日本はデフレと雇用形態による格差

日本の場合をみてみると、90年代後半からデフレとなり、2000年代に景気拡大があってもgは1.8%と米国より低い。また製造業とその従業者が多く、2000年代の金融緩和による円安で業績は向上したものの、金融緩和自体で高額所得を得る人は、米国ほどはいなかった。そのデフレと低成長で資本の利回りも低く、株主還元もあまり重視されない。

期間のずれはあるが、日本の平均利回りは株式(ROE)4.3%、不動産(東証リート指数収益率)8.8%、債券(10年国債実質利回り)2.2%、3者平均は5.1%。たしかにr5.1%>g1.8%は成立するが、その差3.3%は米国の5.6%より小さい。

さらに年功序列型人事制度が中心で、従業員が経営層になりうるため、上位1%と他99%という階級格差が生じにくい。むしろ目立つのは、正社員60%と非正規社員40%という雇用形態による格差だ。所得税最高税率も、1980年の75%から2007年の40%に下がるまで30年近くかかり、しかも段階的引下げのため、所得が増えにくかった。

つまり、米国と比べて資産家もスーパー経営者も相対的に少なく、格差が広がりにくかったとみられる。


格差解消には賃金制度見直しがカギ

格差拡大の中で資本が相続されると、格差が世代を超えて固定化し、能力主義や機会の平等が脅かされる懸念がある。相続で人生が決まる世襲社会になっていく恐れがある。これにはr>gを解消して是正すべきだが、先進国でg(主に労働による所得の伸び率)を4~5%以上にするのはほぼ不可能だ。

そこでr(株式・不動産・債券などの資本運用で得る収益の割合)の引下げが必要となるので、ピケティは国際協調下での累進課税強化を主張する。批判や困難は承知の上で、一種の問題提起だろう。

日米それぞれの背景をふまえた解決策も考えなければならない。米国では経営層の報酬制度の見直し。日本ではデフレ脱却で国民所得を増やしつつ、正社員と非正規社員の賃金格差解消が課題となる。

さまざまな手段で極端な不平等をなくし、全体の所得を向上させ、強い経済基盤を作ることが世界的にも求められる。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
相続対策で流行りの「賃貸アパート経営」出口戦略を見据えた選択を!
日本経済のグレートシフト―長い不景気のトンネルを抜けて次のステージへ
日経新聞も?過去1年分の新聞記事が全て閲覧可!ネット証券、最新情報サービスが凄い
日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
10万円以下でも買える?2015年の目玉LINE株を上場前に買う2つの方法