アメリカドルは、世界一の流通量を誇る文句なしの基軸通貨だ。現在もその地位は続いており、アメリカ以外の国同士の国際取引であってもアメリカドルが決済通貨として流通している。この安定感と知名度の高さゆえに、安全かつ有利な投資先としてアメリカドルを検討する人は多い。

アメリカドルとはいったいどういう通貨なのか、投資先という視点でアメリカドルを考察してみよう。

国際決済通貨としての米ドル 実需筋からの旺盛な需要

すでにドル兌換制度は廃止されたものの、世界一のGDP規模を持つアメリカの通貨としてドルの信頼は大きく、現在も世界の基軸通貨としての役割を果たしている。このことが投資先としてのアメリカドルの見方にも影響を与えており、投機的な取引だけでなく実需筋の動きも相場に大きく影響を与えている。

アメリカが関わっていない国際取引でもドル決済が行われるため、その支払いに必要なアメリカドルが外国為替市場で調達されている。そのため、大規模な国際決済の際には大量のアメリカドルが買われ、相場を動かすことがある。

投資家はこうした売買勢力のことを実需筋と呼んでおり、実需筋が動くと予想される場合はその動きを意識したトレードをしている。例えば、日本の企業であるトヨタ自動車が海外での販売で得たアメリカドルを円転する際に莫大なアメリカドル売りが発生するため、外為相場で意識されることがある、といった具合だ。

米ドルの特徴「米雇用統計とFRBの動向から影響を受けやすい」

アメリカドルは流動性の高さや情報量の多さから投機的な売買の対象にもなりやすく、投機筋と呼ばれる勢力が莫大な資金をキャピタル狙いで売買している。アメリカの投機筋が主戦場としているシカゴ市場では、シカゴIMMポジションと呼ばれる投機筋のポジション残高が、世界中の投資家から注視されているほどだ。

こうした投機筋は、アメリカ経済の指標や政策的な声明などを材料視する傾向がある。最も大きなイベントとして知られるのがアメリカの雇用統計だ。非農業分野の失業率が何%であったかという数字によってアメリカドルの相場が乱高下し、これと同様にFRBの声明やFRB議長の発言、FOMCの議事録なども材料視されやすい。アメリカドル投資の際には、こうしたファンダメンタル的な要素をチェックする必要があるだろう。

米ドルの高い流動性と国際的な信用力は今後も続く

日本人はあまり意識しないことだが、アメリカドルの最大の魅力は信用力だ。自国の通貨がある程度の信用力を持っている日本人にとってあまり大きな問題ではないかも知れないが、自国の通貨がいつ紙切れになるか分からない国の人にとって、アメリカドルは資産防衛手段としても最強の通貨なのだ。

それを支えているのが世界のドル基軸体制と、アメリカ経済の規模と安定性だ。その地位は今後も続くと見られ、巨額の財政赤字によって今後国際的な信用力が大きく低下しかねない日本円に代わる資産ポートフォリオに加える価値は、大いにある。

(ZUU online)