南米の国、チリは日本からは遠くあまりなじみがないかもしれないが、地震国である日本との共通点も多く、国が南北に長く、北半球と南半球との違いこそあれ季節が日本と似ているのである。そんなチリは南米の国の中でも治安が比較的安定し、南米らしからぬ国民の勤勉な傾向などもあり、これまで経済的にも安定した動きをしていた。


「南米らしくない」チリ

チリは日本から見ると単なる南米の一国に過ぎないのかもしれないが、実は南米の中でも一番南米らしくない国といえる。一般に日本人の考える南米のイメージは、時間をあまり守らず、サンバに明け暮れ、呑気にコーヒーでも飲んでいるイメージだろうが、チリにはこのイメージはひとつとして当てはまらないのだ。

チリ人は時間に正確で、役所や多くの会社は朝8時から始業で、サンバも踊らず、コーヒーもあまり好きではないようだ。コーヒーはそこそこのレストランでさえインスタントコーヒーを出すことが多く、インスタントコーヒーの粉にお湯がテーブルの上に置かれそれを各自が飲むことになるのだ。基本的にコーヒーではなく紅茶やハーブティーを好むようで、南米といえば「コーヒーがおいしい」というイメージが、チリでは覆されることになる。


チリの経済の生命線である銅生産

そんなチリの安定した経済を担っていたのが、なんといっても銅の生産である。チリの銅山については2010年に起きたコピアポ銅山での生き埋め事故が大きく日本でも報道され、無事に全員が助け出されたことはまだ記憶に新しいだろう。

チリは銅の生産量で35%のシェアを誇り、断トツの世界一である。しかし、チリの経済を支えているこの銅の価格が、最近になって世界的原油安の影響を受けて芳しくない。昨年の6月には1ポンドあたり3.4ドルだった銅価格は、今年3月には2.68ドルと大きく下がった状態で、過去5年間での最低価格レベルを継続している。これに伴い対ドルベースのチリペソもこの半年で12%ほど下落し、ブラジルの22%とまではいかないが国内通貨の弱含みも継続している。

今後も世界的な経済の停滞が継続していくのであれば、チリ経済の大部分を占める銅価格の低下も継続し、チリ経済の屋台骨を崩しかねない状態である。チリの銅生産はまさに国の生命線なのである。


チリの治安にまで影響を与える銅

企業が海外に進出する場合、人件費の安さというのは最低限必要な部分ではあるが、それ以外に大きな部分を占めるのが治安の問題であり、この点で南米チリは大きく他の南米諸国を凌駕している国であった。それが最近の銅価格の低下で治安も不安定な部分が見えてきている。銅一辺倒で一次産業にべったりと依存してきたチリは、このままだと銅とともに衰退していかなくてはならない。

せっかく治安の良い南米チリという素晴らしいイメージを築き上げてきたのだから、銅価格だけに左右されない新しいチリの未来を模索してほしいものである。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
伊藤忠、米石油ガス開発で約380億円の損失計上
投資家に年利回り7%を提供する融資型クラウドファンディング投資の裏側
日経新聞/日経MJ/四季報まで閲覧可?会員制データベースに自由にアクセスする方法
注目の水素ステーション&燃料電池関連銘柄10選!
10万円以下でも買える?2015年の目玉LINE株を上場前に買う2つの方法