デフレ完全脱却にむかう現在の景気回復の推進力は、景気中立的な水準より拡大している財政支出(第一の矢)、日銀の大規模な金融緩和による間接的なファイナンス(第二の矢)、そして海外経済の回復をともなった円安にあると考えられる。
この推進力に加え、成長戦略による構造改革・税制改革・規制緩和(第三の矢)が企業を刺激し、企業活動の回復の力(企業貯蓄率の低下)を使ってデフレを完全脱却するのがアベノミクスの本質である。
気中立的な水準より拡大している財政支出にも三本の矢が存在する。この三本の矢、特に三つ目が、景気回復の推進力として忘れられていると考える。
消費税率引き上げなどの財政緊縮は、景気回復の推進力となっているこれらの力を削ぐことになってしまう。
前編では、まず二つの矢を解説する。
一つ目の矢は、アベノミクスの機動的財政政策であることはすぐに分かる。2013年初には10.0兆円、14年初には5.5兆円、そして15年初にも3.5兆円の財政による景気刺激策がとられている。
二つ目の矢は、2011年の東日本大震災からの復興のための財政支出であることも想像が難しくない。2011年から景気中立的な水準より財政支出が拡大していることが確認できる。
これだけの景気回復の推進力を得るためには、アベノミクスによる機動的財政政策だけでは不十分であり、その前にあった復興の力が重要な要因となっている。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト
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