店主はいつもの通り、機械を導入した場合の粗利から検討してみた。

粗利 = (販売価格‐コスト)× 販売量

= (500‐20)× 200

= 480 × 200

= 96,000 (円)

これが機械を導入した際の粗利である。

経営上のその他の固定費(人件費、スープ、電気水道代、賃貸料)は概算1日3万円程度でほぼ一定である。このことから、600万円の製麺機のコストを回収するのに必要な日数は、以下となる。

6,000,000円÷(96,000‐30,000)≒ 91 (日)

約91日である。店主は年中無休の自分の店なら、約3か月で回収可能と判断して短期資金を借り入れて購入を決断した。

さてこの決済、数字はすべて正しいが、経済性工学の視点から考えると意思決定には誤った数字なのである。この決済を行った場合、想定していた3か月では回収が追い付かず、資金ショートを引き起こしかねない。今回の意思決定の際には、売り上げと経費のバランスを確認する「粗利」で検討するのは間違いである。対象を明確にして比較する必要があるのだ。今回正しく意思決定しようとするならば、以下のように製麺機を購入した場合と、購入していない場合を比較しなければならない。

導入なし

売上        変動費(麺)        固定費

200個×500円   200個×50円        30,000円

導入あり

売上        変動費(麺)        固定費

200個×500円   200個×20円        30,000円

差分は変動費である麺の分、200個×30円の6,000円だけである。よって、製麺機の回収期間は6,000,000万円÷6,000円の1,000日となる。

粗利から判断した数値では90日あれば回収可能と予測されていた期間が、実際には1,000日つまり3年近くかかるとするならば、意思決定は大きく異なる。商品のコストダウンのために短期資金を借り入れて機械を買ったはずが、キャッシュフローを大きく毀損して倒産の引き金となりかねない。


ポイントはどの数値をで経営の意思決定を行うのか

根拠ある経営のために数値設定を行う企業は多いが、成功している企業は少ない。意思決定のためにどんな数値を用いるかにういての知見がないまま、参考にしたり計算したりする数値を大量に増やしてはいないだろうか。これではラーメン店の経営すらできないだろう。(経営者 online 編集部)

経済性工学の観点で検証すれば、損得の判断についての解を示すことができるといえる。理論的に何を指標とするのか、何が正解なのかを踏まえ、経営のための意思決定を行うことをお薦めしたい。 (ZUU online 編集部)

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