厚生労働省が2日に発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、4月の労働者1人あたりの現金給与総額は、27万4577円、前年同月比0.9%増と5カ月連続のプラスとなった。また、実質賃金も、増税の影響が一巡し上昇に転じた。

金融緩和開始から2年を経てようやく賃金でも好転の流れが生まれつつある。消費マインドがより上向けば、企業業績がさらに向上し一層の賃上げにつながり、実体経済に力強さが生まれる。

2年ぶりの実質賃金増

連合集計の平均賃上げ率(定昇相当分込み)は、組合員300人以上の大手企業組合で2.31%となり、前年から0.17ポイント上伸。300人未満の中小企業組合でも、1.99%と大手よりは低いが0.16ポイント伸長。輸出企業の好業績やサービス業中心の強い人手不足感などから、賃上げが定着し給与の底上げにつながっている。

また物価上昇を考慮した実質賃金指数は0.1%と微増ながらも伸び、2013年4月以来2年ぶりに反転。日銀は2年前に大胆な金融緩和を開始したが、それで内需が拡大し企業業績も向上して賃上げにつながるまでには、通常は時間がかかる。

一方、円安で輸入食料品などが値上がりし、消費増税も重なって物価の伸びが高まった。そのため名目賃金以上に物価が上がり、実質の負担が重くのしかかってきたのだ。それでも2年経過し賃上げにつながってきているのに加え、増税から1年経過し統計上の影響がほぼ消失。それにより実質でもようやくプラスに転換しつつあるといえよう。

このように、物価の伸び以上に賃金が増え、生活負担が軽減されるという、望ましい流れが見えてきている。

企業業績が伸びても賃上げには時間を要する

中央銀行がベースマネーを増やしてから、当初は株価や企業業績が好転するだけで、労働者の賃金上昇には結びつかず、景気回復の実感が得られないとの批判がある。

だが一般的には、金融緩和から賃金上昇まで2~3年は要すると言われ、しかも日本のように長年のデフレで消費マインドが冷え込んでいる国では、消費増→企業業績向上→賃上げに至るまでにはさらに時間がかかる恐れがある。それが考慮できていれば、賃上げまでの流れを冷静に見ることができる。つまり、金融緩和で株価や業績に好影響が出ても、1年では給与までには結びつかないということだ。

2014年4月に増税したため市場や経営には悪影響となり、10月末以降に追加金融緩和を実施し底割れを防ごうとした。ただそうした株価や業績の波とは別に、賃金は長期のトレンドとして、2年目になりプラスに転じている。途中で増税という引締め政策をしてしまったが、マネー増から賃上げまで概ね理論通りの期間と流れできていると考えられる。