売電には参入障壁が…。官民一体となった改革が不可欠

ところで売電事業だが、外資規制対象であり、諸々の行政手続きが必要であるため、その官僚的な遅延体質、必要な許可の取得可否が一つの参入障壁となっているように見受けられる。

課題は山積しているが、目下の電力不足という問題を解決するために、官民一体となって外資の技術を取り入れつつ、大胆な改革を行う、いわばオープンエナジーの発想をさらに強めてもらいたい。

日系企業の動き

フィリピンの発電事業には日系企業も積極的に投資活動を行っており、下記のように関連する報道も増加している。

「東京電力は東日本大震災発生後に中断していた海外投資を再開する。丸紅と組み、フィリピンに出力40万キロワットの石炭火力発電所を新設。総事業費は1千億円で2017年に稼働を目指す。」(2014年5月30日付日本経済新聞)

「三菱商事はフィリピンで15年ぶりに発電所建設に取り組む。30日、比南部のミンダナオ島で石炭火力発電所のプラント建設を約300億円で受注した。」(2015年1月31日付日本経済新聞)

「大阪ガスはフィリピンで天然ガス火力発電所を建設する検討に入った。同国電力大手のマニラ電力と共同建設に向けた交渉を始めており、採算性などを見極めて投資額などを決める方針。」(2015年2月27日付日本経済新聞)
また、フィリピン最大手配電会社メラルコと長く交流のあった東京電力も、2015年2月6日、メラルコとMOU(了解覚書)を締結。今後のフィリピン電力市場に対して、日本のナレッジを提供していくことが期待される。

さらに、電気を消費する側の日系企業の動きも注目したい。フィリピンで生産活動を行うメーカーにとって、計画停電の実施は、生産ラインに大きな影響を及ぼす。発生する稼働損失費用をいかに最小限に抑えるかという観点から、「自家発電」の検討は必須となっている。

たとえばセイコーエプソンは、フィリピンの製造子会社エプソン・プレシジョン・フィリピン(EPPI)に対して、「2016年までに123億円を投資し、2017年初頭に竣工、同年春に稼働を開始する予定」、であり「屋根部分には、EPPI全社が昼間使用する電力の半分程度をカバーできる、約3000kWhの能力を持つメガソーラー発電設備を設置する」としている。

今後も、フィリピン国内における電力不足は避けようがないだろう。しかも、前述したようにフィリピンの電気代はアジアでもトップクラスである。このため「自家発電」を検討する法人は少なくない。また売電としてではなく、消費のために発電設備を購入するケースも法人にかぎらず個人単位でも増加していくと予想される。