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(写真=PIXTA)


病院と患者の関係から得られるヒント

今年3月、茨城県にある古河赤十字病院に入院した。医療の分野では、病院と患者のコミュニケーションも十分に行われていると聞いていたが、担当医のK先生は、なんと手術室へのCDの持ち込みを許可してくれた。

今までの病院と患者の関係は、病院側の都合で患者の要望をすべて聞き入れることはできなかったが、今回、極めて患者本位の対応に変わってきたことに本当にびっくりした。とすれば、病院を企業にまた患者を投資家にみたてた場合、今、上場企業と投資家の関係はどうなっているのであろうか?

以下において、企業(経営者)と投資家の関係に焦点をあてながら、賢明なる投資家の在り方を考えてみたい。


日本版スチュワードシップ・コードの意義

従来、景気の低迷や世界的な金融危機を経験するなかで、企業と投資家が対立し、その関係が満足いくものでなかったことは、かずかずの粉飾決算や、株主総会での企業と投資家の対立が新聞に掲載されることを見ても明らかであろう。

金融庁は、2014年2月に、アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略の一環として、「『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」(日本版コード)を公表した。これは機関投資家の行動指針である。

ここでのスチュワードという言葉は、中世の英国における領主の執事や財産管理人に由来しており、スチュワードシップとは、他人の財産を管理しその他人の利益のために行動することを意味し、現代流にいえば企業の経営者が、株主が出資した財産を株主の利益のために管理・運用することを意味している。

日本版コードでいう機関投資家のスチュワードシップ責任とは、機関投資家と投資先企業が共に建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)をして企業価値の向上を図り、機関投資家の顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図ることであると規定している。

また企業側も、取締役会が執行役員を適切に監督しつつ、企業価値の向上を図ることを責務としている。そして、企業側の責務と機関投資家のスチュワードシップ責任とは、いわば「車の両輪」であり、両者が適切に相まって質の高い企業統治(コーポレート・ガバナンス※1)が実現されるとしている。

このように日本版コードの策定は、企業と投資家が対立(敵対)する状況を打開するために、彼らが共に建設的な目的を持った対話を通じてその関係を改善し、企業価値も向上し、機関投資家と顧客・受益者のリターンが拡大することを想定しているので、株式市場改革の新しい時代の幕開けを予感させる。