◉人はインセンティブに反応する


バブルはそれがバブルと認識されれば弾けてしまうため、前述のとおり、バブルは弾けるまでバブルと認識されることがありません。経済学的にもバブルのメカニズムは解明されていないため、目下の経済動向がバブルと言えるかは不明です。

しかし、少なくともバブルを煽る人々の行動には説明がつきます。
それは単純明快で、バブルを煽った方が得できるから煽るというだけのことなのです。常に損がしたいと思って生きている人はいないですし、まったく得をしたいと思わない人もいません。つまり、損得は人を行動に駆り立てたり、行動を避けさせたりする力があるわけです。
人が行動に移るかどうかを誘導する要素は、損得も含め、経済学においてインセンティブと総称されます。
よってまとめると、得だからバブルを煽るといったように、人々の行動の中には当人に働くインセンティブへの反応として実行されたものが往々にして存在するのです。

では、インセンティブに反応して人が行動する。それがわかっていれば、逆に人の行動から当人へ働くインセンティブを推測することもできると思いませんか?
また、そのインセンティブを形成する下地として、当人が置かれた状況なども予想できるでしょう。

例えば、アベノミクスを囃し立てる人々の目的が「自分の理論が正しい」と示すことではないと先に述べました。ここにインセンティブの推測が応用されています。
ロジカルに考えて導かれた結論として日本経済が躍進すると予測したのなら、当然ながらその予測を利用して得な行動を取ろうというインセンティブが働くでしょう。そのインセンティブに従うなら、日本企業の株式を買うなりするはずです。
しかし実際の行動は、アベノミクスを囃し立てるだけ。この矛盾の合理的な説明は、「当人に想定していたものと異なるインセンティブが働いている」よりほかにありません。(ちなみに、異なるインセンティブとは何かという予測が前述の内容になります)。

以上のように、インセンティブを意識して他人の行動を分析することで、他人をより深く知ることできるのです。
皆様も、ビジネスで最も大切なことの一つである「相手を知ること」に、バブルの魔力(人々を突き動かすインセンティブ)を活用してみてはどうでしょうか。

BY Tom

© Petr Dosek 2012