小型魚向け「フィレーマシン」の開発

石田さんは餌の開発において、熱工程に注目した。

魚を一旦スチームして圧搾し、油を抜いた後で乾燥させていた従来の方法を、「エクストルーダー」と呼ばれる高圧高熱の押出機にかけてペレット化するようにした。スペースと時間のかかる熱工程を2回から1回に減らしたことで大きなコストダウンが実現。肝心の餌の品質も良く、カンパチに与えたところ、「従来品と遜色ない飼育結果が得られた」という。

ほかにも石田さんたちは、小型魚の開きを自動化する「ヘッドカッター」と「フィレーマシン」も開発している。従来であれば人手を使って頭を切り落とし、内臓を取り出して開いていた作業が、工程管理者1人だけで、毎分120匹のカタクチイワシの開きが量産できるようになった。このマシンでは魚種を問わず10〜25gまで対応できるので、カタクチイワシ以外の未利用魚の利用に道を拓いた。


ソフト・ハードをパッケージ化したビジネスモデルを

だが石田さんは、「実際の現場への導入は思うように進まない」と打ち明ける。

餌に関しては「飼料メーカーがまだ儲かっているので、新たな生産ラインの必要性を感じていない。では漁協などが入れるかというとコストがネック」(石田さん)。

フィレーマシンとヘッドカッターも同様だ。工場のサイズや設置場所を考慮して設計するセミオーダーのため、価格がセットで800万円ほどする。ただ価格に関しては、ある程度台数が出るようになれば、量産効果で下げられそうだ。

問題は導入後だ。天然魚は時期によって魚種や量が変わってくるため、せっかくの機械が遊んでしまう懸念もある。また台数もほとんど出ていないため、メンテナンスコストが見えにくい点もネックだ。

こうした新しい機械やシステムの導入には大企業でも慎重になるもの。まずは価格を思い切り下げて、導入事例を増やすことが必要だろう。事例が増えれば、改良改善のデータも集まり、より洗練されたマシンが生まれる。

ビジネスモデルの見直しもカギだ。現在製造業では商品のライフサイクル全体で収益を上げる仕組みが主流だ。機械の売り切りではなく、保守や機械を活用した商材開発などのコンサルティングなど、ソフトで稼ぐことも考えるべきだろう。導入側も1社だけでなく複数社が共同となり、複数台まとめて購入する方法もありだ。リースやレンタルもあるだろう。

売り先は当然世界だ。練り込んだビジネスモデルを、需要の高い国々にカスタマイズする工夫も必要だ。

何よりまず未利用率9割という現実を、業界を超えて共有することが重要だろう。知恵はまだまだ出るはずだ。石田さんらの努力に期待したい。 (ZUU online 編集部)

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