2012年末の自民党による政権奪還以来、内閣総理大臣の座についた安倍晋三・自民党総裁が主導して進めたアベノミクス。金融、財政、成長それぞれの戦略を組み合わせて日本経済を成長路線に再び載せることを目指してきており、市場も好感して株価も大幅に増加してきた経緯がある。

このアベノミクスについて、小泉政権下で経済財政政策担当大臣や金融担当大臣、さらには郵政民営化担当大臣を務めた経験を持つ竹中平蔵慶應大学教授が、ULIアジア太平洋サミットで講演し、「理論的には100%正しい」と言及した。経済政策について知見を有する同氏のアベノミクスについてのその講演内容を以下で、改めて紹介する。

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短期に出動、中長期は規律―第2の矢・財政政策

第1の矢である日銀の金融政策に対して、第2の矢は財政政策です。どういう政策かというと機動的な財政政策、つまりフレキシブルフィスカルポリシー(柔軟な財政政策)だと言われています。

この第2の矢である財政政策については、2つのことをやる事です。まず、短期的には財政拡大を行って、目の前の景気を良くすることです。そして中期的、2020年を目指して、フィスカルコンソリデーション(財政再建)を行うということです。つまり、ショートタームスエクスパンションとミッドタームフィスカルコンソリデーションとの組み合わせが、第2の矢です。

これに対して現状はというと、短期の再生拡大はかなりの規模で行われました。GDPの3%を超える財政拡大がすでに行われています。その意味では、第2の矢の前半部分は実行されています。他方で、第2の矢の後半である、財政再建が行われるかどうか。その観点で、安倍政権の前の政権で、去年の4月に5%から8%、そして今年の10月にさらに8%から10%への消費税引き上げが決まりました。

この消費増税法の成立を受けて、去年の4月に消費税の引き上げが行われました。しかし、その途端に、日本の経済は非常に悪くなっている。2四半期続けて、つまり半年間はマイナス成長になりました。その結果、2014年を通してみても、日本のGDPは実質でゼロ成長でした。