人材採用だ。ゴールドマンでは優秀な人材を中途採用しているケースが多い。大手銀行や他の投資銀行などで輝かしい実績を残した人材を積極的に採用している。そして、そのような人材に対しては高額な報酬を用意している。年収が1億円を超える社員も珍しくない。大学を卒業した新入社員でも年収が600万円~900万円とも言われている。給料はモチベーションを上げる要因の1つとなっていることは否定できない。

もちろん、一度入社すれば安泰というわけではない。常に結果を求められるため落第する人も出てくる。高額な報酬をめざし優秀な人材が集まって、そして残る仕組みが出来上がっているのだ。このような優秀な人材の中から政界に進出している人間も少なくない。ヘンリー・H・ファウラー(元アメリカ合衆国財務長官)、ロバート・ゼーリック(元アメリカ合衆国国務次官)、ヘンリー・ポールソン(前アメリカ合衆国財務長官)、ロバート・ルービン(元アメリカ合衆国財務長官)などはいずれもゴールドマンサックス出身者である。政界へ人材を派遣しておくことで自社にとって有利な政策を期待できるというわけだ。