フィリピンにおける再生可能エネルギー拡大への道

フィリピンのプラント別発電能力詳細構成比は、下記の通りである。

引用) Philippine Department of Energyの資料より筆者作成

発電電力構成比において、石炭が32%と他のアジア諸国同様に高い割合を示しているが、地熱や水力の割合が高いのも、フィリピンの特徴である。一方で太陽光、バイオマス、風力は全体からみると低い割合であるものの、着実に伸びていることがわかる。

フィリピンでは、2008年に発効された再生可能エネルギー法により、地熱、水力、風力、太陽光といった再生エネルギーに注目が集まり、2012年7月には買取価格も設定された。買取の価格水準には賛否両論あるが、具体的に動き始めていることは好ましい傾向だ。

フィリピン政府が発表した「国家再生可能エネルギー計画」によると、2030年までに再生エネルギーによる発電能力を15,300MWに拡大する目標を定めている。2015年1月には、新たな再生エネルギープロジェクトとして、304.51MW分の案件をDOEが承認しており、売電事業における再生エネルギーのプレゼンスは急速に高まっているところだ。

フィリピンが再生可能エネルギーを推し進めている背景には、2005年Philippine Energy Plan(PEP) 2005-2014に設定した次のようなロードマップがあるからだ。

①    国産石油と国産天然ガスの確保
②    再生可能エネルギーの開発
③    エネルギーの効率的な利用

慢性的な電力不足に直面しているフィリピンにとって、環境面も配慮した再生可能エネルギーを推進することは、至極当然の回答であろう。

また再生可能エネルギー、とりわけソーラーパネルは、法人・個人単位でも比較的導入しやすい発電設備のため、「自家発電」の観点から検討する価値はある。企業は、電力の供給面の改善を要望するだけでなく、自社としてどのような対策をとることができるのか、いまが検討を行うべき時である。

売電事業は昨今、民営化が開始されたばかりーで、現在もローカル財閥系や大手企業が独占していることは事実である。しかし一方で、自家発電のライバルは少なく、新興国ならではの複雑な政治力学も相対的に少ない。それだけに新興企業の登場や成長に期待の広がる余地がある。

以上の点からも、日系の再生可能エネルギーの周辺事業を行う企業は、積極的にフィリピンマーケットを考えるタイミングではないだろうか。

最後に

生活の基礎である電力は、国民生活、経済産業の根幹となる。しかし、それだけに多くのしがらみがはびこり、市場メカニズムをスムーズに導入することは難しい。だが方法論によっては、補える面も多くある。

電力不足という課題を抱えたフィリピンにとって、日系企業のエネルギー技術、とくに発電だけでなく蓄電などのバッテリー技術に対する潜在的需要は想像以上であると考えている。

昨今フィリピンでは、停止していた原子力発電の再考がにわかに取りただされている。フィリピンに居住する身としては、一抹の不安を覚えつつも、現実に電力不足にも直面しているため、この際、官民交えて侃々諤々の、白紙状態からの議論を行なう良い機会であるとも捉えている。

いわずもがなだが、日本の企業は自社の技術をいかに海外に売り込むかを志向し、私もその一助になれればと考えている。

小川晃廣 1981年フィリピン生まれ。中央大学大学院経済学研究科修士課程修了。外資系コンサルティング会社、日系メーカー、総合商社勤務を経て、現在、物流関連の法人設立準備のため、フィリピンに居住。日系調査会社と業務提携を交わし、フィリピンでの市場調査、販路開拓、法人設立サポートも実施。 (ZUU online 編集部)