証券取引に関心のある人であれば、「インサイダー取引」という言葉を一度は耳にしたことがあるだろう。テレビや新聞でも、インサイダー取引関連のニュースが時折報道されているが、その詳しい内容は意外と知られていない。
悪意は無かったのにインサイダー取引を行ってしまっていた、ということにならないよう証券取引を行う人は是非一度知識の再確認をしてみよう。
インサイダー取引とは?
インサイダー取引とは、上場会社の重要な内部者情報を入手した者が、その情報が公開される前に、その会社の株式等の売買を行うことを言う。
「A社の株価が上がりそうな情報を入手した!公表される前にA社の株を大量に買っておこう!」「B社のヒミツの業績情報を知ってしまった・・・一部の人しか知らない今のうちに、B社の株は早めに売っておこう!」このような取引はインサイダー取引にあたり、金融商品取引法により禁止されている。
どんな情報が対象となるのか?
どのような情報がインサイダー取引の規制対象になっているのだろうか。法令では、次のように定められている。 色々と難しそうなことが書いてあるが、つまり株価に大きな影響を与えそうな会社の業績など、内部者しか知り得ない情報、と考えていいだろう。
①決定事項
株式の発行、自己株式の取得、株式分割など
②発生事実
業務遂行の過程で生じた損害、債権者による債務の免除など
③決算情報
業績予想の大幅な修正
④その他
①~③以外で、投資判断に著しい影響を与えるもの
⑤子会社に係る重要事実
①④にあたる子会社の情報で、企業集団の経営に大きな影響を与えるもの
そしてこれらの情報が「公表」される前に、それをもとに有価証券の売買を行うと、インサイダー取引に当たってしまうのだ。何をもって「公表」とされるかの基準は、以下の3つが定められている。
①2つ以上の報道機関に公開してから12時間経過すること
②証券取引所のHPに重要事実が掲載されること
③重要事実に係る事項が記載された有価証券報告書が公衆縦覧に供されること
なお、上場会社のHP上での情報公開は、インサイダー取引規制上の「公表」には当たらないため注意が必要だ。
誰がインサイダー取引の規制対象になるのか?
次に、インサイダー取引規制の対象となる人を見てみよう。法令では、以下の人が「会社関係者」に該当し、インサイダー取引規制の対象に定められている。
①上場会社の役員等
②上場会社の帳簿閲覧権を有する者
③上場会社に対して法令に基づく権限を有する者
④上場会社と契約を締結している者又は契約交渉中の者
⑤同一法人の他の役員等(②と④が法人の場合)
上場会社の役職員だけでなく、その会社と取引がある者もインサイダー取引の規制対象となる。取引先の業績情報を知る立場にある人は要注意だ。
また、故意に未公開情報を知ったかどうかに関わりなく、それが重要事実であったならばインサイダー取引規制の対象となる。コピー機から出てきた資料を見たら、偶然取引先のインサイダー情報だった等の場合も取引規制の対象だ。
インサイダー取引の詳細を取り上げてきたが、インサイダー取引が厳しく規制されているのは何故だろうか?その理由は大きく分けて二つある。投資者の保護と、証券市場への信頼確保だ。
インサイダー取引がまかり通るような証券市場では、内部情報を持つ者に比べ、それを持たない多くの投資者が著しく不利となり、損失を被りやすくなる。そして、そのような市場からは投資者が逃げ、証券市場が機能しなくなってしまう。
一般の投資者を詐欺的行為から守るというだけでなく、経済の基盤となっている証券市場の機能を維持するために、インサイダー取引は規制されている。証券取引を行う人は正しい規制の知識を身に付け、意図せぬインサイダー取引を行ってしまわぬよう注意しよう。(ZUU online 編集部)