プロジェクトにおいて人材はあまり重要視はされないのですか?

クラウド上で人材を判断するというのは難しいです。群衆(クラウド)の中でお金を出してくれる人は多種多様な人がいるわけですから、プロフェッショナリティーが高いかどうかを判断しやすければ良いと思います。

例えば、あるプロジェクトで「こういう優秀なビジネスマンを雇う為にお金が必要で、雇ったらこの事業が伸びます」ということをいくらサイトでプレゼンしても、お金を出す側の人達は、雇われる人が優秀かどうかなんて、会ってみないとわからないですよね。一般の人からすると「えっ?優秀なビジネスマンってどういう人?」となってしまい、よくわからない。

ですが、ある病院が「こういう専門性をつけたお医者さんを紹介したい」というような内容だったら、お金は集めやすいと思います。それは、そのお医者さんのプロフェッショナリティーが誰もがわかるから。なので、そういう意味でプロフェッショナリティーが高い人であれば、みんなが応援してお金を出してくれるという構図はあり得ると思います。

少数の投資家が少数の経営陣に期待してお金を出すのとは状況が違うので、クラウドファンディングでは群集の色々な人の価値観を大事にしなければならないです。


READYFORが国内最大の規模になることが出来た理由は?

1番になれた理由かどうかはわかりませんが、「色々な人達のチャレンジの一歩目になりたい」という思いは凄く大事にしてきました。どんな活動でも、まず社会のレールに乗らないとジャッジもされないですよね。そしてジャッジされる状況になっても、一定の審査員の価値観で評価の大小が決まってしまいます。本当は知らない所でアイデアを評価してくれる人が沢山いるはずなのに、その審査員の判断だけで折角のチャンスが無くなってしまう事がすごく勿体ない。

世の中にそういうコンテスト等は沢山あると思いますが、私たちはまずどんな人でもスタートラインに立つことが大事だと思っています。そして、そのチャレンジャーを応援してくれる味方を作って、まずやってみるという状態を作りたい。金額の大小に関係なく、今まで実績があまりない人でも一歩目を踏み出し、プロジェクトをスタートさせてお金を集め始めて、その最終判断はクラウド上の一般の人々に決めてもらえば良いわけです。なので私達はあくまでミッションに忠実に、いろいろな活動を引きあげる事をやりたいと思ってやってきました。それが沢山のプロジェクトを生み出すきっかけになっていると思います。


成功事例の具体例をいくつか教えて下さい。

1 つ目は、 2,200 万円を集めた、がん患者の相談所を作るプロジェクト。

そのプロジェクト実行者の方(プロジェクトオーナー)はテレビ局勤務の女性記者の方でした。彼女は、24歳のときにがんになってしまいました。それから奇跡的に回復されて今は元気に記者として復帰されていますが、今世界的に見てもがんで亡くなる確率はすごく高いですし、日本でもがんになった後の生存率はすごく低いですよね。その理由として、がんは死にとても近い病気だと日本では認識されていて、「がんになったらもう生きていけない」と思ってしまう事が挙げられます。その不安感が死に向かわせてしまうというか、そういう気持ちの問題がすごく大きいみたいです。

その気持ちの問題をケア出来るような相談所を作るというのが彼女達のミッションで、2014年、その女性記者の方を含め色々な大企業に勤務されている女性の人達が10人程集まってプロジェクトは発足しました。普通に大企業で働きながら、余剰の時間で集まり企画を練ってやり始めたんですね。そしたら最終的に2,100人の方々から2,200万円が集まり、2015年の春頃にはもう着工してその相談所が出来る事になっています。

READYFORはこのプロジェクトで起業や資金調達の新しいあり方を示す事が出来たと思います。起業家を増やしたいと日本の社会の中でもすごい言われてますが、自分の仕事を辞めて起業をする事はまだまだハードルが高いですよね。この女性記者の方のプロジェクトでは、働きながら自分のやりたい事にチャレンジしてみるという、パラレルにキャリアを進む道のりを示すことが出来ました。多分今までだったら、お金を集めるという時に、法人格を持たなくてはいけないとか、実績がないと金融機関に借りられないというところが大きかったと思うんですけど、クラウドファンディングによって、実績というよりも思いや経験というもっと大事な部分をしっかりと伝えることによって、お金が集まるようになりました。なので、今までの資金調達の方法をなかなか取れなかったような人達の新しいチャレンジにより、新しい資金調達の流れを作ることが出来たと思います。

2 つ目は、 1,300 万円を集めた、くろがね四起という日本初の四輪駆動車を、レストアして走らせるようにするプロジェクト。

これはいわゆる車ファンの人達が「昔はもう絶対動かないと言われていたようなものを甦らせる」というストーリーやロマンがあって、少しずつ協力者が増え、車好きの人達の中でも凄い話題になって、ヤフトピ(Yahoo!ニューストピックス)にも取り上げられて、最終的に1,300万円が集まりました。これは凄く面白い事例だと思います。

3 つ目は事業のようなものですが、自転車のオーダーメイドをするサービスで、最初の自転車を作る為の資金を集めるプロジェクト。

最終的にはサイト上でオリジナルの自転車を販売するので、皆、自分が好きなものをセレクトしてオリジナルの自転車を買うことが出来ます。その最初のプロトタイプ製造の為の資金をREADYFORで集めたわけですが、購入型なので、お金を出した人は最終的に自転車を買えますよね。43,000円の支援で1台購入という形なんですけど、もう完売していて、50台が最初に売れた事になるんですよね。なので最初のマーケット調査というわけではないですけど、事業が本当にいけるかどうかを確認しながらリスクなくお金を集められるという事例でした。

あとは、本当に多岐にわたっています。ソーシャルミッションに共感させるものもあれば、プロダクトの開発、コミュニティーからお金を集めるようなプロジェクトもあります。ダチョウ肉のようなオルタナフード等、今あまり食材として使われていないような食べ物を普及させるためのイベント主催や、グリーンカレーを作るプロジェクト、食品を作ってそのニーズを調査してもらうプロジェクト等。オルタナフードもそうですけど、ニッチなスポーツ等まだまだ知られていないものだからこそ、みんなで応援しながら広げていくというスタンスが適しているのだと思います。クラウドファンディングのような形態でないと、あまり資金は集まらないのかなと。株式会社やNPOを立ち上げるよりは簡単だけど責任を伴いながらスタートしなければならないような事を、このREADYFORでチャレンジして頂いたら嬉しいなと思います。