3月30日、富士フイルムホールディングス <4901> は人工多能性幹細胞(iPS)細胞の開発や製造を手がける米セルラーダイナミクス社をTOB(公開買い付け)で買収すると発表した。
この結果、同社の今後の収益に貢献するであろうと思われる再生医療分野での成長をますます加速させるものと期待される。
富士フイルムの再生医療分野での狙い
富士フイルムは再生医療のベンチャー企業であるジャパン・ティッシュ・エンジニアリング <7774> への出資など、再生医療の分野への投資を拡大している。再生医療ビジネスは今後の成長が期待されるものの、まだまだその売り上げ規模は大きくない。かつ、研究開発には多額の投資が必要である。
細胞という「生き物」を扱うには独自のノウハウが必要となるが、それはどのようなノウハウなのか?試験管レベルでの生産と、工業的なレベルでの生産では、安定的な供給を行う技術や設備に段違いの格差がある。
つまり、「生き物」を安定にかつ大量に生産する事は至難の技なのだ。まさにこれが富士フイルムの古森会長が会見の中でセルラー社について「高品質のiPS細胞を安定生産できる企業」と評価した背景なのである。
富士フイルムのもつ技術
富士フイルムの基礎を担っているフイルムの生産技術は、世界トップクラスであると言っても過言ではない。フイルムは長さ数百メートル、幅数メートルの薄い素材の上に5層程度のコーティング膜を均一に塗布する技術である。これを実現するためには、各層を形成している物質に対し、分子レベルともいうべきコントロールが必要になる。
これはナノ領域でのコントロールとなるが、この技術で富士フイルムは他社の追随を許さない。機能性化粧品に富士フイルムが参入したのも、この技術がベースにあるためである。
医療分野での事業拡大
レントゲンフィルムからスタートした富士フイルムの医療分野での事業だが、医薬品など生体機能分野に関しては買収や資本提携が中心となっている。
今回の買収も本来富士フイルムがノウハウを持たない分野の買収となるが、富士フイルムが持つベース技術とのコラボレーションや資本の投下により、事業展開のスピードを加速することが期待される。
再生医療はようやく立ち上がりを見せ始めた分野だ。今後、スケール拡大によるコストダウン、価格の低下がマーケットサイズを飛躍的に拡大する可能性があり、各社の動向が注目される。(ZUU online 編集部)
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