雪 ビックライフ記事-620x330

国土の半分に雪が降る日本。雪は、北日本の人々の暮らしを大きく制限するまさに「厄介者」。しかしその厄介者が新たな資源として生まれ変わろうとしている。雪の冷熱を利用したエコハウスや工場、雪室で熟成させた食材など、新たな産業や市場が生まれつつあるのだ。

除雪から利雪へ。目指すのは雪資源大国だ──。


日本は世界トップの豪雪国

今年2月。首都圏から北日本にかけ観測史上まれにみる大雪に見舞われた。11都県で13人の死者と多数の負傷者が出た。首都圏の多摩地方や山梨では陸路が寸断され孤立する地域も出、救出に自衛隊が投入される事態となった。

雪の脅威を改めて知らされた形だが、実はもともと日本は世界的にも希有な豪雪国である。

例えば北海道の札幌市は1シーズン約6mの降雪がある。これは人口100万を超える都市ではダントツで、2位のロシアのサンクトペテルブルクの倍以上ある。

この圧倒的な積雪に日本人は悩まされてきた。北日本では雪が降るたびに除雪を行わなければならず、その費用は例えば札幌では1シーズン約150億円にも達する。さらに雪による犠牲者も増えている。消防庁によれば、2000~09年の10年間の雪による死亡・不明者は439人にのぼり、90~99年の10年間の190人より2倍以上増えているのだ。

雪国の人にとって、雪は金も手間もかかり、命の危険もある、まさに「厄介者」なのだ。だがこの厄介者に対する見方がこの10数年ほどの間に変わってきた。