大きな存在感を示す「団塊の世代」

今後30年間に年間死亡者数が130万人から160万人へと増加していく過程を見ると、死亡者の大半を占める世代が「戦前派+戦中派」から「高度成長族(1951-75年生まれ)」へと入れ替わってゆく中で、10~20%のウェイトを保持して絶え間なく存在感を示しているのが第1次ベビーブーム世代(赤色)だ。この世代がほぼ消滅を迎える2040年代半ば以降、人口減少のテンポは確実に鈍化し始める。

第1次ベビーブームとは終戦直後の1947-49年に生まれた世代を指す。教室不足、受験地獄、大学紛争を経験した後、家電と持家・マイカー取得の夢を追い、高度経済成長を需給両面から実現してきた彼らは「団塊の世代」とも呼ばれ、戦後日本の社会変動の主役に擬せられることも多い。戦後のベビーブームは欧米でも共通して生じた現象だが、現時点での人口ピラミッド(人口の年齢別構成)を比べると、我が国ほどベビーブーム世代の突出が目立つ国はない。

その団塊の世代が「60歳定年」に達したのが数年前。労働需給、企業収益、技術の継承などに与えるそのインパクトが「2007年問題」として取りざたされた。

企業や労働市場からの退出と異なり、人生からの退出は一斉に起きるわけではない。しかし2010年時点で約1,000万人(総人口の8%)にのぼる「団塊の世代」がこれから30年の間に次々と後続世代へとバトンを引き継いでゆくことは、変えようのない事実だ。しかもマスとして大きいだけでなく、彼らは各世代の中で最もお金持ちで、その貯蓄合計は2010年で72兆円、日本の個人貯蓄総額の8.5%を占めるとも言われている。

年間死亡者数3割増時代への課題

人口予測は、株価や成長率の予測と違って来期や来年の経済にはさしたる意味を持たない。しかし、20年後、30年後の社会を考える上ではきわめて重要な要素となる。しかも、長期の将来予測であるにもかかわらず、景気予測よりもはるかに予測の信頼性が高い。いつでも倒産や消滅する可能性のある企業や商品と違って、人間は一度生まれると、かなりの確率で一定の寿命まで生き続けるという確固とした「継続性」を持っているからだ。

死亡率(年齢ごとの)や合計特殊出生率といった「比率」変化を予測するのは難しいが、死亡適齢人口や出産適齢人口は、それほど大きく変動しない。そしてこれらの「ベース人口」の方が、死亡者数や出生数を決める上ではるかに重要な要因となる。

「団塊の世代」を含め、死亡者数がほぼ3割増加するという人口動態学的現実は、社会経済的にもさまざまの課題や、不謹慎ながら、ビジネスチャンスを突きつける。社会的な問題にともない市場拡大が予想されるビジネス、その数例を列挙して締めくくりたい。

(1) 葬儀や遺言関連市場の過熱化
(2) 都市では墓地不足に。合葬式墓地、自然葬など普及
(3) 財産相続や廃屋処理をめぐるトラブルの増加、それに対応する専門家ビジネス活況
(4) 国内地域間、国際間の人口移動への圧力、それに対する政策

(ZUU online 編集部)