先週の中国株式市場
■香港株 一進一退 中国製造業PMI改善も米国の早期利上げが懸念
■先週の概況
先週の中国株式市場は高安まちまちでした。ハンセン指数は0.6%下落し、2万7,260ポイントで終了しています。また、上海総合指数は週間で9%近く上昇し、5,023ポイントと7年5カ月ぶりに5,000ポイントを回復しました。
先週のハンセン指数は強弱材料が混じるなか、一進一退の動きとなりました。中国製造業PMIが前月より改善したことが支援材料となったものの、米国FRBによる利上げ前倒しの懸念が燻るなか、週末に米国雇用統計の発表を控えていたこともあり、週後半には軟調な推移が続き、2日間で400ポイント近い下落となっています。
中国株式市場バリュエーション
業種別リターン
香港ハンセン指数採用銘柄 週間騰落率ランキング
■上昇
百麗国際控股(ベル・インターナショナル・ホールディングス、繊維・アパレル、1880)は、アナリストが投資判断を維持し、目標株価を引き上げたことが好感され、週間で7.7%上昇しました。また、交通銀行(バンク・オブ・コミュニケーション、商業銀行、3328)は「混合改革案」についての報道を受けて、今後の民間からの増資やコーポレート・ガバナンスなどの改善への期待が高まり、週間で5.7%上昇しました。
さらに、中国の5月の不動産の売買が予想以上に改善したことから、不動産関連の株が軒並み堅調に推移しました。新世界発展(ニューワールド・デベロッフ、不動産管理・開発、0017)が1.5%上昇、中国海外発展(チャイナオ―バ―シ―ズランド、不動産管理・開発、0688)も1.1%値上がりしました。
■下落
利豊(リー&ファン、繊維・アパレル、0494)は外資系のアナリストが投資判断を引き下げたことが嫌気され、週間で7.7%下落しました。また、特段の材料は見当たらないなかで中国旺旺控股(ワンワン・ホールディング、食品、0151)は大きく売られ、週間で4%超下落しました。
さらに、中国人寿保険(チャイナライフインシュアランス、保険、2628)は客船「東方之星」が竜巻にあおられて転覆したこと受けて、多額の賠償で純利益が伸び悩む懸念が燻り、週間で4.4%下落し、相場全体を押し下げました。匯豐控股(HSBCホールディングス、商業銀行、0005)も資金洗浄(マネーロンダリング)疑惑を巡り、和解金支出の増加観測を嫌気する売りが膨らみ、週間で1%を超える下落となりました。
先週発表された主な経済指標
■6月1日 中国製造業PMI 5月 50.2 市場予想 50.3 前月 50.1
5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2と、市場予想の50.3を下回ったものの、前月の50.1から若干改善しました。俯瞰してみると、市場予想に届かなかったものの、前月よりわずかながら改善があったことは5月上旬に行なわれた一段の悪化を食い止めるための利下げがある程度功を奏したと考えられます。
内訳をみると、新規受注(50.2→50.6)や、生産(52.6→52.9)雇用(48.0→48.2)は改善した一方、在庫が前月から横ばいとなりました。
今後発表される主な経済指標
■6月8日 中国貿易収支 5月 +594.9億ドル市場予想 +448億ドル、前回 +341.3億ドル
■輸出 5月 -2.5% 市場予想 -4.4%、前回-6.4%
■輸入 5月 -17.6% 市場予想 -10%、前回-16.2%
5月の中国の輸出は前年比2.5%の減少と、4.4%減の市場予想を上回って改善しました。反面、5月の輸入は10%減を見込んでいた市場予想に届かず、前年比17.6%減と減少率が前月から拡大しました。こうしたなか5月の貿易収支は594.9億ドルの黒字となりました。
輸出については、「中国輸出金額の推移地域別」のグラフを見ると、5月の各地域向けの輸出は前月から軒並み改善しました。特にアジア向けの輸出の伸び(前月の177→187)が目立ちました。一方、輸入については、前月に続き下げ幅がさらに拡大した理由としては、依然として弱い内需、人民元高と鉄鉱石などの原材料の価格の低迷が挙げられます。
■6月9日生産者物価(PPI、前年比)5月 市場予想 -4.5%、前回 -4.6%
PPIの先行指標である中国製造業PMIの輸入価格指数をみると、前月の47.8から47.6まで小幅に悪化しましたが、5月中上旬に行なわれた利下げや国際原油価格が1%余り反発したこともありPPIは下げ渋る可能性がありそうで、5月のPPIは-4.5%と前月から下げ幅が縮小すると見込まれています。
■6月9日 消費者物価指数(CPI、前年比)5月 市場予想 +1.3%、前回 +1.5%
5月の一部食料関連の価格が鈍化したことを受けて、CPIは前年比+1.3%の増加と予想しています。
■6月11日 固定資産投資(前年比) 5月 市場予想 +11.9%、前回 +12%
固定資産投資額は、農村部を除いた都市部の建築工事や設備工事費を集計したものです。不動産や鉄道関連の固定資産投資額の減少傾向が継続する限り、製造業、建設業などの固定資産投資が堅調に推移しても全体の固定資産投資額は伸び悩む可能性が高いと思われます。5月の固定資産投資額は前年比11.9%増と見込まれています。
■6月11日 鉱工業生産(前年比) 5月 市場予想 +6.0%、前回 +5.6%
5月の中国製造業PMIが前月から小幅ながら改善したほか、内訳の生産指数も前月の52.6から52.9に改善しました。こうしたなか、5月の鉱工業生産も前月から上昇し、前年比6.0%増と見込まれています。
マーケットビュー
■ハンセン指数、調整一巡後反発か MSCI新興国市場指数の採用決定に注目
先週のハンセン指数は強弱材料が混じるなか、一進一退の動きとなりました。中国製造業PMIが前月より改善したことが支援材料となったものの、米国FRBによる利上げ前倒しの懸念が燻るなか、週末に米国雇用統計の発表される米国の雇用統計を控えていたこともあり、週後半には軟調な推移が続き、2日間で400ポイント近い下落となっています。
今週は、ハンセン指数が5月13日の安値近辺まで調整したこともあって一旦反発しそうです。8日に発表された中国の貿易統計で輸出が市場予想を上回って改善したことが支援材料となるほか、中国の人民元建てA株(上海総合指数や、深セン総合指数などの総称)が世界の機関投資家の運用ベンチマークとなっているMSCI新興国市場指数に採用されるかどうかの決定を10日に控え、資金流入期待が相場の支えとなりそうです。
ただし、先週末に発表された米雇用統計が市場予想を大幅に上回ったことを受けて米国での利上げの前倒しのリスクが意識されていることが相場全体の重荷となり上値は限定的となりそうで、後半はMSCI新興国市場指数の採用決定や重要な経済指標を睨みながらの展開が予想されます。
なお、今週は消費者物価指数(9日)や鉱工業生産、固定資産投資(11日)などの発表があり、注目されます。
林宇川(TonyLin)
マネックス証券
フィナンシャル・インテリジェンス部
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