前月の落ち込みから回復するも弱さが残る

米商務省発表の3月住宅着工件数(季節調整値・年率換算)は、対前月で2.0%増と3カ月ぶりに改善した。それでも92.6万戸にとどまり、堅調さの目安とされる100万戸を2カ月続けて下回り、市場予想の104万戸にも届かず、今後は金融引き締めが住宅投資をより冷え込ませる恐れがある。

ただし、天候などの影響で建築開始時期がずれる場合があるため、平均値も見ておく必要がある。3カ月後方移動平均をとると、去年12月:1.9%、今年1月:-0.5%、2月:-3.2%、3月:-4.7%となり、平均してみても振るわない。

3月の詳細な内訳からも低迷度合いが伺える。構造別では、全体の約7割を占める主力の一戸建てが61.8万戸と4.4%増加。ただマンションなどの集合住宅が30.8万戸で2.5%減とマイナスから抜け出せず。地域別では、北東部が10.1万戸で114.9%と大幅増になり、中西部も12.6万で31.3%増と、各々先月の大雪による落ち込みから回復。

しかし、西部は20.1万戸で19.3%減、約5割の最大シェアを誇る南部も-3.5%と前月割れだ。つまり、構造と地域のいずれにも拡大と縮小が混在する中、全体の上げ幅が押さえられた形だ。


量的緩和終了以降の市場減速

雇用や賃金の改善に加え、低金利が後押しし、住宅を購入しやすい環境は維持されている。3月米雇用統計で非農業部門雇用者数は12.6万人と事前予想を大幅に上回るネガティブサプライズとなり、2014年1月以来の20万人割れを示現したものの、2010年2月以来の増加トレンドは継続している。 失業率も5%台と低水準であり 個人所得も増大が続く。30年固定型の住宅ローン金利は、80年代は10%以上だったがその後下がり続け、直近3月には3.77%と歴史的な低水準で推移。

そのため、住宅着工件数は対前年の平均では12カ月連続で拡大している。NAHB住宅市場指数の「現状販売」は好調さを示す50を超えており、昨年6月の53.0から今年4月は61.0へと8ポイントも上昇。

このように住宅投資の環境は悪くないものの、足元では市場がやや低迷している。雇用や賃金は上述のように伸びているが、若干減速気味だ。それは、非農業部門雇用者数が11月の42.3万人増から、3月は12.6万人増へとペースダウンし、平均時給も1月の+0.6%から3月は+0.3%へと上げ幅が落ちていることからもわかる。

これに寒波の影響も加わって、年明け以降は特に住宅着工が進まなかった。着工件数は対前月の平均で年明けから3カ月マイナス。先述のNAHB指数の「客足」も50を下回り続けて不振。すなわち、冬場の特殊要因を除けば、昨年10月の量的緩和終了の影響で、景気減速の一端が住宅市場の停滞に表れているといえよう。


利上げ以降にさらなる減速の懸念

今後の住宅市場は、当面は伸びる可能性が高い。NAHB指数の6か月先の販売見通しを見ると、4月も前月から5ポイント伸びて64.0となり、好調さを示す50を超えている。数カ月先の勢いを示す先行指標の建設許可件数も3月は103.9万戸となり、昨年7月以降連続して100万の大台を確保。

ただこうした好ましい傾向にある住宅市場も、中長期的に見れば徐々に縮小していく恐れは否定できない。FRBの利上げで景気がより減速し、遅れて雇用や所得も悪化すると、住宅購入余力が下がっていくことが考えられ、その兆候はすでに指標に表れている。

ISM景況感指数の「雇用」は、昨年10月から3月にかけて、製造業は55.2から50.0、非製造業は58.3から56.6へと下落。建設許可件数は先述のように高水準ではあるが、対前月の平均では1月と3月がマイナスに陥っている。

金融引き締めにより住宅投資が冷え込み、関連業界の業績が低迷し、リストラで雇用や所得が伸び悩み、さらに住宅購入が困難になっていく。こうした悪循環に陥らないように政策の舵を取ることが求められる。(ZUU online 編集部)

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