デザイナーの職務内容を見ると、インダストリーデザインやプロダクトデザインに留まらず、UXリサーチ/行動分析、マルチデバイス対応のビジュアルデザインなど、多岐にわたっている。ソフトウェアエンジニアについても、プラットフォームから、デバイスと連動する個別のモバイルアプリ構築、アジャイル開発のマネジメント、品質保証、セキュリティまで広がっている。
通常、一般消費者を対象としたマスマーケット向けのデバイスビジネスでは、スケールメリットを生かした大量生産によるコストダウンで競争力の維持を図ろうとする傾向が強いが、Fitbitの場合、デバイス上で稼働するアプリケーションやそれを利用したサービスの開発に注力して、バリュー・プロポジションを創ろうという経営者の姿勢が伺える。
社会性と収益性を繋ぐコーズド・マーケティングの訴求力
マーケティングコミュニケーションの観点から見たFitbitの特徴は、患者団体の米国心臓協会(AHA)と連携した「Fitbitセレブリティ・チャレンジ」、飢餓問題に取り組む非営利団体フィーディング・アメリカと連携した「Fitフォー・フード」など、自社の機器・サービスを媒介として、社会参加への行動変容を支援するプログラムを積極的に展開している点だ。
「善いことをした」という活動報告で終わりがちな従来型の社会貢献活動と一線を画し、戦略的に社会貢献と事業活動を一体化させたコーズマーケティングによって、ソーシャルインパクトを高めつつ、自社の収益拡大に繋げようとするFitbitの取組姿勢を見ると、メディア企業出身の経営者ならではの経験、ノウハウが感じられる。