売り手市場といわれる今年の就職市場で企業はそれぞれの特徴を最大限活かし、各社独特な採用方法で、より良い人材を採用することを試みている。特にグローバル化を反映し、人材マーケットも国内のみに絞り込むのではなく、世界に広げる傾向が見て取れる。


グローバル人材採用戦略をとるファーストリテイリング

そんな状況下、ユニクロを展開するファーストリテイリング <9983> の人材採用戦略には、多くの企業や学生たちが度肝を抜かれたことだろう。新卒・中途を問わず新規採用を一本化しただけでなく、海外の人材を国内に輸入し、国内の人材を海外に輸出するという画期的な方法を、同社のCEOである柳井氏は編み出したのである。これは、日本の企業に欠落しているグローバル化を、人事の面で革新を起こす大革命となるかもしれない。新卒一括採用が当たり前のように蔓延し形骸化している日本の企業にとっても、採用される側となる学生たちにとっても見逃せない一大事であり、戦々恐々としながら見守っていることだろう。

これが近未来トレンドになり、日本の企業は一挙に活性化するかもしれない。競争というメンタリティーを排除された教育に身をおいた世代が、社内での大多数になった日本企業にとっては、内から競争心をあおるということは大きな最優先課題であるからだ。いい意味での競争心を呼び起こさせるという課題を、柳井氏が日本の企業に投げ掛けたようにいえるのではないか。

競争のないところに、優秀な人材は育たない。競争がありライバル同士となってお互いが切磋琢磨する環境にだけ、良い人材は育つ。にもかかわらず、戦後日本の教育現場では、運動会でさえ順位をつけることが「悪」であるというような教育をしてしまった。そのツケが、昨今の日本全体に影響を与え始めている。占領軍による戦後政策の一環として日本人から牙を抜くために行われた政策を、教育現場に携わる人間たちが鵜呑みにしてしまった。そしてその結果、学校には競争心とともに権威もなくなった。かつては聖域だった学校は荒廃し、聖職だと言われていた教師もモンスターペアレントなる怪獣たちに占拠され威圧されてしまったのだ。

このような時代背景を経て、今の日本はかつての士気と志を失いつつある。時を同じくして、ビジネス界ではグローバル化が進み、取り残された日本企業は改革を迫られている。