3月16日から17日にかけて行われた日銀金融政策決定会合で、現行の金融政策継続が決定された。
しかしながら、「先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられ、消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる」と、物価見通しを引き下げた。
物価見通しにあくまで強気の黒田総裁
日銀の黒田総裁は、2013年3月の就任当時から、デフレ克服をめざして2年以内にインフレ率2%にすることを公約として掲げ、大規模な量的金融緩和に踏み切っていった。内容としては、日銀の資金供給量を、国債などを買い入れることによって増やすというもので、あまりの規模の大きさから「黒田バズーカ」とも言われている。
しかし2年が経過した今、物価がマイナスに転じる可能性さえ出てきており、2%にはほど遠い状況だ。黒田総裁は「原油価格が想定通り緩やかに上昇するならば、15年度を中心とする期間に2%に達する」と説明。従来目標は変えないという強気の姿勢を崩していない。
一方で安倍内閣のブレーンである、浜田内閣官房参与は、2月23日のロイター社のインタビューで、「原油安という外生要因の変化にもかかわらず、日銀が現在の目標にこだわっている。
原油価格が50%も下がるのは考えられなかったことで、当然、目標を再検討すべきだ」と述べるなど、蜜月だった日銀と政府の間に溝が生じつつある。
及び腰の安倍内閣
日本経済新聞によれば、2月12日に開かれた経済財政諮問会議で「黒田総裁は珍しく自ら発言を求め、財政の信認が揺らげば将来的に金利急騰リスクがあると首相に直言した」ものの、議事録から削除されていると言われている。
黒田総裁の発言は、本会議の中で「国と地方のPB対GDP比を2020年度までの5年間で、2015年度に比べ、3.3%改善する」という、今までのプライマリーバランスの黒字化とは異なる目標を掲げようとする内閣への牽制と考えられる。
財政再建を重要視する黒田総裁と、経済成長を重視する安倍内閣との対立が浮き彫りになっている。
安倍内閣は、アベノミクス3本の矢の成長戦略で税収を増やすことができれば財政は健全化するとの思惑だが、実際はそのように甘くはないだろう。
日銀の使命は物価の安定
すでに日銀は大量の国債などを購入しており、デフレから脱却した場合は、その国債を放出することになる。それまでに財政再建が行われていなければ、供給過多となった国債はヘッジファンド等の恰好の餌食となる。
売りを浴びせられることで価格は暴落、格付機関の投資格付引き下げも予想され、ハイパーインフレを引き起こす可能性もあるのだ。
そして、このような安倍内閣のスタンスは、黒田総裁にさらなる量的金融緩和を躊躇させることは容易に想像できる。第3弾の金融緩和はハイパーインフレリスクをさらに高めるため、日銀の使命が物価の安定や金融システムの安定であることを考えれば、財政再建なしには次の一手はあり得ないからだ。
もっとも、金融市場関係者には、物価見通しの引き下げを根拠として、さらなる金融緩和を期待している人も多く、黒田総裁は今後も難しいかじ取りを迫られそうだ。(ZUU online 編集部)
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